「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」 | Jiro's memorandum

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【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

 

 

 

「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」(アダム・グラント)

 

 

 

アダム・グラント氏の本は3冊目。今回も満足の一冊。

 

どこかで読んだ内容だったり、なかには当たり前といえば当たり前の内容だったりするのだが、例えやケーススタディや調査分析がおもしろく、改めて納得することたびたび。出生順位から見た傾向分析(自由に育てられた子どものほうがオリジナリティ発揮)、が特に参考になった。

 

挑戦、独創、はみ出す、という意識を持ちつつも、リスク回避の視点による冷静な判断が成功の秘訣。量は質に転化するの精神でたくさんアイデアを考え、素晴らしいアイデアに巡り会えたとしても「戦略的副業」「戦略的先延ばし」を検討することがポイント。

 

 

※参照:「GIVE&TAKE」「THINK AGAIN」

 

 

 

 

以下、備忘

 

 


「オリジナリティ」とは、ある分野において改善に役立つアイデアを導入し発展させること



オリジナリティの最たるポイントは、「既存のもの」を疑い、よりよい選択肢を探すこと

使っているネットブラウザからわかること(顧客サービス係を対象にした調査)

ファイアフォックスまたはクロームを使っていた従業員はインターネットエクスプローラーまたはサファリを使っていた従業員よりも、15%長く勤務、19%欠勤率が低い、売上が高い、顧客満足度が高い、という結果。

ファイアフォックスまたはクロームを入手するには、少し頭を使ってダウンロードしなければならない。PC標準搭載の「ありもの(インターネットエクスプローラーまたはサファリ)」をそのまま使うのではなく、みずから行動を起して、よりよい選択肢がないかを探し求めたということ(なお、従業員のITスキルには差がなかった)。

「ありもの」をそのまま使う顧客サービス係は、マニュアル通りの対応をしていた。業務内容を固定したものととらえ、仕事に不満を感じると欠勤し、ついには離職する。

自発的にブラウザを変更した顧客サービス係は、商品の売り方や顧客対応について新しい方法をつねに探し修正していた。自発的に環境を改善していくから、離職する理由もない。




オリジナリティを成功に結び付ける人は、ふつうの人(積極的で勇気のある人とは限らない)

リスクを嫌い、アイデアの実現可能性に疑問をもっている人が起こした会社のほうが、存続する可能性が高い。

本業を続けた起業家(副業で起業した人)は、本業をやめた起業家よりも失敗の確率が33%も低い。

フィル・ナイト(ナイキ創業者)
シューズを車のトランクに積んで売り始めてからも5年間は会計士を続けていた

スティーブ・ウォズニアック
アップル設立後もHPでエンジニアを続けていた

ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン
1996年にネット検索を劇的に向上させる方法を見いだしたが、1998年まで大学院で学業継続

エバ・デュバーネイ(映画監督)
広告の仕事を続けながら最初の3つの作品を制作

ブライアン・メイ
天文物理学の博士号課程とクイーンのギターを両立

スティーブン・キング
第1作目執筆後7年のあいだ教師やガソリンスタンド店員をしており、日中の仕事を辞めたのは『キャリー』でデビューした1年後

スコット・アダムス
自作漫画がはじめて新聞に掲載されてからもIT企業での仕事を7年続けた

ピエール・オミダイア
イーベイを創業したのは趣味の範囲で、プログラマーの仕事を辞めたのはイーベイでの収入がプログラマーの収入よりも多くなってから

ビル・ゲイツ
大学2年生のときに新しいソフトウエアを販売していたが、それから1年間は学業を継続


ある分野で安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれる


オリジナルなことを実現して成功している人たちの中身は、ふつうの人とさほど変わらない(同じように恐怖や不安を感じている)。しかし、なにが違うかといえば、「それでも行動を起こす」ということ。




成功したいなら、傑作を生み出す可能性を高めたいなら、「多くのアイデアを生み出すこと」

ひと握りの傑作を生みだすために、モーツァルトは600曲、ベートーベンは650曲、バッハは1000曲以上、作曲している。

ピカソの全作品には、1800以上の絵画、1200以上の彫刻、2800以上の陶芸、12000以上のデッサンなどが含まれるが、高く評価されたのは、そのうちのほんのわずか。

エジソンは1093の特許を保有しているが、最高傑作といえるものは片手に収まるくらい。




賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ(戦略的先延ばし)

先延ばしは「生産性の敵」かもしれないが「創造性の源」。

レオナルド・ダ・ヴィンチ
『モナ・リザ』は1503年に描き始め1519年に完成。『最後の晩餐』は15年かけてアイデアを練った(その間、さまざまなプロジェクトに取り組んでいた)。

先発企業の失敗率は47%、後発企業はわずか8%。
ex:家庭用テレビゲーム機(先発企業・マグナボックス、後発企業・任天堂)

オリジナルであるには、先発者である必要はない、オリジナルであるというのは、ほかとは異なる、ほかよりも優れているという意味。

リスクを恐れず行動する人は、一番になることにとらわれており、衝動的な決断をしがち。

古代エジプトでは、「先延ばし」を意味する動詞が二つあり、ひとつは「怠惰」、もう一つは「好機を待つこと」を意味していた。




「はみ出す人」こそ時代をつくる

プロ野球では、弟は兄よりも盗塁を試みる可能性が10.6倍、盗塁成功の確率も3.2倍。

あとから生まれた子の方がケガの確率の高いスポーツをする傾向あり(第一子は安全なスポーツを好む)。

コペルニクスの地動説を支持する確率は、あとから生まれた科学者のほうが第一子に比べて5.4倍高かった。

ダーウィンが進化論を発表する前、あと生まれの科学者の117人中56人が進化の存在を信じていたが、第一子の科学者では103人中わずか9人だった。

あと生まれの子の方が、たちの悪い飲酒や喫煙習慣に陥る可能性が高く、年金や生命保険に加入しないことが多い。

第一子・・・リスクを嫌う。慎重で野心家。現状を維持する。

あと生まれ・・・リスクを負う。独創的なアイデアを取り入れる。現状打破を試みる。通説をくつがえすような発見を喜んで支持する。

頭脳面・肉体面で兄や姉と直接対決する弟や妹は、違う方法で相手に差をつけることを選ぶ。

親は第一子を厳しくしつけ、下になるにつれてルールがゆるみ、柔軟になり、自主性が尊重されるようになる。出生順位が浮き彫りにしているのは、自由を子供たちに与えることの重要性(そのマイナス面にも注意が必要ではあるが)。






「創造する者」は、自主的に考える人であり、「好奇心が強い」「まわりに同調しない」「反抗的」という3つの特質がある。