3日目
午前4時30分、目の前にそびえる「常念岳」を目指します。この時間になるとヘッドライトが不要なくらい明るさがあります。つづら折りの登山道にはところどころに目印があり、それを頼りに黙々と上を目指します。朝の気温は12度ほど、風が吹くと寒さを感じますが、暑がりの自分には心地よい気温です。約30分ほどで今回二度目のご来光となりました。今日もいい天気になりそうな予感がします。


約1時間ほど登ると開けた場所に出ました。「よし、頂上だ!」と思った場所は「偽りの頂上」。
案内板には「8合目」とあり、がっかり。まだ先は続きます。

ここからは、より大きな岩がゴロゴロした箇所が続き、いくつかの大きな岩をよじ登るとついに山頂へ到着。たどりついた山頂は狭く、ゆっくりと景色を眺めるスペースはありません。山頂にいた「雷鳥」を横目にそそくさと写真を撮ると、先を急ぐため下山ルートを探します。

案内板の先を見ると細く切り落ちた岩場が続いています。
「え、ここ下りるの???」
と一瞬躊躇しましたが、近くまで進むと何とか降りられる場所でした。
事前にネットで調べたところ、この山頂からの下りが今回の注意ポイントと出ていたので、慎重に下山開始。
14キロ程度のリュックを背負っていると少しバランスを崩すと転倒の危険性があります。次々と後から降りてくる人々に道を譲りながら、自分のペースで慎重に、慎重に下っていきます。
結果的にコースタイム約45分のところ、自分は約2時間、倍以上の時間がかかってしまいました。この時点でかなりの疲労感。まだまだ先は長く、大きな不安を抱える事に。山頂からの急坂を下った先も平坦な箇所は少なく、相変わらず大きな岩の「ガレ場」や地味なアップダウンが続きます。気温が上がってきたことも体力を消耗させます。

やがて登山道は岩場から木々が生い茂る「樹林帯」に入っていきます。「樹林帯」と呼ばれる一体なので涼しい登山道を想定していましたが、思った以上の上り下りで徐々にペースが落ちていきます。途中、「ニッコウキスゲ」が群生するお花畑に癒やされました。

そんなお花畑を過ぎると雲の切れ目から進行方向に遠くそびえる山容とその上にとがった山頂が見えました。

「まさかあれが蝶槍(ちょうやり)じゃないよね・・・・」
「蝶槍」とは本日の行程にある山頂の事で、最後の山場でもあります。目の前にあるのは余りにも遠く、高い山。体力は限界に近づきつつあり、とてもあそこまで行ける自信はありません。
それでもしばらく長い長い下りを進むとついに「蝶槍」への登り返し地点に到着。
果たして自分は進むことが出来るのか。。。。。
少し長めの休憩を経て覚悟を決めました。
ここで朝の常念岳から同じ行程を歩いてきた3人組の外国人が追いついてきました。彼らも自分と同じく疲労こんぱい気味です。笑顔を交わしつつ、お互いがんばろうという気持ちになり少しづつ、休み休みゆっくりと登っていきます。
どんな山でも一歩一歩登っていけば必ず山頂へたどり着けるものです。最後の力をふりしぼりついに山頂へ着いたときには達成感よりも安堵の気持ちでいっぱいでした。

ここから先はようやく平坦な稜線となり今日の野営地「蝶ヶ岳ヒュッテ」へ向かいます。本来なら稜線からは壮大な「穂高連峰」が望めるはずでしたが、この日はあいにく雲の中。

また目的地に着いても休む間もなくテントの設営があり、気も滅入ります。もし「テント泊」でなく「山小屋泊」なら荷物も1/3ほどで済むし設営の必要も無くだいぶ楽だなと考えながらついに午後1時30分、「蝶ヶ岳ヒュッテ」に到着。標準タイム約6時間のところ約9時間かけて何とか歩ききりました。
到着後は疲労で動けなくなるかと懸念していましたが、意外と体は大丈夫でいつも通りテントを設営できました。

その後は外のベンチで無事を祝いビールで乾杯。
ひとりで飲んでいると昨日の山小屋で顔見知りになったおじさんが話しかけてきました。同じルートを歩いてきた事もあり、今日のルートの大変さ、そして「蝶槍」が見えた時の「絶望感」で大いに盛り上がりました。
明日は登山口へ約3時間の下るだけの行程です。電話でタクシーの予約を済ませ夜は更けていきました。
【この日の活動記録】
■活動時間:9時間 ■のぼり866m ■くだり661m ■消費カロリー:1785Kcal
