ケニア留置所生活 vol.1 | 写真家・小澤太一の『logbook』

写真家・小澤太一の『logbook』

小澤太一のなんでもない毎日の記録集

人生に無駄な経験など、ひとつもない・・・と思っているけれど、今回のようなことは、もう二度と起こってほしくないことです。まさに一寸先は闇なのを知りました。

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【1日目】

いつものような朝日が昇りました。今、目の前にはケニア山があるようです。あいにく山の方には雲があって見ることはできませんが。

まだ暗いうちから、近くのホテルから山が見える方面へバイクに乗ってきました。近くの椅子が4つだけ出ている小さなお店でティーとパンを朝食に食べたばかり。道路沿いにしゃがみこんで、朝日に照らされた犬を撮影していたら、いきなり後ろから首元を掴まれ、見ると迷彩服を着た軍人でした。

『ちょっとついてこい!』と言われて、訳もわからず15分ほどライフルを持った軍人二人に挟まれて、徒歩で軍の施設のようなところに連行され、写真を確認されたり、背中に背負ったカメラバックの中身を確認されました。

もちろん特別な何かが写っているわけではありません。早朝から撮った百枚ほどの写真といえば、朝日に染まる空、木の棒を組んで簡単に作られたかわいいサッカーゴール、木を燃やして朝ご飯の準備をしていると思われる家から出る煙…などのなんでもないものばかり。

軍隊の施設の入り口でカメラバックの中身を全部草むらの上に置け、と命令され、パスポートをはじめ、カメラやレンズ、日記帳、財布など、ありとあらゆるものをたくさんの軍人に囲まれた中でチェックされました。途中で財布の中身の1000ケニアシリング札がいくつか無くなっているのに気がつきました。『Where is my money?』ちょっと文句を言いました。

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【それより二日前】
山に囲まれた小さな村。観光名所はなにもない場所ですが、偶然バイクで走っている時に感じた、素敵なかわいい村にいました。散歩しながら現地の人や風景を撮影中、ある男に『なぜこんなところにいるの?』と聞かれました。海外で現地の人になにか聞かれた時に、この人はちゃんと答えるべき人か、それとも無視した方がいい人か、直感的に考えるようにしています。ここではあきらかに対応がメンドくさくなりそうな男で、それは顔つきと話しかけられ方でわかりました。

僕は『ただキレイな風景を撮っているだけだよ』と答え、あまり対応せずにそのまま自分の撮影を続行していたら、彼はどこかに電話をしていろいろ話始めました。これは面倒くさそうになるな、と感じ、撮影はやめて自分が乗ってきたバイクの方に戻ろうと歩き始めたら、彼もどんどん付いてきて、そして電話で話していただろう男たちが何人も集まり、そして僕は捕まり、警察の車を待ち、警察署に連れて行かれました。何人もの警察官が僕が連れていかれた小さな部屋に順番に入ってきて、その都度、『いつケニアに来た?』『目的は?』『なぜあの場所にいた?』『どうやって行った?』と同じような質問をされました。

その後、『大学はどこだ?』『それはいつのことだ?』『中学は?小学校は??』『大学に入る前の一年のブランクは何してた?』・・・『I studied in my house for enter University・・・』そんな細かいところまでしっかりチェックしながらいろいろ聞いてきた。『どうやって収入を得ている?』『会社は?』『どんな国に行ったことがある?』・・・聞かれた質問を書き出したらキリがありません。

結局、偶然僕が撮影していた場所は、特に撮影禁止の張り紙とか金網があるようなそういう場所ではなくただの山地だったのですが、その近くにはどうやら軍のキャンプ施設があったようです。全然そんな様子も感じられない、見た目はただの村だったのですが。警察署では5時間ほど尋問されたりして、そして特に問題がない、ということで解放されました。

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【再び一日目】
軍の施設でお金が無くなったのですが、それはわずか数千円の話。ただ、その後、僕は軍から警察に身柄を渡され、再び警察署に連れていかれました。

『なぜまたお前は同じような場所に行った?』

少なくとも、前の場所には僕は行っていません。違う場所で撮影していたら今度は警察に、ではなく軍関係者に捕まって、そしてまたここに連れて来られたんです。再び二日前のような尋問部屋に連れて行かれ、『なぜまた行った?』『No different area. I just took picture of dog!』…そんなやりとりがあり、もちろん写真をチェックされ、カメラバックも再び丁寧にチェックされ、パスポートの表紙と、顔写真のページと、なぜかカンボジアに何度か行った時のビザを複写され…

そして留置所に入れられることになったのでした。