中学生の授業で、『中高生のための憲法教室』(伊藤真著、岩波ジュニア新書)を読んでいる。
その第1章の最初に、筆者は「個人の尊重」について書いている。
日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、の3つを資本原則とする。
しかし筆者は、憲法でいちばん大切なことは「個人の尊重」だと述べる。
「個人の尊重」の土台には、「人はみな同じ」「人はみな違う」という二つのことがある、という。
「人はみな同じ」。
すべての人間は等しく幸福に生きる権利を持っている。
だれかの幸福がだれかの犠牲の上にあることは認められない。
「人はみな違う」。
その人にとって何が幸福かは、人によってそれぞれ違っている。
他の人が、これが幸福だから従いなさい、ということはできない。
自分にとって何が幸福であるかは、自分で考えなければならない。
これが、筆者のいう「個人の尊重」である。
憲法第13条には、このように書かれている。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
個人の生命、自由、幸福を追求する権利を尊重すれば、おのずと三原則につながってくる。
戦争は個人の生命、自由、幸福を脅かすものだから、平和主義、戦争放棄は当然である。
徴兵制も、憲法13条とは相いれない。
ただし、「公共の福祉に反しない限り」という条件の範囲は、慎重に考えなければならない。
非戦は国民の安全を守らないから公共の福祉に反する、という理屈により、戦争に協力させられる可能性が、なくもない。
戦争そのものが、公共の福祉に反しているのだから、この理屈は成り立たないはずだが、今の政府は憲法も解釈次第でどのようにでもできると思っているから、油断はできない。
同性婚や夫婦別姓は、個人として幸福を追求する上で必要であり、認めなければならない。
異性と結婚することが幸福であり、同性との結婚は幸福でない、という考えは、自分観となる子どもたちには、知っておいてもらいたい、憲法のもっとも大事な理念である。