・年齢は、暦(コヨミ)よりもむしろ知識の問題である。

 

・ あゝコロンブスよ、コロンブスよ。君がアメリカを発見したとき、

 まあ君はなんということをしてくれたのだ。

 

・ そして突然、彼は人の心の中には、いっぱい暗い 解らない

 場所のあることを感じた。

 

・ いわばひとつの音信(オトズレ)、それを受取ることの重大さは

 解っているが、さてその内容は未知の言葉で語られている。

 

・ それもまた それでいい。そう見えるからには、彼にとってどこ

 までもそうなのだ。

 

・ 彼らを許し給え。彼らはその為すところを知らざればなり。

 

・ そのいずれにも 語るべき歴史がある。

 

・ 先生よ。僕にはわかりません。

 

・ ただ問題は主観と客観とのくいちがいだ。即ちムルソーの生きた

 生と社会が見た生とのくいちがいに発する訳だ。

 

 

     故洛城を過ぐ  ( 白居易 )

   故城門前 春日斜めなり

   故城門裏 人家無く

   市朝(町)認めんと欲するも處(トコロ)を知らず

   漠々たる野田 花花飛ぶ

 

     鹿柴(ロクサイ)  ( 王維 )

   空山人を見ず

   但(タダ)人語の響きを聞く

   返景(夕陽の照り返し) 深林に入り

   復た(マタ) 青苔の上を照らす

 

     愁思  ( 張籍 )

   落陽城裏 秋風を見る

   家書(郷里へ送る手紙)を作らんと欲して意万重

   復た恐る 匆匆(ソウソウ) 説きて盡きざるを

   行人(コウジン=配達夫) 発するに臨んで 又 封を開く

 

     長恨歌(部分)   ( 白居易 )

   春寒うして浴を賜う 華清の池

   温泉水滑らかにして 凝脂を洗う

 

  青々し 山の端(ハ)かけて 立ちうつる

      白きけぶりの ほのぼのと あとなき思ひ ーー

 

  かくしつつ時は過ぎなむ 現し身(ウツシミ)の時は短かく

      思へども 思ひみがたきもののはかなさ

 

今年の桜花は、私たちに”穏やかな時を”と話しかけてくれて

 いるようでした。(妻84才・夫89才)  新聞投書欄から

 

・ あと何年一緒に暮らせるのかも解らないので、神様が与えて

 くださる残りの時間を、大切に過ごして生きたいと思います。

   ( 同 )

 

           ゆ  き

       きさらぎの小野の雪

 

       静かなる夕凍み(ユウジミ)に

       人ゆきて還らざる

       道に出でて もの思ふ

 

       きさらぎの夕じみに

       道のべの ほの白く

          あわ雪の 消へのこる

          おもひこそ はかなけれ

 

       あわ雪の消へなくに

       ほのぼのと積み来る

       けはいこそ かそかなれ

 

       夜に入れば はてもなし

 

・ 骨はね、多摩川の石の間に埋めて頂戴。秩父の山がみえる

 でしょ。夏になったら、月見草の花が咲くわ。… 誰か知らない

 人が、口笛を吹いて傍を通る。

 

     木がらしや 目刺に残る 海の色   ( 芥川龍之介 )

 

     さんさ時雨(シグレ)と 萱野の雨は

          音もせで来て 降りかかる   ( 古い民謡 )

 

     雪のやうに 木の葉のやうに 淡ければ

         さくりさくりと 母を掬えり(スクエリ) ( 馬場あき子 )

     *仲のよい母と娘。長い歳月がたち、母は老い「雪のように木の

       葉のように淡く」軽い骨に還った。