【意志と中動態と自利利他 9】 当事者研究に学ぶ、外在化という視点 | 本好き精神科医の死生学日記 ~ 言葉の力と生きる意味

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「こんな苦しみに耐え、なぜ生きるのか…」必死で生きる人の悲しい眼と向き合うためには、何をどう学べばいいんだろう。言葉にできない悩みに寄りそうためにも、哲学、文学、死生学、仏教、心理学などを学び、自分自身の死生観を育んでいきます。


 中動態的に、結論を焦ることなく話し合い、
 意志の確認や、責任の所在などを問われたり、評価されることなく、
 意見を交わし、提案をもらい、不安を共有することで、
 自分にとって、本当の幸せは何なのかを探していく。


 これは、「当事者研究」とも共通するところが多くあります。。

 当事者研究では、「外在化」という方法がよく使われます。
 その人と、その人が抱えている問題を分けて考える。
 その人が問題なのではなく、その人が困っている問題を外に出し、
 意図や責任、やる気や主体性などとは分けて、
 客観的に何が起きていたのか、どんなことで困っているのかを考える方法です。

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 「“人”と“こと(問題)”をわける」
 当事者研究では、「人と“こと-(問題)”」を分けて考えることを大切にしています。
 そのことによって、問題をかかえた人も、
 「問題な○○さん」から「問題をかかえて苦労している○○さん」に変わります。
 「人と“こと-(問題)”」を分けて考えることで、
 研究がより促進され、人の評価から自由になることが可能となります。
 それは、人間の存在価値は、失敗や成功、問題の大小によっては
 損なわれないと信じるからです。
 (
当事者研究とは-当事者研究の理念と構成- (向谷地生良)

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 これは、いわゆる
 「困った人は、困っている人」という見方です。

 特に医療の現場には、 もっともっと、こういう支援が必要ではないでしょうか。

 医療現場での、意思決定支援は、欲望形成支援へとシフトしていく、
 という議論も盛り上がってきています。

 すぐに白黒はっきりさせようとするのではなく、
 そんな簡単にハッキリしないよね、と寄り添うことが、
 心に余裕をもちやすく、何よりも頼もしいケアとなるように思います。
 

 急がない。

 責任を問わない。

 

 そんな心の余裕ができたほうが、落ち着いて自分と向き合いやすくなるのではないでしょうか。