ことのは学舎では、子どもたちに俳句を作らせている。
卒業までに全員、朝日小学生新聞の俳句欄に入選させてあげたいと考えている。
しかし、これがなかなか難しい。
何が足りないか。
「あっ!」という気づき、「えっ?」という驚きがないのである。
子どもたちに、感じたことを五七五に詠ませてみると、こんなのができあがる。
雪が降り手足がとっても冷たいな
春が来て桜咲くのがまちどおしい
これらは実際に生徒が詠んだ句ではなく、わたしがダメな俳句の見本として作ったものだが、生徒の作品も大体こんな感じである。
これでは入選はおぼつかない。
俳句に「あっ!」「えっ?」を入れるためにはどうしたらよいか。
理屈で説明するより、実物に触れさせたほうがよい。
授業では、こんな句を例として紹介した。
白酒の紐の如くにつがれけり 高浜虚子
この「紐」を空欄にして、生徒たちに考えさせる。
生徒が考えた答えは、「滝」「雨」など。
落下する水から離れ慣れない。これでは似ていて当たり前で、比喩にする意味がない。
また、「滝」や「雨」は、白酒がつがれる様子に似ていない。
白酒は、白くやさしくやわらかく流れ落ちているはずである。
しばらく考えてもらったあと、正解を教える。「紐の如くに」。
なるほど、言われてみれば生徒たちもみな、納得である。
「あっ!」たしかに「紐」みたいだ。
そう、この比喩には「あっ!」があるのである。
今度は生徒たちに、「紐」以外の比喩を考えさせる。
もちろん、これ以上の比喩は出てこない。
「紐の如くに」という句を聞いたあとは、もう「紐」以外は思い浮かばない。
これがこの句のすばらしいところである。
他にもっとよい比喩があるならば、駄句である。
「紐の如くに」という最善の比喩で、白酒がつがれる様子をくっきりと浮かび上がらせるところは、さすが、高浜虚子である。
さて、この高浜虚子の句の比喩の完璧さを感じたところで、今度は生徒たちに自分の句を作ってもらう。
身の回りのものを何かに喩えて、「あっ!」とか「えっ?」のある句に仕立てるのである。
高浜虚子の句はよい教材になったようで、子どもたちも少しコツをつかんでそれらしい比喩を使った句を作るようになってきた。
もう少し詠ませて、これは!、というものができたら、朝日小学生新聞に投稿する予定である。
入選したらこのブログで報告します。乞うご期待。