日曜日の朝日新聞には、「男のひといき」という投稿欄がある。月曜から土曜までの「ひととき」は、女性限定だが、日曜日だけは男性限定である。
今月11日の当欄に、91歳の男性の投書が掲載されていた。奈良県河合町の永井一郎さんという方である。
このような内容である。
一度はおそばで美智子皇后のお顔を拝見したい、と思い、宮中歌会始という機会があることを思いつき、75歳で短歌を始めた。
毎年詠進歌を提出し続けて、91歳になった。
今も歌会始への憧れで短歌を続けている。
老人のはかない夢は、まだまだ続く。
一般人が皇居に招かれて天皇陛下や皇族の方々と直接対面できる機会は、歌会始が唯一であろう。
園遊会と違い、誰にでもチャンスがある。
よい歌を詠めばよいのである。
主権者であった天皇が国の姿を和歌によって描き出した『古今和歌集』の編纂以来、天皇と和歌は強く結びついている。
天皇が権力を手放し、象徴と位置づけられるようになった現代も、天皇と和歌のつながりは受け継がれている。
他の国で、国のイベントとして詩歌の会を行う国はあるのだろうか。寡聞にして知らない。
和歌を通じて象徴天皇と国民が結ばれる。
こんな文化があることを誇らしく思う。
短歌を詠む人間にとって、歌会始は最高の晴れ舞台である。
わたしも一生に一度は招かれてみたいものである。
詠進要項を調べてみた。
(「投稿」や「応募」ではなく「詠進」であるところから、すでに格式が違う)
詠進すること自体、ハードルが高い。
詠進できるのは、ひとりにつき1年に1首だけである。2首詠進したら、その時点で選考対象から外れる。
詠進の用紙は、半紙である。毛筆による自筆でなければならない。わたしのような悪筆では、読んでもらえないかもしれない。
普段投稿している新聞歌壇は、何首でもよいし葉書で投稿できるので、思いついたら気軽に送っている。
大違いである。
今年の詠進歌数は約15000首だという。選ばれるのは10首だから、1500分の1、0.0067%という、極めて狭き門である。
(朝日歌壇は約2500首の投稿歌から40首が選ばれる。1.6%である。)
詠進までのハードルが高く、その上選ばれるのはもっと難しい。
わたしも今年から挑戦してみようと思う。
平凡な日常の中に、こんな高い目標がひとつあるのはいいことである。
わたしも、残された時間は長くない。
日々、よい歌を詠むために精進しよう。
今年のお題は「夢」である。