【狡兎三窟】

才能を内に秘めながら無能をよそおい、明察でありながら知恵をひけらかさず、濁流に身をおきながら

清廉を保ち、身を屈して将来の飛躍に備える。

このような態度こそ、「中流の一壺(イッコ)」や「 狡兎三窟(コウトサンクツ)」のおしえにかなう処世の秘訣である。

 

 

「中流の一壺」とは、「中流ニ船ヲ失エバ一壺モ千金」(カツカンシ)とあるように、ふだんは目立たぬ存在だが、いざというとき役に立つ、そんな生き方を指している。

また、「 狡兎三窟」とは、かしこい兎には穴が三つもあるので、危険が迫っても死を免れることができるという故事によるものです。

いずれも、賢明で、したたかな処世法として伝えられていつ諺です。

 

 

【わずかな施しでも】

せっかく大金を与えても「ありがとう」の一言すら聞けない場合もあるし、いちど飯を恵んだだけで、一生感謝される場合もある。

思いやりも、度がすぎれば反感を招き、わずかな施しでも、心から喜んでもらえることもあるのだ。


「戦国策」によれば、戦国時代、中山(チョウザン)の国王は、わずかスプーン一杯の怨みで国を失い、一壺の食物を恵んだだけで勇士二人の助力を受けることができた。かれはこう言って嘆いたという。

「わずかな施しでも、相手が困っているときにすれば効果はてきめん。ささいな怨みでも、相手の心を傷つければ、手ひどい報いを受ける。


人間という生き物は、自分の気がつかないところで、人知れず相手を傷つけている時もあると思います。

そして思いもよらない災いを招くことがあります。気を付けなければいけませんね。

 

【古い友人を大切に】

 

個人的な恩を着せるよりは、正しい意見に味方したい。

新しい友を求めるよりは、古い友人を大事にしたい。

売名行為に走るよりは、目立たぬ貢献を心がけたい。

奇行を売りものにするよりは、ふだんの行いを慎みたい。


古い友人を大事にするという点では、「論語」に、「故旧ハ大故(タイコ)ナケレバ、則チ棄テズ」という有名な言葉があります。

周代の名補佐役、周公旦(シュウコウタン)が、わが子伯禽(ハクキン)をいましめた言葉として今に伝えられています。

自分の上り坂の時も、不遇な時もすべて知っている古い友の一人や二人ぐらい居ないような人は、信用できないとも言えるのではないでしょうか。そう解釈すると、自分の戒めにもなる厳しい教えとも言えるでしょう。

 

 

【ムダに過ごすことの恐れ】

天地は永遠であるが、人生は二度ともどらない。

人の寿命はせいぜい百年。あっというまに過ぎ去ってしまう。

幸いこの世に生まれたからには、楽しく生きたいと願うがかりでなく、

ムダに過ごすことへの恐れをもたなければならない。


人生は短い。古来から人々はそれを嘆いてきた。

「人生ハ白駒(ハック)ノ隙(ゲキ)ヲ過グルガ如シ」(宋史)、「人生ハ朝露(チョウロ)ノ如シ」(漢書)にあるように、ほんの一瞬のことにすぎないという意味ですが、興味深いのは、有名な二つの喩の後に「だから、せいぜい人生を楽しみなさい」という意味の言葉が続いている事です。

洪自誠は、楽しむことをすすめながら、同時に、ムダににすごすことをいましめている。

適切な助言と言えるでしょう。

 

【他人への思いやり】

小さな過失はとがめない。かくしごとはあばかない。古傷は忘れてやる。

他人に対してこの三つのことを心がければ、自分の人格を高めるばかりでなく、人の怨みを買うこともない。


たしかに、自分がこうゆう対応をされたら感謝こそすれ、相手のことを悪くは思うはずもない。