「若冲が見た東アジア世界ー中国・朝鮮の絵画を視点にー」➌@両足院 | 骨董水妖◇美術品は美術館で見るよりおうちで使う方がずっと楽しい!◇

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江戸時代の古伊万里、超絶技巧の時代蒔絵の重箱、美術館で見た有名な絵師の絵画など、ハイクラスの古美術品が、とってもリーズナブルに買えるお店です。

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建仁寺塔頭、両足院で行われた美術講座の締めくくりです。

この記事の❶は→こちらです♪
               ❷は→こちらへ♪

 
 
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(伊藤若冲《動植菜絵》画像はPinterest より)

 

今回の板倉先生の講義で初めて知りましたが、

あの《動植綵絵/宮内庁蔵》には

 

若冲さんの最初の予定では、

墨画(彩色しない墨一色の絵)があったのだそうです。

 

つまり、《動植綵絵》は、完成したプランに基づいて制作されたわけではなかったんですね。

 

 

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(画像はPinterest から)
 

 

そして、《動植綵絵》とセットになっている《釈迦三尊像》には元になった作品があるそうです。

 

若冲さんは元の絵の形は全く変えずに

色だけ変えているんですって。

 

 

板倉先生は、中国や李朝(韓国)の古い絵画から

「若冲さんが何を学んで、どのように自分の作品に取り入れたか、どう生かしたか、と

どこが若冲さんのオリジナルのやり方か」

を、具体的な作品を示しながらご講義くださいました。

 

 

例えば

❶ 李朝の絵画は、動物を平面的でコミカルに描きます。(中国の絵画の中の動物は立体的でリアルです。)

 

→最晩年の《百犬図》に代表される犬の表現は、コミカルで平面的です。

 

 

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(画像はチラシより)

 

これは李朝の絵画から学んだ技ではないか。

 


❷ 李朝の絵画において、モチーフは整然と並んで描かれ、デザイン的です。

 

→《動植綵絵》の《群魚図》は、一匹一匹の魚はとてもリアル(自然な姿)ですが

とても整然と(不自然な姿に)並んで描かれています。

これは李朝絵画の美から学んだ手法ではないか。

 

また、

『(整然と並んだ魚)を見て、「若冲はとにかくリアルに自然を写した」といえるのか?!』

 

と、板倉先生は熱くおっしゃるのです。

 


 

そうなんだ。

 

若冲さんの作品には、

色んな絵画的技法が、磨きに磨いたテクニックで駆使され

様々な様式を取り入れているんだ。


そしてそれを、昇華させているんだ。

 


 

この記事の❶で紹介させていただいた、李公鱗の《猛虎図》の虎の毛並みは

 

 

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こんな風に一定方向に描かれています。

 

これを元にしたした若冲さんの《虎図》の虎の毛並みは

 

 

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こんな感じで、毛が交差しています。

  

こんな毛の生え方は、自然ではありえません。

 

若冲さんは、ここではリアルさよりも、交差させて出る《立体感》を採用しています。

絵画的な効果を狙っているんです。

 

 

 そして、

「おそらく、若冲は当時正統派の絵師のルールを知らなかっただろう。」

 

と、先生はおっしゃいます。

 

絵の技法をきっちり学んだ人では、ありえない表現があるそうです。

 

 

例えば「雪の表現」

 

雪を描く方法は二つあります。

一つは、地を塗り残し、周りを描くことによって雪の白さを描き出す方法。

応挙の松の枝の上の雪に、代表される描き方です。

 

もう一つは、白い岩絵の具を乗せて、雪を表現する描き方。

 

この二つの技法を、一つの画面に同時に使うことは、当時の絵師の常識ではありえなかったんだそうです。

 

でも、若冲さんはしちゃってます。

 

 

若冲さんが使った顔料は、他の絵師の使ったそれよりも

はるかに細かくすり潰されていることが、顔料の分析でわかったのだそうです。

 

偉い先生の弟子となって、絵を描くハウツーを学んでいたら

顔料だって、常識にのっとって作っていたんじゃないかな。 

 

常識なんかどうでもよくて(だから知る必要がなかったのでしょう)

自分の極めたい絵画技法を、思う存分に駆使して絵を描いた。

 

 

だからこそ、現代に於いて

「何時間待とうと、一目本物が観たい!」

と、たくさんの人に感じさせる作品を作り上げられたのでしょう。

 

 

当時の江戸絵画で最も尊ばれたのは

《軽快さ》《淡さ》だったのだそうです。

  

今、大絶賛される若冲さんの極彩色の絵は重厚です。

それは、当時は異端だったんですね。

 

 

「正統派の絵師の師匠につかず

中国や李朝の絵画を写し、技術を磨き、知識を蓄積し

〈背景〉〈姿かたち〉〈表現〉のソースを、さまざまに組み合わせ

試みながら作画を行い、自らの画風を創出していった。」

 

と、板倉先生はおっしゃるのです。

その結果《動植菜絵》の達成がなされた」と。

 

 

 

私は若冲さんに魅かれます。

その作品の素晴らしさはもちろんですが

 

 

その生き様に惚れています。

 

 

偉い先生の弟子にならず

独学で好きな絵を極める。

 

自分が納得できるまで、ハンパない数の名品を模写しまくって

(文正の作品は当時の大名品、今で言う 《神》 だったそうです。)

 

そこから、《経験》でしか身につかないモノを身につけ、

自分の絵画世界を創作し続けることが人生だった。

 

 

家庭を持つことにも興味がなく

権威にも興味がなく

 

気が狂ったように、好きなことを極めた彼の生き様。

 

 

 

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何年か前に

 

最も敬愛する方に、道で偶然お目にかかって

その方のお店でお茶をいただいた時に、

 

「私は、(骨董・古美術は)独学 なんです。」

と申しあげたら、その方は

「それは、とてもいいですな。しがらみがなくて」

とおっしゃいました。

 

普通、古物商として一流になろうと思ったら

一流店にご奉公して学ばせていただき

その後独立するのです。

 

 

「(独学は)いいですな。しがらみがない。」

 

 

そのお言葉を胸に、私はお商売しています。

 

 

 

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お気軽に遊びにおいでくださいませ。

 

8月の営業予定日、詳しくは→こちらです♪

 
 

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若冲さんも、大雅堂さんも生きた京都の街に

今暮らしているって、不思議で幸せな気持ちです。