先日当社インスタグラムに古い現場の写真を掲載したら、思わぬ反響があった。
こちらの写真。
https://www.instagram.com/p/B-INzxRAhCK/
説明文が以下。
「昭和40年代後半、当社が施工担当した東北新幹線のトンネル工事。現在はほとんどないが、断面を分割しての掘削。関係者の奥さんを坑内見学させるという、当時では珍しい行事。」
もう少し詳しく説明しよう。
道路や鉄道などの大きな断面のトンネルを掘る場合、現在主流の工法であるNATMではほぼ全断面を掘削しコンクリートを吹付け、ロックボルトを打ち込んで山を支えながら進んでいく。
それ以前は板を当てがって山を支える「矢板工法」であった。
※以下参照(NATMとは?-その歴史や特徴、施工手順について)
https://bonperson-civil.com/moutaintunnel-natm/
山が硬ければ大きな面を掘って進めるが、ゆるい場合はそうはいかない。
簡単にいえば小さい断面で掘り、そして次の断面、と拡げながら目的の大きさに掘っていった。
それがこの写真である。
3つの坑口(トンネルの進入口)がある。
そしてその前に並んだ3名の女性。
現場作業に従事する工事関係者の奥さんたちである。
当時は宿舎に家族連れで来ている人が少なくなく、そしてこの女性たちが宿舎の食事調理などを担当していたのだ。
(ちなみに左端は私の母である)
当時、トンネル内に女性を入れることは作業関係者に忌み嫌われた。
しかし女性を坑内に入れたのである。
その当時のことを、私の父が自伝
https://ameblo.jp/kotobuki5430511/entry-12146134649.html
で以下のように書いている。
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トンネルの神様は女性である。「山の神は常に切羽(注…トンネルの掘削面)にいて、私たちを守ってくれている。その場所に他の美しい女性が入ってくると山ノ神は嫉妬に狂い山が荒れ狂う」という言い伝えにより、トンネル内に女性は入れないとされていた。ある日崑野所長(注…元請会社の所長)から相談を受けた。「作業員の家族を呼んで職場見学会をしたいと思うが女性をいれては駄目か」ということだった。即座に「作業員は私が説得します。やりましょう」と返答した。大人数で女性がトンネルに入ったのは全国でも珍しい(自分では初めてと推察している)事であった。このトンネルは特別でカッターローダーもバックフォーショベルも電車も全て電動で内燃機関を動力とする機械は皆無だった。ちょっと大げさだが、坑口から切羽が見えた。職場見学した家族の皆さんは「トンネル工事で働いているので、毎日毎日無事を祈る日々だった。安全な現場を見て、今日から安心して眠れます」と大いに喜ばれ企画は大成功だった。
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かなり先駆的な取り組みだったと思う。
この現場の宿舎で私も家族で生活し、宿舎から通うという形で小学校に入学した。
夜は現場の大風呂で作業員さんたちと一緒に風呂に入っていたのを思い出す。