夢がなくても大丈夫 ――朝日小学生新聞から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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考える力・伝える力を育てる国語教室 ことのは学舎 の教室から、授業の様子、日々考えたこと、感じたことなどをつづっていきます。読んで下さる保護者の方に、お子様の国語力向上の助けとなる情報をご提供できたらと思っております。

 今日(23日)の朝日小学生新聞1面の見出しは、「夢がなくても大丈夫」であった。

 大人は、「大きな夢を持とう!」「夢に向かって頑張ろう!」みたいなことを言いたがるものである。

 この見出しは、めずらしい。

 

 内容は、ヨシタケシンスケさんのインタヴュー記事であった。

 今月26日に発売されるヨシタケシンスケさんの新作『おしごとそうだんセンター』に込めた思いを語っている。

 この本は、地球に不時着した宇宙人が仕事をさがす物語である。

 そこで紹介される仕事は、おもちゃの診断や修理をする「おもちゃドクター」、好きな場所にかまくらをつくってくれる「カマクラ屋」、8月の終わりに現れる「読書感想文代筆屋」など、40の「おしごと」だという。

 どれも現実味は薄いがあったら面白い「おしごと」らしい。

 『13歳からのハローワーク』のような実用性はまったくないし、始めから目指してもいない。

 この本に出てくる「おしごと」は、子どもたちの夢になるようなものではなく、ましてやその夢に向かって努力するようなものではない。

 ヨシタケシンスケさんらしさ全開である。

 

 ヨシタケシンスケさんは子どもの頃、なりたいものがなかったという。

 それでも今、ベストセラーを連発する、日本を代表する絵本作家になっている。

 記事の中で、こんなことを語っている。

 

その瞬間に心地が良い、納得できることを選んでいれば、だんだんと自分らしくなっていきます。ぼくは40歳で絵本作家になったけれど、それまでの時間はむだではなかった。回り道や失敗をしても、自分じゃなくなることはないから、大丈夫。

 

 ほんとうに、その通りだと思う。

 子どもたちも、そのつもりでいたほうがいい。

 子どもの頃に夢見た仕事に、大人になってから就ける人はほんのひとにぎりである。

 実現できなかったときにすべてが終わってしまうような夢の持ち方は、危険である。

 夢は夢として持っておいて、叶わなくてもなんとかなるような育ち方をしてほしいものだ。

 

 わたしは今、小さな国語教室を経営している。

 子どもの頃に、そんなものになりたいと思ったこともないし、なるとは思ってもいなかった。

 いろいろと回り道をしているうちに、成り行きでたどり着いたのである。

 大学には2度、計12年も通った。

 生活費と学費稼ぎのために、受験産業でアルバイトをした。

 働いていた予備校が倒産したり、経営方針が受け入れられず離職したこともある。

 そんな失敗、挫折、寄り道、回り道が、すべて今の仕事に役立っている。

 そういうものだ。大人になってみるとわかる。

 

 つまり、夢がなくても大丈夫、なのである。