みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。


今日は、素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家 有馬寛子さんです。



有馬寛子さん 

以下2016年3月の再放送でお届けいたします。



前回、菅原 睦さんのご紹介でご登場いただきます。

菅原 睦さん 
第1回   第2回 第3回 、 第4回  、 第5回  


有馬寛子さん
第1回 「自然の中で育ち、自然の風景がテーマです。」
第2回 「自然や生命の循環から表現が始まりました」



第3回目の今日は、有馬さんは東北の自然の風景をテーマにされていますが、それが岩手で制作するとき、東京で制作するときで感覚が違うということなど、感じることと表現への反映についてお聞かせいただきます。 

どうぞお楽しみいただけましたら幸いです。

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2010_2

2010_2 「あらわれた風景」      
25×18×16cm    楠     
2010年





2011_1

2011_1 「あらわれた風景」      
90×320×100cm   栓、楠   
2011年






2011_2

2011_2 「あらわれた風景-隆起-」  
45×45×60cm    朴     
2011年






2011_3

2011_3 「海辺の軌跡」        
40×35×35cm    大理石   
2011年






2012_1

2012_1 「羽化」           
17×8×3cm     大理石   
2012年






2012_2

2012_2 「今日も宇宙とつながっている」
11×11×8cm    大理石   
2012年







2012_3

2012_3 「今日も宇宙とつながっている」
11×11×8cm    大理石   
2012年






2012_4

2012_4 「境界線のその先に」     
55×55×25cm    大理石   
2012年






2014

2014   「ときをひらくために」    
15×15×17cm    大理石   
2014年





日下
前回から制作テーマと造形表現の変遷についてお伺いしています。
2011年の3も面白いですね。とても素敵だと思います。


有馬寛子さん
それは大学院で、石をもう一回やり始めた時期で、また震災があった年でもあって、もともと海岸の風景とか波の形とか、水の流れみたいなところを意識していたんですけれども。

2011年の2の形も形としては一緒なんですけれども、よりまとまりのある形とか、写真だとちょっとわかりにくいかもしれませんが、2つの貝殻の形が閉じてジグザグになっているところは結構きちんと磨いていて、宝石のようにカットした形にしているんです。
波なんだけれども、柔らかい感じだけにおさまらないで、形を締めるというか、そういうところを意識し始めた作品だなと思います。


日下
そうですか。美しいですね。


有馬寛子さん
論文の方でも、論文の理論研究みたいなのも2009年、2010年あたりはやっていて、2011年はちょうど博士課程に入った時期なので、そこでも結構変化と言うか、考え方の変化があった時期でもあって。


日下
どんな変化があったと思いますか。



有馬寛子さん
もともと、東北の自然の風景っていうのはテーマですが、それが岩手で作っているのか東京で作っているのかで、自分の中では違っているなあと自然観の違いみたいなものがあると思っていて 。


日下
自然観の違い。東京にいる時と岩手の時で自然観が違うということですか。


有馬寛子さん
はい。
自然の風景って言った時の、どこまでが自然でどこからが人工なのかみたいなところを周りの人と話をした時にズレみたいなものが大学院のときにはあって。

そのズレっていうのは一体何なんだろうというところで、修士の時は、その自然観の違い、日本と西洋、日本の中でも根源的な自然観というのはどういったものなんだろうっていうのを、修士の時は自分の彫刻制作の視点から考えてやっていました。


日下
そうですか。
私はインターネットで、有馬さんの芸大の博士課程のサマリー(要約)を拝読しました。
有馬さんのサマリーの7後半に生活綴方(※)と生活版画のことを書かれていて、すごく着眼点が面白いなと思いました。
有馬さんはまわりの人とのズレを感じたことがあったのですね。

 ※生活綴方(運動)日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


有馬寛子さん
はい。


日下
それはやっぱり育ってきている環境とか、受けてきた教育とかによるのでしょうか。


有馬寛子さん
受けてきた教育もあるかもしれないですね、あると思います。
それと、自然に対する感覚っていうのが、結構自然環境が厳しいところだったので、その環境を受け入れることがまず先にあって、その中で生きていくっていうのがあったので、自分が自然の中に取り込まれているような感覚があって、自然はコントロールができないということを体感的にわかっている、みたいな。


日下
はぁ~、そういう東北なりの自然の厳しさを体感していない周りの人たちとはズレを感じたということでしょうか。


有馬寛子さん
そうですね。
それはどっちも間違いではないんだけれども、自分の感じている自然観の感覚をどういうふうに説明したらわかってもらえるだろうかっていうのはあって、その感じた自然観が彫刻観にも反映しているから、そこを説明しなければ自分の作っていく表現の意味が正しく伝わらないなと思ってやっていたところはあります。


日下
サマリの一番最後のところに、「芸術作品が地域から浮遊したものとなっている状況に対して、生活綴方と生活版画における子供たちの作品から創作活動の原点の作品となる、原点となる表現の意味を問いただすことは、現代における創造性を捉えなおすきっかけとなる。本論文の意味はその点を明らかにしたことにある。」と書いてありました。


有馬寛子さん
はい。


日下
その中の「~創造活動の原点となる表現の意味を問いただす。」ということについて、ご自身の制作の時に意識されることはありますか。難しい質問になってしまうかもしれないですが。
一つの作品を作るときにその都度その都度、ご自身の原点に立ち返って考える感じですか。


有馬寛子さん
制作をしているときは、そこまで考えてないですけれども、作っている時、作り終わった後とか、あとは作らない時の時間の中で考えていることの方が多いかな。
制作以外の生活の場面で考えることは多いかな。


日下
そうですか。


有馬寛子さん
やっぱり、制作っていうのは、自分の考え方とか、自分の中でどう表現していきたいかっていう主観的なものなんだけれども、ただ表現活動をしていくためには、俯瞰的な視点と言うか、少し客観的になる、それをその自分のやっていることとか周りの置かれている状況を鳥の目で見て、それをどう作品か自分の生活に落としていくのかというところ、それは常に考えているかなと思います。


日下
表現活動をしていくためには俯瞰的な視点になるというのは…、そうですね~。(感心)


有馬寛子さん
自分の論文で書いている内容をそのまま制作の考え方に無理やりつなげたくないな、というところがあって、やっぱり文章で書くとそのメッセージがとっても強いので、それはそれでみたいな感じなんですけれども。
ただ、まったく違うわけではなくて、重なっている部分がたくさんあって。


日下
そうですね。


有馬寛子さん
ただ、東北の自然の持つイメージっていうのが、外から与えられているような感覚もあったりして、自分でその自然の美しさをどう伝えるかというか、その時の持つ美しさやその行為の過程をどう自分の言葉で表現できていくのかが、自分の中での今の課題でもありますし、面白そうだなと思っているところでもあります。

その、研究の中で生活綴方っていうのを挙げたのは、子供たちが自分たちの生活の中で見て感じたことを言葉に表すんですけれども、それは誰かの言葉で影響があったのではなくて、自分が見たものの中からそのまま表現、彫刻にしたり版画にしたりして表現していくというのがあるので、そういう自分の書いたこと、その作品によって自分をもう一度書いたときの自分を見つめ直すことができる。

周りの人の作品を見ることによって、その場というものが自分たちの作った言葉によって見つけることができる。それを、制作の彫刻なり絵画なり私的な制作活動の中でも見つけられたらいいな、っていうふうに思います。


日下
素晴らしいですね。
すごくよく考えていらして。


有馬寛子さん
いえいえ、言葉になっていなくて。


日下
いえいえ、素晴らしいです。
今日もとても深いお話をありがとうございました。


2015

2015   「明日を待つ」        
40×87×87cm    大理石   
2015年

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編集後記
2015年8月20日~9月17日に全5回で掲載した彫刻家 菅原 睦さんのご紹介により、今回初めて有馬寛子さんにお話をお伺いしました。
私は芸術大学の博士課程まで学ばれたアーティストには初めてお話をお伺いしましたが、とてもしっかりと丁寧に思索して制作をされている様子が感じられて、また作品もとても美しくて感動しました。

有馬さんは博士論文で「東北の地域性に即した生活綴方の教育運動である北方性教育運動と、それを基盤として戦後発展した生活版画教育運動を通して、東北という場に根づく精神性を基盤として生まれる表現とは何かを考察した」ことを書かれていますが、着眼点がご自身の制作の実感から生まれているところがとても素晴らしいと感じました。
若手女性彫刻家として、これからの創作活動にとても期待しております。

次回は制作や素材への思いについてお話をお伺いしてまいります。
どうぞお楽しみに。

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◆ 有馬寛子さんが掲載されているWEB

◇2009年 第83回国画会彫刻部奨励賞 
 有馬寛子さんのページ

◇有馬寛子さんの博士論文サマリー(要約)
 

◆ 有馬寛子さんが出品される展覧会
 ◇国展 
 ・2016年4月27日(水)より5月9日(月)まで。(休館日なし)
・会場=六本木 国立新美術館  
・主催 =国画会  

 ◇青山表参道の美容室の展示
  2016年3月6日~5月7日GIRLS BRAVO!! NORA Journey×拝借景/東京NORA Journey
  NORA Journey HP  
 拝借景HP

 ◇岩手のチャリティ展
  けやきチャリティ小品展
  12月予定 岩手県花巻市東和町

◆有馬寛子さんがご勤務されている秋田公立美術大学  とその美術教育センター

 

 

 

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