今日の小学生の国語の授業で、「ねこの秘密」(山根明弘)という説明文を読んだ。
こんな一文で始まる。
ねことは不思議な生き物です。
ねこは人間が創り出した家畜でありながら、ほかの家畜と異なる点が二つあるという。
一つは、その姿や能力が祖先からほとんど変わっていないことである。
牛や豚、犬などは、どれも人間の手によって大きく改良がくわえられてきた。
それぞれの祖先は、牛はオーロックス(絶滅種)、犬はイノシシ、犬はオオカミである。
現在の豚にはイノシシの面影はないし、犬はオオカミが持っていた凶暴性を失いほとんど動くぬいぐるみのようになっている。
ねこの祖先はヤマネコである。
現在のねこは、人間と出会って1万年経っても野生のヤマネコの姿と能力を持ち続けている。
もう一つは、ねこが自分から人間の世界に入ってきたことである。
ほかの家畜は、すべて人間が野生のものを捕獲して飼い慣らして、家畜にした。
ねこは、人間の家に住むネズミを捕食するために、自分のほうから人間界に入ってきた。
同様に自分からやってきた動物には、ほかにアオダイショウがいる。
アオダイショウは、かつて多くの家の屋根裏に住みついてやはりネズミを捕食していた。
残念ながら人間に嫌われたために、ねこのように家畜動物になることはできなかった。
ねこはすっかり人間界の人気者になっている。
人間の手で姿や能力を変えられていないこと、人間に捕獲されて飼い慣らされていないこと、この二つが、ねこの、ほかの家畜との大きな違うところでる。
この違いのせいで、ねこはほかの家畜と違い、人間に屈服することもなく、恩恵を感じることもないのである。
おそらくねこ自身は、自分たちは人間と対等な立場だ、と思っているだろう。
ひょっとしたら、人間など眼中にはないかもしれない。
ねこの、自由で凛とした佇まいには、このような背景があるのである。
そのよそよそしさに物足りなさを感じるときもあるけれど、けっして媚びることのない自由なねこの生き方は、やはり魅力的である。