・ 木は陰を為すが故に人を楽しませ、陰はそこに夢と幻が満ちて
いればこそ、人の心を惹きつける。
・ 僕は、まだまだ理想に近づく事ができると思っていた。自分が
よりよく変化するであろうことを確信していた。
・ 春雲 月をこめて夜ほの白く、桜花澹(タン)として無からむとす。
蛙の声いと静かなり。 ( 徳冨蘆花 「自然と人生」 )
・ 今宵は陰暦も月十五夜なり。月清く風涼し。行きて畑の中に
佇ずむ。月は今彼方の大竹藪を離れて、清光溶々として上天
下地を浸し、身は水中に立つの思いあり。星の光何ぞ薄き。
氷川の森も淡くして、煙と見ふめり。静かに立ちてあれば、
吾側なる桑の葉・玉蜀黍(トウモロコシ)の葉は月光を浴びて青光り
に光り、棕櫚はさやさやと月に囁やく。虫の音滋き草を踏めば、
月影爪先に散りゆく。開けたる所は月光水の如く流れ、樹下は
月光青き雨の如くに漏りぬ。歩を返して木陰を過ぐるに、灯火の
かげ、木の間をもれて、人 夜涼を語るあり。一庭の月影 夢
よりも美なり。 ( 同 )
・ どうしてもはっきりさせる事ができない事があるものだ。
・ 人間は自分で抜け出さなくっちゃだめだ。でないとヘネシーみた
いに一生愚にもつかん事を、くよくよ心配するようになっちまう。
微笑(ホホエミ)が 妻の慟哭 雪しんしん ( 折笠美秋 )
(注) 人工呼吸で命を保って、長く闘病した作者の句を夫人が
書き取った。「微笑が妻の慟哭」の一句、まさに肺腑ををつく。
畑打つや 土よろこんで くだけけり ( 阿波野青畝 )
枝に洩る 朝日のかげ(ヒカリ)の 少なきに
すずしさ深き 竹の奧かな ( 京極為兼 )
マッチ擦る つかのま海に 霧ふかし
身捨つるほどの 祖国はありや ( 寺山修司 )
霜は軍営に満ちて 秋気清し
数行(スウコウ)の過雁 月 三更 (夜の12時から2時)
( 上杉謙信 )
雑 詩 (部分) ( 陶淵明 )
盛年重ねて来たらず
一日再び晨(アシタ)なり難し
時に及んで 当に(マサニ)勉励すべし
歳月 人を待たず
新 花 ( 王安石 )
水を汲んで 新花を置き
慰めを此の流芳(漂ってくる香り)に取る
流芳 ただ須臾(暫くの間)のみ
我も亦た 豈に(アニ)久長ならんや
新しき花と 故き(フルキ)吾と
己(ヤ)んぬるかな 両つ(フタツ)ながら忘るべし
苔 ( 袁 枚 )
白日 到らざる處
青春 恰も(アタカモ)自ずから来る
苔花 米の如く小さきも
また 牡丹を学んで開く
・ 何も金持ちである事を願うんじゃない。唯 人間としての威厳を
保ち、心おきなく仕事ができ、おうように、おおらかに、そして
独立した人間として暮らしてゆけるだけのものが欲しいのだ。
・ それにしても僕の罪じゃない。いくら何でも無理に信じることは
できないのだ。もし本当に神があって、僕が正真正銘 信じられ
ないからといって、それで罰するというのなら、これはもう仕方が
ない。
・ 今はもう取り返すよしもない、過ぎ去った歳月。それを思うと
胸が痛んだ。
・ 通常 他人の思惑など構うものかという時にも、大抵の人は
自己を偽っている。人の同意を求める心は、おそらく最も抜き
がたい文明人の本能なのではあるまいか。
・ばかをしょいこむと、結局、悪魔でもひどい目にあう。
・ みなさん、同情して下さい。人間は生きてゆかねばならない。
・ 夕…休息 夜…忘却 朝…回春 目ざめ…新生