ウォルターの釈放 ――朝日歌壇から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 昨日(25日)の朝日歌壇に、アメリカで服役中の郷隼人さんの歌が2首、入選していた。

 

旧友のウォルターが遂に出所せり四十五年の服役のあとに

                  (高野公彦氏選第7席)

古参囚のWALLYが今朝仮釈放された四十五年の懲役を経て

                  (永田和宏氏選第9席)

 

 終身刑でも申請を出して認められれば仮出所できる制度があるらしい。

 郷隼人さんも今までに何度も申請を出し、その都度却下されてきた。

 『LONESOME隼人』に、こんな歌がある。

 

年毎にその希望すら否定され二度と逢えぬか桜島山

              (「カリフォルニア・雛罌粟」)

「仮釈放を拒絶さる」とは老い母へ手紙に書けずふた月経ちぬ

                  (「アメリカ産林檎」)

事務的に「仮釈放拒否」のスタンプをガシリと捺さる審問会にて

                   (「夏は来にけり」)

 

 仮釈放を待つ母を想う、こんな歌もある。

 

「生きとればいつか逢える」とわが出所信ずる母が不憫でならぬ

                (「十四万二千九百時間」)

 

 『LONESOME隼人』が出版されたのは2004年、郷隼人さんの収監後20年のころである。

 20年で仮出所は、さすがに難しいのであろう。

 今年で郷隼人さんの服役期間は40年になる。

 ウォルターが45年で出所できたのだから、郷隼人さんも数年のうちに仮出所できるのではないか。刑務所内の選択工場でリーダーを任されるほどの模範囚である。

 

 仮釈放では、日本に帰国するのは無理かもしれない。

 日本の御両親も、すでに他界している。

 それでももう一度、自由の身になってほしい。

 歌人郷隼人の一ファンとして、仮釈放される日を待ちわびている。

 残された時間は、長くはない。