舞台は EU の通貨統合を目前に控えた英国。父子3人の一家が郊外の新居に越して来る。末っ子のダミアンは神様とキリスト教を心の底から信じる真っ直ぐな子供で、想像力たくましい明るい性格だ。そんなある日、近隣の都市であざやかな手口で大金を強奪する窃盗団が現れた。現生は秘密裏に列車に積み込み警察の包囲網を突破。貨車に忍び込んだ仲間が路線途中で投棄し、別の仲間が回収してまわる手はずだった。が、たまたま投下地点に居合わせたダミアンは、天から降ってきた大量の現金を神様の施しだと勘違い。世の中のために有効に使おう、と彼流のバラマキを始めるのだが…

神様を信じる無垢な子供の行動により引き起こされるドタバタを、周囲の大人の態度と比較しながらお話が進行するコメディ・ドラマ。通貨統合により、大量のポンドがあと1週間で使えなくなる、という事情を絡め、現金を追跡するギャングとのクライム・サスペンスも織り交ぜてある巧みなセットアップが見事。

演出は「トレイン・スポッティング 」で一躍スターダムにのし上がり、FOX の期待を一手に背負った「ザ・ビーチ 」がコケてやや後退したかと思いきや、現代風新解釈ホラーの「28日後 」でスマッシュ・ヒットを飛ばしたダニー・ボイル監督 。 表面はまっすぐ直球のお子様向け寓話の体裁をとりつつ、その裏でしっかり英国風のシニカルなブラック・コメディが進行している構成に、監督流の芸の細かさと同時に芸風の幅の広さに改めて感心しました。

脚本は「CODE64 」(←正直よくわからなかった)や、「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ 」でしっとりした人間ドラマを構築したフランク・コットレル・ボイス

作品の全体的な印象を形作っているのはボイル監督の演出手法で、今風のかっとんだ音楽やビジュアル・スタイルが、地味目のストーリー展開に程よいアクセントを与えています。あくまでけなげな主人公(次男)、世俗にそまった嫌らしさを徐々に見せ始める周囲の大人、その間の兄アンソニー、そして主人公兄弟に忍び寄る強盗団、と登場人物の関係性をダイナミックに構築してあり、脚本のうまさを尖った演出がしっかり支えているあたり、見事でした。

子供の耳には素直にメッセージが届き、大人の目にはその裏に深く広がる隠喩が楽しい、という寓話が持つ構造の面白みを存分に体現した本作品、派手なビジュアル・エフェクトも有名大スターも出てこない小規模な作品ですが、広く多くの人に観てもらいたい佳作だと思いました。久々に思う存分楽しめたブリティッシュ・テイストあふれる映画で、個人的には◎のオススメです。

IMDb: Millions
Official Site: Fox Searchlight

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