いつもこうだ。

私達は冷静に話しが進まない。

口で私に勝てないショウはいつも怒鳴る。

すぐにカッとなる。そしていつも喧嘩になる。

ホント私達は合わないんだなって、ちょっと笑えた。


「どう考えても、私は婚約だと思ってるし、

何か貰わない限り終われないって言ったよね。

私に悪いと思ってるなら払ってよ!」


「悪いとは思ってるけど、俺の方は婚約だと思ってないから、

慰謝料を払う事は出来ない」



婚約じゃん! 婚約じゃなかった!

二人で堂々巡りの会話をしていた。

ほぼ怒鳴りあいの言い合い。


もうね、全くお互いの言い分が違うの。

もうね、全くお互いの記憶が違うの。


言った言わないの、平行線の会話。


ズルイって思った。

私だけが辛いってのが許せなかった。

ショウも悩んで傷ついていたなら、それで満足できたかもしれない。

でも、話しててわかった。ショウは変わってない。


悪いと思ってくれているなら、私が傷ついてるのを知っているなら、

少しでもいいから誠意を見せて欲しかった。


このまま、「はい、そうですか」 って終われないよ!



「わかった!もういいよ!

ここで怒鳴りあっても意味ないし!

じゃあ、裁判しよう!

私このままじゃ終われないから」


「いいよ。したいならすれば。

でもたぶんお前、負けるよ。費用もかかるよ。」


脅しですか!?

ニヤリと勝ち誇った顔しやがって。すげームカつく!


「はぁ!私の弁護士は絶対勝てるって言ってるし。

知っての通り私全くお金に困ってないから、負けてもいいし。

親も気の済むまでやれって言ってますから!」


「えっ・・弁護士つけてるの?」


「もちろん!相談してるに決まってんじゃん!

調べもしないで、慰謝料くれなんて言う訳ないでしょ!」


予約入れただけだけど・・・

相談したのは行政書士だけど・・・

この際ハッタリも必要!


「あのさ・・・

俺今さ、女と暮らしてるんだ。

裁判となると実際俺一人の問題だけじゃ済まなくなるじゃん。

で、女にさ、裁判するとなると俺と生活してて自分にも影響する事だし、

自分も話し合いの場に呼んで欲しいって言われてて。

近くで待たしてあるんだけど、呼んでもいいかな?」



はぁ~!?

お宅たちの生活に影響があったとしても、

全く私には関係ないんですけど!

そもそも、これは私とショウの二人の問題ですけど!


でも、まぁいいや。実際見てみたいし!

小娘ごとき全く相手にならないし。


「女って美奈ちゃん?」


「うん」


「そっ。来たいって言ってんなら呼べば」



ショウは美奈に電話し場所を伝えた。。。


ばっちりフルメイクしながら後悔した。

こんな事ならもっとダイエット頑張っておくんだった・・・って。。。


家を出る前にママに声をかけられた。


「もし払わないって逃げるなら、裁判でも何でもやってやりなさい!

費用がかかろうが、こっちが負けようが関係ないから。

ドロドロに巻き込んで困らせてやればいいから。

もうお金の問題じゃない。気持ちの問題なんだから。

カオリがスッキリ出来ればそれでいいんだからね!」


力強いお言葉を頂戴し、待ち合わせの喫茶店に向かった。



そしてご対面。


正直、会ったら気持ちがどうなるのか不安だった。


だけど・・・


実際は、何とも思わなかった。

あーなんか全然変わってないな・・・って失望した。


私は別れてから、いろいろ努力したつもり。

外見も内面も磨いてきたつもり。

それは省みたから。


でもショウは全く変わってなかった。

きっと人を傷つけた事なんて気付かずに、

全く悩みもせず、そしてショウは傷つく事もないまま、

何の成長も無く過ごしてきたんだなって思った。


自分の心に安心した。ショウに対して未練はないって。

これで思う存分言いたい事言えるって。


それでも、やっぱいろいろ見ちゃいますね・・・

それも一瞬のうちにあせる

もう私がプレゼントした財布じゃないとか、

ネックレスのヘッドが変わってるとか・・・

ちなみにネックレスにはカルティエのラ○リングがとおされてた。



席に着いて向かい合った。


「まず最初に言いたい事がある。

あの時は本当にすいませんでした」


「言葉だけは受け取っておくよ」


「で、慰謝料についての答えなんだけど・・・

カオリには悪い事したとは思ってる。だけど・・・」


「俺は婚約だとは思ってない。だから払えない。」



・・・・・・・・・・・・・・。


えぇっ!?何言ってんのコイツ!?



「はぁ!?どう考えても婚約でしょ!?」


「カオリから連絡きて、俺そっち関係の人に相談したのね。

そしたら、一度は婚約中だったけど、別れるときは婚約中じゃなかった。

だから婚約破棄にはならないってのがこっちの見解なんだ」



意味わかんねーーー!!



こっからしばし討論。


彼の言い分は・・・(そっち関係の人の法的考え方)

私に結婚の意志を確認されて「結婚する」って言ってから、

覚悟がないって言い出した時までは婚約中。

そして別れる事になったから私は家に戻った。

この時点で婚約は解消になった。

そして、考えたいって事になり、それを私は受け入れた。

この時点で二人の関係は恋人に変わった。

そして、再度本当に別れる事になった。

だから、最後に別れた時は、恋人関係だから、

婚約ではないので慰謝料は発生しないとの事。

法的考えだと、一度恋人関係に戻った場合は、

慰謝料の発生事案にならないとの事。


(あまりにもムカつき過ぎて、記憶が多少曖昧だけど、

たぶんこんな感じの内容だった・・・)



こんな言い分あり!?

ぶざけんじゃねーよ!!

もうね、ムカついてムカついてしょーがなかった!


カーン!!!


私の頭の中でゴングの音が響いた。。。



携帯を持ちながらドキドキした。


番号が変わってない事を願って、発信ボタンを押した。

3コール程でショウが出た。


「はい」


「カオリです。話したい事あるんだけど今大丈夫?」


声が震えた。


「はい」


ショウはそう言いながら部屋から外に出たようだった。

カンカンカンって階段を下りる音がした。

部屋に誰か居るんだって思った。


「あのね、突然なんだけど慰謝料下さい」


「わかりました。いくら?」


「200万」


「すぐには払えないよ」


拍子抜けした。


「ってかいいの!?二人の事だから反論あるなら聞くよ!」


「額がでかいから、少し考えて返答するよ」


「うん。わかった。

別にねお金が欲しくて言い出したんじゃないの。

ホントは自分で立ち直りたかった。

でもね、ショウが憎くてたまらないんだ。

今までは憎む権利の為に請求しなかった。

もらったら、何も言えなくなっちゃうから。

だけど、もう恨むの止めたいの。前に進みたいの。」


「だから、金額面とかは交渉に応じるし、

もしくは、別にお金じゃなくてもいい。

何か受け取らない限りは終わらせられないから。

それだけは覚えておいて」


「わかりました。今週末までには連絡します」


「宜しく」


こうして電話は終わった。

最後までショウの言葉は他人行儀だった。



これって払ってくれるって事だよねって驚いた。


すぐさま、この事をママに報告した。


「うーん。ショウの言う事だからあてにしない方がいいわよ。

今までだってコロコロ意見変えてきたじゃない!

時間が経ったら何言い出すかわからないんだから。

週末までに連絡くれるかどうかも信用できないわよ」


「えー。でも 「わかりました」 って言ってたよー

200万は無理でも、払ってはくれるでしょー」


私は、すんなり話が進んだと喜んでいた。

でも現実は・・・ママの言葉が正しかった。。。



そして、週末。

お昼にショウから電話がきた。

会って話がしたいと。


私達は夕方に会って話をする事になった。。。


慰謝料話が進む前に。慰謝料について少々。


私は行政書士の知り合いがいたのでその方に相談をしました。


婚約について。

婚約は、男女が将来結婚しようという約束をいいます。

2人の間に真剣に将来結婚しようという合意があれば、

それだけで婚約は成立します。なので、口約束でも認められます。


私の場合、同棲前にお互いの両親に結婚前提だとも伝えている。

そして、彼にも最終的に結婚の意志を確認した。

彼は 「結婚するよ。準備進めていいよ」 と言った。

どう考えても婚約成立。



破棄について。

【破棄するのに正当な理由】

結婚式の直前に相手が家出をし行方不明。

相手方から虐待・暴力・侮辱等の行為があった。

多額の借金や、学歴・経歴など将来生活をともにしていく上で、

重大な隠し事をしていた。

相手方に不貞な行為があった。

相手方に性的無能力がある。


【破棄するのに正当な理由とならない場合】

性格が合わない。

相手の容姿・態度が気に入らない。

国籍が違う等の差別によるもの。


私が、破棄する分には慰謝料はかからなかったですね~

でも、ショウがした破棄には正当な理由がない。

よって、損害賠償が発生する。



慰謝料の考え方。

慰謝料は精神的苦痛なので金額に決まりはない。

自分が欲しい額を請求はできます。

その他では、結婚準備にかかった費用や、新居にかかった費用、

結婚のために退職した場合などは、その費用を別で請求できるそうです。


「慰謝料=私の精神的苦痛金額」

って事なら、金額なんて算出できない!

1億だって2億だって欲しいよ!!って感じでした。

その他は、まぁ自分が楽したくてパートに変更したって事もあるし、

同棲も結婚前にお試しをするって事だったので、

それについての費用の請求はする気はなかったです。



相談した結果、裁判までもつれる事を考えれば、

不可能な額を請求しないほうがいいとの事。

今までの判例などから考えると、50万~200万が限度との事。

それでも、裁判しても50万取れるって保障はないし、

逆に50万以上取れる可能性もあるしって話でした。


示談で済みそうな額を言ったほうがいいだろうって事でした。


お金に困ってるわけでも、お金が欲しいわけでもない。

だけど!!

慰謝料が精神的苦痛料ってなら、ショウにまず提示する額は、

最高額の200万円にしようと思いました。

この額を取れるとは全く思ってないけど・・・


そして万が一、裁判までもつれる事も想定して、

弁護士の予約だけはしておきました。



では、次からは本題に戻ります!



そんな3月。


その頃は、1年後の想像ばっかしていた。

ショウが忘れた頃に慰謝料を請求して困らせてやるって。

そして、慰謝料について調べたりもしていた。



そんな中、心境に変化が起こった。


一つは、合コンでもう1回くらい会ってみようって思える人がいた。

その人とは、月末に食事に行く約束をしていた。

でも、心はまた比べてダメだろうと思っていた事。

私の中で終われてないってもう気付いていた。

(ちなみに、その彼にはやっぱ心は動かなかった・・・)


そしてもう一つは自分の誕生日。

認めたくはないけど、きっと私はショウからの連絡を、

心のどっかで待っていたんだと思う。

イイ女で別れたのも、結局はショウに嫌われたくはないって

思いがあったんだと思う。

それとは別に、嫌われてない自分になら、いつか戻ってくるって、

心のどっかで期待もしてたんだと思う。

私の一番の願望は、ショウが私と別れた事を後悔して、

よりを戻してくれと言って、それを私が振ってやる事だったから。


でも、そう思ってるは自分だけ。。。

現実のショウは私を忘れて幸せに過ごしている・・・



そんな私の28歳の誕生日の夜。


もうやめようって思った。

こんな事考えてたらいつまで経っても進めないやって。

1年は自分で頑張るって思ったけど、このままじゃ

あと半年も無駄になるなって思った。


「ずっと憎んでやる、ずっと許さないんだから」

そう思っていられる権利を失いたくないって気持ちも大きかった。

その為にも私はショウに慰謝料を請求しなかった。

もらってしまったら、名目上許したことになってしまうって。

そして、完全に縁が切れるって思って怖かったんだと思う。

慰謝料を請求したらきっと私は嫌われるって。


でも、もう憎んだり恨んだりするのをやめたかった。

負の感情は自分が醜くなるだと思った。


もう変な期待もしたくなかった。

ちゃんと自分の中で終わりにしたかった。

前に進みたかった。


ショウに罰を与えたいとも思ってた。

卑怯な手で傷つけるのではなく、

正々堂々とペナルティを与えてやりたいって。


28の女と7年付き合って、結婚って言葉出して、

簡単に逃げられると思うなよ!

28の女、なめんじゃねーよって思った。


でも、自分が楽になりたかったのが一番だった。


何かをもらった、受け取ったって事で憎む権利を放棄したかった。

受け取ったんだからってゆー事実や証拠が欲しかった。

なにか目に見える形が欲しかった。


別にお金じゃなくても良かった。

なんでもいいから、ショウから何かを受け取りたいって思った。

ってか、受け取らなければ終われないって思った。


受け取ったからって許せるかはわからない。

許せたとしてもショウの幸せを願えるかはわからない。

それでも、憎むとゆー行為から抜け出せるなら、

幸せを願えなくても、ショウに対して何も思わない無な感情になれるなら、

それは私にとって重要な事だって思った。



そして、言うなら今日しかないって思った。

今日から28歳の新たな日。

時間を無駄にしたくない。早く終わらせようって思った。


ママに話したら賛成してくれた。


『私も言うなら今日だと思う。

あと半年もショウごときの為に無駄にするなんて勿体ない!

世の中そんなに甘くないんだよって最後にお勉強させてやりなさい!』



別れてから5ヶ月。私は初めてショウに電話をした。。。