コロッケの日 ――朝日小学生新聞から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 昨日(6日)の朝日小学生新聞の1面は、「コロッケ」であった。

 連休最後の日で、ネタがなかったのだろうか。

 そうではない。5月6日「コロッケの日」なのである。

 コロッケメーカーが語呂合わせで定めたそうだ。

 初耳である。コロッケに関するイベントをやっているのを見たことがない。

 きわめて知名度の低い記念日である。

 

 コロッケは、不思議な食べ物である。

 好きな食べ物ランキングなどで、コロッケが挙がっているのを聞いたことがない。

 子どもたちが上位に上げるのは、「カレー」「ピザ」「すし」などである。

 「コロッケ」は100位以内に入るかどうかもあやしい。

 みんな好きなのだが、好きな食べ物はコロッケです、というのは少し恥ずかしく感じる

 嫌いな食べ物ランキングにも「コロッケ」は入らない。

 カレーは辛いから苦手、ピザはチーズが苦手、すしは生魚が食べられない、という子どもはいる。

 コロッケが嫌い、という子どもは、ひとりもいないのではないか。いないにちがいない。

 特に好かれるわけではないが、決して嫌われることのない食べ物である。

 

 カレーピザすしには専門店があるが、コロッケにはない。

 肉屋さん総菜屋さんの一品として売られているのである。

 洋食屋さんのメニューにクリームコロッケがあったり、定食屋さんのメニューにポテトコロッケがあったりはするのだが、あくまでメニューの中の一品であり、その店の看板商品であるということはない。

 ハンバーグとんかつには専門店があるのに、コロッケは不遇である。

 最近は唐揚げ専門店が増えて、ますますコロッケは肩身が狭い。

 

 しかし、わたちたちが口にする頻度は、上に挙げた人気の食べ物よりはるかに高いのではないか。

 冷凍コロッケは、お弁当の定番である。ミニトマトブロッコリー冷凍コロッケがあれば、5分でお弁当ができる。

 貧乏学生にも強い味方である。

 わたしは板橋に住んでいた学生時代、週に2、3回は食べていた。

 商店街の総菜屋さんで、大きいコロッケが1個60円だったと記憶している。

 ご飯を1合炊いて、コロッケを2個も食べれば、100円とちょっとで満腹になれた。

 今も料理する時間がないときに、スーパーのお惣菜のコロッケの世話になる。

 間違いなく、ハンバーグピザすしよりも頻繁に食べている。

 

 これだけ頻繁に食べていながら、自分では決して作らないのも、コロッケの不思議なところである。

 揚げ物は後片付けが大変なので滅多に自分では作らないのだが、それでもとんかつてんぷら唐揚げかきフライなどは自分で作ったことがある。

 コロッケだけは、作ったことがない。

 ジャガイモをゆでてつぶして、ひき肉玉ねぎを炒めて、まるめてをつけて、という手間が、割に合わない。

 総菜屋さんで買った1個60円のコロッケが、十分においしいのである。

 ジャガイモを使った料理でも、フライドポテト肉じゃがポテトサラダは自分で作るのだが、コロッケは作らない。好きなのに。

 

 朝日小学生新聞には、京都まっちゃコロッケ大阪府熊取町のさといもを使った熊取コロッケ鹿児島県殿様コロッケなどのご当地コロッケも紹介されていた。

 知らないものばかりである。

 餃子ラーメンのように、町おこしに貢献したりもしていない。

 

 決して主役にならず、しかもみんなから愛されているのに意識されず、いつでもどこでも人々に寄り添って食生活を支えている。

 コロッケは、地味だが間違いなく日本の食文化になくてはならない存在である。

 コロッケのような人間に、わたしはなりたい。

 というほどのものでもない。

 コロッケコロッケである。

 

 5月6日「コロッケの日」、という記事を読んでも、コロッケとの向き合い方は変わらないだろう。