われよりおおきくなった ――朝日歌壇から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 日曜日は、朝日歌壇である。

 今日(23日)、わたしが最も共感した歌は、この歌である。

 

背の伸びる音の聞こえてきそうな子われより大きくなった足裏

                   (奈良市 山添聖子)

 

 「背の伸びる音の聞こえてきそうな」という比喩は山添聖子さんらしい。

 わたしは、「背の伸びる音」を感じることはなかった。

 わたしが共感したのは、「われより大きくなった」の部分である。

 山添家の長女の葵さんは、中学2年生である。

 うちの娘より、一つ年下である。

 

 小学生のころも、どんどん大きくなっていろいろなことができるようになったが、そのころの感想は、ああ大きくなった、であった。

 中学生になると、子に抜かれた、と感じることが多くなった。

 さすがに父と娘なので、身長や体重は抜かれていない。

 しかし、体力はもうかなわない。

 小学生のときはわたしのほうがうまかったテニスも、いまは娘に勝てない。

 かけっこも、短距離、長距離、いずれも娘に勝てなくなった。

 遠投も、脇腹を痛めて全力で投げられなくなってから、娘に勝てない。

 

 今日は、娘の陸上部の大会であった。

 娘は800m走に出場した。

 8人中7位と、成績は振るわなかったが、800mを全力で駆け抜ける姿には、感動した。

 抱っこが好きな娘で、少し歩くとすぐ「抱っこ!」と言っていた娘が、800m、3分間も走り続けているのである。

 子どもの成長をつくづく実感した。

 

 頭を使う方面も、いずれ抜かれるだろう。

 まだ知識量では圧倒的に上回っているので、国語だけでなく数学英語も教えてやることができる。

 かろうじて、父親の体面を保っている。

 記憶力は、もうかなわない。

 神経衰弱かるた取りは、歯が立たない。

 百人一首はまだ勝てる。

 将棋も、まだ大駒2枚くらいの差があるが、いずれ追いつかれるだろう。

 子の成長は嬉しいことだが、どんなことでも負けるとくやしいので、少しでも勝てるものを維持しようと思う。

 

 山添聖子さんも、これからいろいろなことで葵さん聡介くんに越されるのだろう。

 ひょっとしたら、お母さんよりもいい歌を詠むようになるかもしれない。

 楽しみである。