11日(日)の朝日歌壇に、郷隼人さんのこんな歌が選ばれていた。
この世には飢餓死する人多いのに我ら囚人文句ばかり言う
(アメリカ 郷隼人)
上の句に「この世には飢餓死する人多いのに」とあるから、囚人の文句は食事に対するものであろう。
以前何かで、アメリカの刑務所では食べきれないほどのステーキが出るということを読んだことがある。(郷隼人さんの歌だったように記憶しているが、定かではない。)
さすが、人権の国だと感心したものだが、それでも文句をいう囚人が多いのだろうか。
インターネットで、アメリカの刑務所の食事を調べてみた。ついでに日本の刑務所の食事も調べてみた。(便利な時代である)
Rekisiruというサイトで高田里美さんというフリーライターが、世界の刑務所の食事を紹介しているのが参考になった。
それによると、アメリカの刑務所の食事は2000年代に経費削減のために、質、量ともに低下したという。
現在の食事の写真が掲載されていたが、食パン2枚、ビスケット?2枚、にんじんといんげん、マカロニとひき肉?がワンプレートに盛られている。
量は十分だと思うが、美味しそうではない。
同じサイトに紹介されていた日本の刑務所の食事は、小学校の給食や病院食みたいで郷土料理などもあり、確かにこちらのほうが美味しそうである。
なにより問題なのは、栄養である。
日本の刑務所の食事は栄養士がメニューを作っており、健康によい。
一方、アメリカの食事は炭水化物が多く、ビタミン、食物繊維、たんぱく質などが足りないという。
郷さんの言うとおり、世界には餓死する人も多いことを思えば、文句を言うべきではない。
囚人の食事は、税金でまかなわれていることを思えば、文句を言える筋合いではない。
しかし、囚人にとって最大の楽しみが食事であることは、想像に難くない。食事に文句を言うのも、楽しみかもしれない。食事に文句を言う囚人の気持ちもわかる。
それでも世界の飢餓に苦しむ人々のことを思うのが、郷隼人さんなのである。
郷隼人さんは、もう70歳を過ぎているはずである。
美味しいものを食べさせてあげてくれ、とは言わない。
せめて、健康を維持できる食事を提供してほしい。
郷さんの歌を楽しみにしている一ファンの希望である。
無理な願いだと思いながら、郷さんの歌を読んでそんなことを考えた。
反省も悔悟も贖罪も、生きていなければできない。