< 県有地議決賛否について R2年11月議会から始まる、R5年8月4日裁判までの全経緯 >

2020年12月16日 追記

2021年7月10日 追記

2023年8月5日 最終稿

始めに、県有地(県有林)議決への所感、賛否について

 2021年の2月17日付け、7月10日付け、11月18日付けのホームページに投稿したブログでの所感を始めとして、R2年11月議会からR3年11月議会迄の一年間に於いての賛否への態度表明について。議会議決の賛否結果、県議会定例会で議論された質問等への所感、最終的なR5年8月4日裁判までの経緯について記載していきます。

 

 また、時系列に議決の経緯と結果と共に、一連の経緯のなかで、どの様に自ら考え、議会全体で議決、議了されていったのか記載していきます。

 先ず議会全体の不穏当発言とされた他議員の特別委員会での発言についての箇所への解釈。廃案となった弁護士選定条例の審議と付帯決議について。議論の繰り返しで質疑進展が見られなかったことから、名称を変え発足を目指していた新たな特別委員会が議決されなかった経緯。公正を期すため監査委員会での判断結果や、最大の争点であった弁護士着手金支払の専決までを記載してあります。

 

 次にまた、特別委員会の議論の内容に付いても、特筆すべき最長24回の長きに渡り熟議された、「県有地の貸付に関する調査及び検証特別員会」の山中湖畔の議論。その後に新たに、県有地全体の議論のために設置された「県民のための県有地の貸付および賃料に関する調査特別委員会」での討議内容の質問答弁全文と議決結果。

 

 そして、上訴のために必要な控訴費用の議決が行われたR4年12月臨時議会。山梨県が最高裁上訴を事実上断念した、R5年8月4日の裁判終結までを記載していきます。文字数の関係上、4ページに渡りますが、正確さを留めるためとして、ご了承を願います。

 最後に、賛否については県民のためと言う一点で、様々な力率に縛られないことは当然に第一儀として、重要な判断基準である執行部提案理由の理由立てが正しく、一貫して変わってはならない「県民の為の住民福祉向上が成されている結果に基づいているか」を見定めて賛否を付けています。賛成、反対意見の議論のどちらに正しさが有るのかを熟慮断行して、賛否の結果を何故そうしたのかについての客観的な理由を附して、同じく記載に努めております。

 

 クリックで移動して頂き、メインのこのページから、全4ページの必要な箇所のどちらにも移れる様にしてあります。

 

「記載事項」

 ※ 本1ページでは以下❶~❸項目を記載した

❶ 山梨県議会R2年11月議会に上程された、県有地(県有林)等に対する議案について

❷ 山梨県内全ての県有地(県有林)山中湖村県有地等の借地契約等についての確認事項

❸ 委員会等に於ける議員発言に係る、議会と議員の責任について

 ※2ページ目では以下項目(クリックで移動します)

❹ 山梨県議会R3年2月議会に上程された賛否経緯について

 賛否経緯の詳細を 

 (1)R3年2月議会に於いて上程の、2億円を超える弁護士費用の多寡について

      ①何故現在の弁護士に委任契約したのか?

   ②何故弁護士費用が2億円を超えるのか、不適切では無いのか?

   ③弁護士費用の減額交渉などの努力は成されないのか?

(2)2月議会に於いての弁護士費用全体について

(3)2月議会での弁護士費用2億円余の71万への減額修正について

  <2億円余の減額処置経緯>

(4)2月議会での「弁護士費用の債務負担行為」への反対表明の経緯について

(5)2月議会での「山梨県顧問弁護士の選任等に関する条例制定」と「付帯決議」の賛否について  

 ※3ページ目では以下項目(クリックで移動します)

❺ 山梨県議会R3年6月議会に上程された賛否経緯について  

< 賛否経緯の詳細を >

 (1)R36月議会での弁護士費用143百万円余の着手金について

 (2)6月議会での、第77号「山中湖畔県有地に係る損害賠償金等の一部の支払いに係る反訴提起」について

 (3)R3(2021)年217日ブログ記載「県有地問題 発言を含めた議会と議員の責任(所感まとめ)」の総括と、議決に関する整合性の確認

(4)6月議会での新たな「調査機関設置」の賛否について

(5)6月議会 総務委員会質問『弁護士委任契約に対する「住民監査請求書」』について  

❻ 山梨県 監査委員事務局のR3年8月、監査結果について

 4ページ目は以下項目(クリックで移動します)

❼「県民のための県有地の貸付及び賃料に関する特別委員会」における議論内容について

❽ 2022年12月臨時会 第235号議案及び第236号議案「訴えの提起及び訴訟関係経費に係る補正予算案」質疑について

❾ 2023年8月4日、東京高裁判決。事実上の結審について 

 全体を4ページで記載してありますのでご確認をお願い致します。

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山梨県議会R2年11月議会に上程された、県有地(県有林)等に対する議案について

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 先ずR2年に全てに端を発する初めの「和解」の賛否について。山梨県が富士急行に貸している山中湖村の県有地の賃料が不当に安いとして、南アルプス市の男性が県知事を相手に、同社に約364億円の支払いを請求するよう求め、県が訴えた男性との和解を行いたい旨の議案121号が上程された案件については、和解には反対を表し裁判にて司法の判断を仰ぐべきとしました。

 この訴訟の判決は2022年3月15日、甲府地裁で下され、鈴木順子裁判長は訴えを却下しました。議会議決も司法と同様の判断であったことは、議決は司法の判断に則っても、正しかったことが確認できました。

 次に、議会に和解を求める議案121号の議決についてであります。山梨県議会に於いて「県有地問題に係る和解を即決すべき」についての賛否は、即決では無く、特別委員会に付託して継続審査に賛成を表しました。

 その理由については、議会という言論の府である山梨県の最高議決機関として、先ず公平性を持ち、議論を尽くすことであります。以下、議決までの経緯を順次述べていきます。

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 以下にその時点での自身の考えについて、2020年12月16日付け、HPブログを再掲します。

「山梨県議会11月議会、県有地問題に関する、議案121号について」2020年12月ブログ ※クリックで全文が確認できます

 ※ 以下に上記、HPブログの一部抜粋引用にて議案121号賛否の理由立てと致します。

『「県有地」につきましては、当該企業との長い契約期間、私費での原野山林の開発、更に言えば、普通財産として貸付しているものであることから、法的にも、私法上の契約 [1] の考え方が、適用される可能性は高いと判断されます。

賃借料の今後の見直しに於いても、契約の当事者は合意により契約が有効に成立しており、これを無効とするには、錯誤 [2] を主張するしかなく、県側では賃料算定に重大な誤りがあった、と主張しなければなりません。

 これまでの貸付契約を事実上反故にし、適正賃料請求をするには、仮に算定誤りであったとしても、これまでの契約を無効にするほどの錯誤に該当するかは、これは些か、疑問に感じられます。

 現時点で、特別委員会に提出されました、契約書を始めとした資料の確認、特別委員会での議論の経過でも、契約内容を改変し、履行させるためには、双方での相応の話し合いの場が、始めに必要であると考えられます。故に、賃料が時代に適う、適正価格か、否かについても、まずもって契約通りの公平性により、双方での協議を行う必要性を感じます。

 その上で、民法601条の賃貸借の、「賃料を支払うことを約することを内容とする契約」に基づくことでもありますので、双方疑義が生じた場合には、賃借人、貸借人の両者に拠り、司法に委ね、民事等の裁判で行うべき、係争事件だと考えられます。

 そして例えば今後に於いて、住民訴訟で適正賃料の額が出たとしても、このことをもって一定時期であっても、過去の賃料まで、遡って請求することは、訝しげに感じられ、賃料については、これからの交渉で将来的な賃料を求めていくということが、妥当だと考えられます。

 私的には、県側の提案している、財源確保の着目としては、県有地の賃借料の見直しによる増収は、県民の為に大いに賛同すべき観点であります。

 しかしながら、本件と同様に、県有地を貸し付けている、他の賃借人への貸料改定の算定方法などの明示が、未だ議会になされていないこと。

 更に他部局や、まきば公園、丘の公園、北岳山荘など、地元の市町村などは、貸し出し地の賃料値上げにより、行政支出が増えることも当然予見されるなど、他方面に渡る波及が懸念されます。更に民間に貸付けている箇所に於いては、賃料増化に拠り採算性が悪化した場合、企業などは撤退を考える可能性も危惧され、観光収入にも影響を及ぼすことが、大いに懸念されます。そして賃借料の多寡を、事情により傾斜させてしまうと、新たな係争事件を発生させる元ともなりかねません。

 また土地利用条例による、借地を含む恩賜県有林を保護管理している、地元の恩賜林保護組合と県との話し合い状況など、現段階では全ての情報が、議決権を有する議会で、確認されていない状況であります。

 何より議会人として、今議会への「和解」による議決は、本当に県民の為になるのかを、議会は精査したのか、という、県民から信託を受けている、議会の責任は、大きく存在します。議論も半ばで有り、過去2回の当局説明や答弁は余り要領を得ず、他方面への影響や評価を勘案し、参考人招致に拠る説明も確認できていない状況では、議会で「即決」するのには、未だ拙速であるとものと考えます。

 また、冒頭で述べた通り、算定に当たっての、借り受け側の、付加価値をつける行為を、どう取り扱うかなども、残る課題であります。

 また更に、過去これまでの貸付料を議決してきた県執行部、議会の責任。突然に反対の意見を述べることへの道義的責任も、今後は問われる可能性もあるので、我々議会として、今議会での議決には、慎重を期す必要があるものと考えます。

 以上のことから、更なる政治的正統性ある議論や、議会熟議に正に時間をかけ、「県民のための二元的代表制の議会が、しっかり議論を尽くす」議会の原理、原則から、即決では無く、議会での継続審査の続行並びに、これに伴う議会会期延長の議決に賛成した理由であります。

 

[1] 私法上の契約  私法上の契約とは、行政と私人との間の契約で、行政が私人と同じ立場で契約を結ぶことをいいます。私人と同じ立場で取引するため、私法の規定が適用されます。また、訴訟手続も民事訴訟によって行われます。私法上の契約は、さらに、給付行政における契約、行政の手段調達のための契約、財産管理のための契約に分類することができます。

[2] 錯誤  表意者が無意識的に意思表示を誤りその表示に対応する意思が欠けていることをいいます。表示上から推断される意思と真の意図との食い違いを表意者が認識していない点で心裡留保や虚偽表示とは異なります。

 

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山梨県内全ての県有地(県有林)山中湖村県有地等の借地契約等についての確認事項

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 以下に 、2021年2月17日付け、HPブログを再掲。経緯としてはR2年11月議会で議決された「即決和解では無く継続審査」以後の、特別委員会議論の内容について、法的にも解析を加え、議会の権能と役割に基づき、議論全体を整理して所感としてまとめた。

「県有地問題 発言を含めた議会と議員の責任(所感まとめ)」2021年2月ブログ ※クリックで全文が確認できます

『山中湖村のみならず山梨全県下に所在し、全てに影響を及ぼす県有地の賃借料について。R3年2月16日は、山梨県議会2月定例会の開会日でありましたが、今回は執行部からの120号議案、121号議案取り下げが諮られ、県有地問題特別委員会、皆川巌委員長からは、経緯と経過についての中間報告がありました。

 本件賃借料についての議案を議会は即決せず、特別委員会での慎重審議で熟議を重ねたことにより、県下各所の県有地での様々な課題の明確化、確認しておかなければならないこと等が判明したことは、山梨県議会としての責任を果たすとともに、県民に対しての、ご付託へお応えできているものと考えています。

 私は特別委員会には委員外委員でしたが、県議会議員の一員として、全ての回での傍聴をさせて頂きました。そのなかで行われた議論の内容を再度整理し、県有地問題に於いてや、昨今の報道で取り沙汰されている議員の責任についても振り返っておきたいと考えます。

 まず県下全体の県有地賃借料も、過去の賃料算定の素地価格が適正とされるか、現況価格であるのか、賃借料改定を個々幾らにしていくのか曖昧であります。今回の件で問題点や課題が発生したことを真摯に受け止め、県で協議し、山中湖以外の山梨県全体の県有地に対する賃料徴取の規定などをルール化し、システマチックに永続的に公平性をもって運用していくことを目指して明確化し、議会で諮られ議決していく必要があります。

 県内全体の各所に所在する賃借人とも全て合意がなされなければ、法人、個人を含む各賃借人には、それぞれに過去、現在、将来に渡って、損害賠償請求の内容に因って、大きな損害を被ることは、現在も明白な事実としてあります。

 

山梨県と、問題提起されている当該企業との契約について整理

 全県下の県有地に影響を及ぼすであろう、当該企業との問題点を整理。

〇 県と合意して今後の話が進められない場合には、契約として公平性に欠けるものではないかと考えられることから、先ず双方で話し合いの機会を設け、能く賃料の算定について協議し合うことが肝要であります。

〇 県が従来の貸付料を算定して提示し、当該企業はこれを承諾し、契約書にサインしている点に於いては、お互いの合意により、契約は有効に成立されているものと考えられる。

〇 契約書に定められた貸付料を正しく支払っている以上に於いて、当該企業などに契約不履行等の責任は発生しないものと考えられる。

〇 今後、仮に貸付料の算定方法を間違ったと裁判で認定されても、すでに契約が有効に成立している以上は、先の通り当該企業に落ち度はなく、損害賠償請求するには無理がある。しかし、算定間違えとなった場合には、過去の算定を行った県の担当職員から現在に至る迄の、損害賠償の責任が、発生するものと考えられる。

〇 現状では算定の誤り、疑義が生じた場合には、契約書に記載ある通り、県と当該企業の話し合いを行わなければならない。しかし、当該事件発生後も履行されていないと云う事実が確認された。

〇 県が今までの算定方法を覆し、誤りがあったとした場合、先ず契約条項通り双方協議の場を持つことが必要であり、現在県が算定に誤りがあるので違法無効と主張したとしても、当該企業に民法の錯誤無効に該当するほどの瑕疵があるとは考えられない。

〇 これまでの長い貸付状態からみれば逆に、県側が信義誠実の原則[3]に反すると判断されることも考えられ、過去の分についての請求権の発生は、可能性を含めて、極めて低いと考えられる。

〇 今回の和解案を受け入れないことにより、訴訟事件となった場合には、過去の過ちが明白となり、当時の責任者である、それぞれの知事にも、損害賠償請求がされる可能性はある。また当時の執行部も算定に誤りがあるとなれば、担当者を含め、山梨県に対して、損害を発生させた個人にも、責任をそれぞれに問われる可能性は高い。

〇 県、当該企業の双方が争う姿勢である以上、双方が時系列で事実の明確化をおこない、責任の所在を司法の場において県民の為に、きちんと事実を挙げ明白にしなければならない。』

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[3] 信義誠実の原則 当該具体的事情のもとで、相互に相手方の信頼を裏切らないよう行動すべきであるという法原則をいう。信義則を定める民法第1条第2項は、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と規定しています。「信義に従い誠実に行わなければならない」とあることから、「信義誠実の原則」とも呼ばれます。

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委員会等に於ける議員発言に係る、議会と議員の責任について

 県有地について、過去遡り此れまでの、議会、委員会における議決責任の所在や、昨今報道でも取り沙汰されている、委員会での委員の発言の責任について。

〇 議会としては、これまでの長い貸付状況をもとに、貸付料算定に特別な事情変更が発生したとの説明が当局から無かったと思われるので、議決に瑕疵はなかったと主張すると考えられる。

〇 議会の道義的な責任を言われる可能性があるが、これまで県当局も算定に疑義を挟んでいない状況で、議会が算定に誤りがあると主張することには無理がある。また同等に議選の監査役の責任に於いても同様である。

〇 貸付料算定方法に誤りがあったとする今回の当局側の和解案に対しては、算定方法を時代にあったものとすべきは、県民利益の点からは妥当であるが、当該企業側に重大な過失があった場合等を除いて、議会の議論に於いては今後の貸付料改定交渉の問題とすべきと考えられる。

〇 議員の不穏当発言等については代議士の場合、国会での不穏当発言の責任問題を含め、犯罪等の捜査、判決の延長などを免れることについて、国会議員には憲法に保障されている免責の権限があることを承知している。

この「議会議員の責任を争う法廷闘争の免責の判例」についてを、国以外の地方議会に関連する例が有るか調べてみましたが、数例しか存在しませんでした。その中で、不穏当発言などで、議会全体が罪に問われた等の、係争事件や判決などは無く、一件の『(判例;責任否定)[平成12 228日 東京高裁 平11(ネ)2724号 損害賠償請求控訴事件]』の確認ができました。(ページ末尾に該当した判例抜粋の転載 [4] をします。)

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 先ず今回の「県有地問題」において、個別の議員に関する訴えの有無について。

〇 訴権の乱用を除けば、訴状を出す自由には特に制限もなく保障されているため、判例の法の主旨に則って負ける裁判でも、勝ち負けは別にして、原告、当該企業からも、議員に訴状が出されることは予想される。

〇 議員について、委員会、議会等での発言内容が、法的に問われる裁判の過去の判例は、以下の通りと確認した。

・「右発言等によって結果的に個別の国民の名誉等が侵害されることになったとして 

 も、直ちに当該議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえず、当然に国家賠 

 償法一条一項による地方公共団体の賠償責任が生ずるものではない。」(中略)

・「民主主義政治実現のために議員としての裁量に基づく発言の自由が確保されるべ

 きことは国会議員の場合と地方議会議員の場合とで本質的に異なるものとすべき根

 拠はなく、地方議会議員について憲法上免責特権が保証されていないことは右法理

 の適用に影響を及ぼすものではない。」と裁定されている。

・また「討議の本来の目的を達成し円滑な審議を図るためであると解されるから、右

 規定をもって地方議会議員の発言の自由を制約する根拠とすることはできない(国

 会法一一九条も同旨を規定している。)。」ともある。

〇 このことから、議会議決に伴う発言や表明に対しての訴えなどには、訴状が出されても内容にもよるが、今回の県有地問題でも議員の発言に瑕疵があったとしても、判例の通り免責されるものと考えられる。

〇 しかし県民から信託された議会において、地方自治法一三二条での「言論の品位の維持を定め無礼の言葉の使用等を禁止」している議場で、不穏当な発言や相手を毀損する発言により、県民に懐疑的印象、議会の権能に対しても品位を下げるような発言をして良いとは決してならない。

〇 今回の不穏当発言との指摘は、事件に関する時系列での確認上での発言で有ると解され、判例でも示されている事案と同一のものと考えられる。また、委員会においての討議を行うための目的であり、議員が意図的に棄損するための発言では無かったのではと考えている。

〇 しかしその上でも、先の疑義を生じさせる不穏当発言も含めて、県民や個人に損失を与える様な、議員の間違った議決責任にも、議決の背後にあるものも含め、県民感情や道義的責任として、議員の発言には責任が存在する。(このことについては、市議時代の2018年4月24日付け『「議会議員改革の方途」❺ 議員の発言 言論戦「質と内容」の重要性』2018年4月 策定メインページ ※クリックで全文が確認できます 参照を願います。

〇 従って議会では、慎重に審議し、充分に熟議し、丁寧に発言することが最も重要だと考える。

「議決責任」について整理

〇 議会の「責任」として、議会における「議決責任」について。これは法的に定められているものは無く、地方自治法の法律上に定められた条文、文言でも無い。また全国議長会での議会運営の拠り所の衣文とする、議員必携にも記載は無く、議会用語で定められ、罰則を伴うものでも無いことが確認されている。

〇 また更に、この「議決責任」という言葉が、国会でどの程度使われているか、国会会議録検索で検索してみた場合でも、1件のヒット逢坂誠二衆議院議員【平成19年3月1日衆議院予算委員会第三分科会】』しか無かった。

 

山梨県議会基本条例の理念

〇 しかし『「山梨県議会基本条例(基本理念) 第2条」』には、 議会の場での発言で「公平かつ公正な議論を尽くすとともに、その機能を最大限に発揮」と規定されている。規定されている「議論を尽くす」ことができなければ、「山梨県議会基本条例」に違うこととなる。故に慎重に審議をせず議決したとなれば、当然に議会として条例に違背する責任は生ずる。

〇 さりとて、審議、熟議が必要であっても、同じ内容を繰り返し、幾ら関連質問や角度を変えてと言ったとしても、質問趣旨が変わらない内容を執拗に行うようでは意図的と捉えられ、公平性を欠く偏りがあれば、決して良しとされるものでは無い。主旨を簡潔に述べ、質問趣意と要点のみを述べるべきがディベートである。

〇 答弁に対して、自らの考えや情緒的、感応的な観点に捉われず、裁判に於ける弁護人弁論や裁判官と同じくするまでの必要性はないにしても議会人として、問題点と、その根拠を解析して明示し、実証的に発言していく。そうして会議規則に定められている通り、簡明に発言・質問をすべきである。

〇 今回の県有地問題に端を発した議決案件は、開かれた議会として、県民、市民に信託を受けている議員として、議会の慎重審議が尽くされたかとの道義的責任は、大きく問われるところである。従って山梨県議会議員として、規範と成すべき本県議会の議会基本条例 [5]に記載されている通りに「即決」などに因らず、議論を深めることが第一義でなければならない。

山梨県議会基本条例全文(平成29年3月29日 制定)※クリックで全文が確認できます

〇 本件は二元代表制の議決機関として、特別委員会委員長の元、議会での結論を出すべきを優先し、特別委員会にて議事調査と議論を粛々と進め、公平性をもって事にあたることである。

〇 しかし今後は、県、当該企業との係争事件に発展した場合には、議会で調査した結果も併せ裁判所に提出して、正しい国家作用で裁定を行う権能である裁判所に拠る、司法権に委ねることが、最も妥当な処置及び行為だと考えられる。

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まとめ

 私的には、県民のため適正に賃料を上げることは賛成であります。しかし先ず行うべきは、県有地問題について当事者双方の話し合いが能く行われることであり、そして議会に於いては公平性の下、熟議ができているかが重要であります。

 議論の場としての議会は、当事者双方からの意見を聴取し、結果が見えるまでの継続的な議事調査を実施し、しっかりと熟議を行う必要があります。最終的には議会として、審議継続であるか、または終結を含め賛否を決し、県民の為には、できるだけ早期に結論を出していく責務があります。

 山梨県議会として会期延長により、全権を託すべき特別委員会の設置ができ熟議、討議を重ねております。本委員会において、議会側は今後も継続での議事調査を行い、執行部側は調査の内容に対し明確な答弁を示すことが、地方議会の本義である、二元的代表制での機関競争主義による討議であり、審議に於いて、必要かつ重要なことだと考えられます。

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  [4]  該当した判例抜粋の転載(判例;責任否定)[平成12 228日 東京高裁 平11(ネ)2724号 損害賠償請求控訴事件](地方議会に係る部分については、筆者下線付与)

一 控訴人らは、本件発言の内容は虚偽であって○○○男の発言目的と関連のない誹謗中傷や名誉毀損という違法又は不当な目的の下に行われたものであり、地方議会議員の議会等における発言は一般私人以上には保障されていない等として、被控訴人には損害賠償責任がある旨主張する。

二 本件発言中にはD及び控訴人Aがガセネタを週刊○○に売り込んだ、○○市民新聞は誹謗中傷記事を掲載している、控訴人Aは変質者である、司法試験を受験したが合格できず、濫訴を繰り返す裁判マニアである等とする部分があり、これらの部分だけを取り出して考察すると、本件発言中には表現が不適切であり、具体的事実を摘示してD及び控訴人Aの人格的価値についての社会的評価を低下させるものがあるということができる。

しかし、甲一及び弁論の全趣旨によると、本件発言は東村山市議会議員である○○○男が ・・・・中略・・・ 被控訴人に対して行った一般質問の内容又は前提として、同人の認識しあるいは感じている事実を述べたものであることが認められるから、本件発言は右一般質問における発言目的と密接に関連するものであるということができる。そして、○○○男は右部分が虚偽であることを知りながら、D及び控訴人Aを誹謗中傷しその名誉を毀損するという目的の下に、あえて本件発言を行ったと認めるべき証拠はない。

また、地方議会は住民の代表機関、決議機関であるとともに立法機関であって、右議会においては自由な言論を通じて民主主義政治が実践されるべきであるから、その議員は右機関の構成員としての職責を果たすため自らの政治的判断を含む裁量に基づき一般質問等における発言を行うことができるのであり、その反面、右発言等によって結果的に個別の国民の名誉等が侵害されることになったとしても、直ちに当該議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえず、当然に国家賠償法一条一項による地方公共団体の賠償責任が生ずるものではない。これに関し、控訴人らは免責特権を有しない地方議会議員には右のような法理は妥当しない旨主張する。しかし、民主主義政治実現のために議員としての裁量に基づく発言の自由が確保されるべきことは国会議員の場合と地方議会議員の場合とで本質的に異なるものとすべき根拠はなく、地方議会議員について憲法上免責特権が保証されていないことは右法理の適用に影響を及ぼすものではない。

また、地方議会及びその議員に対する直接民主制や住民に対する直接責任によって議員の発言の自由が制約されるとは解されないし、地方自治法一三二条が言論の品位の維持を定め無礼の言葉の使用等を禁止しているのは議場における討議の本来の目的を達成し円滑な審議を図るためであると解されるから、右規定をもって地方議会議員の発言の自由を制約する根拠とすることはできない(国会法一一九条も同旨を規定している。)。(判例3;責任肯定謝罪広告等を命じた)[京都地裁平成24125日]

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 [5] 山梨県議会基本条例「山梨県議会基本条例(基本理念) 第2条」 議会は、二元代表制の下、県民を代表し、県の意思決定を担う議事機関として、 公平かつ公正な議論を尽くすとともに、その機能を最大限に発揮して、広く県政全般の 課題を把握し、多様な県民の意思を県政に反映させ、地方自治の確立に取り組むものとする。』

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