「THINK AGAIN」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「THINK AGAIN」(アダム・グラント)

 

端的に言えば、いかに「確証バイアス」(あるいは「望ましさバイアス」)に打ち勝つか、というテーマの本。

 

似たような行動経済学系の本や脳科学系の本は、ふと思い返すと何冊も読んでいて(自分の興味関心が高いテーマなのだろう)、結局本書においても似たような結論になるのだが、今まで読んだ本とはまた違った視点、観点から書かれているし、そういった新たな視点から今まで読んだ本の復習や知識の側面支援になり、読んで面白かったし十分参考になった。

 

とくに、(自分自身が新たな考えを受け入れる思考法だけでなく)他人に再考を促す、考えを変えさせる、そのための交渉術、という視点は新たな学びに近く、参考になった。

なかでも、(「THINK AGAIN」のテーマとずれる感はあるものの)相手を説得するときの論拠は多いとダメで、最も説得力のある数個の論拠に絞る、という交渉術は個人的に新たな気づきだった。

 

 

 

自分自身が「確証バイアス」や固定観念を回避する思考法としては、「知的に謙虚であれ」が、先日読んだ「運の方程式」などでもキーワードになっており、重要な思考法だと再認識。また、本書のキモのひとつ「科学者のように考える」というキーワードも意識して思い出すようにしたい。

 

 

 

「脳の処理速度」が速いからといって「柔軟な思考の持ち主」であるとは限らない。

人は疑うことの不快感よりも、確信することの安心感を好む。

既存の考え方を新たな観点から見つめ直すことがいかに大事であるか、それを伝えるのが本書の目的である。

 

 

 

以下、備忘

 

 

変化の激しい時代を生きるために、考えること・学ぶこと以上に貴重な認知スキル。それが「考え直す、学びほぐす(知識をリセットし、学び直す)」

 

 

学生の試験結果の調査で、解答を見直し修正された結果の大半は誤から正に変えられていた。

別の大学生を対象にした研究でも、答えを消して書き換えた場合、50%が誤から正への修正、正から誤への書き直しはほんの4分の1だった。

 

 

Seizing and Freezing (獲得と凍結、答えが獲得されるとそれを保持しようとする欲求)

人はそう簡単には信念を変えない。

 

 

知能指数が高いほど、頭の回転が速いほど、信念を改めることに苦労する。

 

 

 

■自分の考えを再考する方法

 

・科学者のように考える

 

再考することは科学者の仕事の基盤、自分の理解に限界を常に意識することが科学者の役目。科学者は、自分の知っていることを疑い、知らないことを深掘りする力が求められる。説教(牧師)も、不正探し(検察官)も、政治活動(政治家)もしない、まったく異なった思考モードを持つ。

単に偏見のない心で物事に対応することではない。“能動的”に偏見を持たないこと。

 

・好奇心、向上心、思考の柔軟性、探求心を大切に

 

・自分の思い込みに反する意見を積極的に見つける

 

・自分の能力を過信しない

 

・自分の能力を疑うとき、自己向上のチャンスと受け止める(自分の無知を知ることが、知識や技術を磨くための第一歩)

 

・自分の間違いを喜ぶ(それは新しい答えを見つけたことを意味する)

 

 

知的に謙虚であれ。知識がパワーであるなら無知に気づくことは英知(知識の欠点は、時として未知を受け入れたがらないこと)。

 

手に入れるべきは、バランスの取れた自信と謙虚さ(自信に満ちた謙虚さ)。自己の能力を信じながら、自分の解決方法が正しくない可能性、問題自体を正しく理解していない可能性を認める。

 

「自分が何かを学び得たかどうかを知る唯一の方法は、自分の過ちを発見することだ」(ダニエル・カーネマン)

 

予測に必要なことは、何を知っているかより、どのように考えるか。自信と謙虚さのバランスを保ち、自分の判断を客観的に見直し、好奇心を忘れず、有力な情報を探し出しては、予測を改める。

平均的な人は、各課題でおよそ2回予測を改める。スーパー・フォーキャスターは少なくとも4回予測を変えている(何十回も修正しなくていい、ほんの数回多めに再考するだけで、大きな違いが生まれる)。

 

「多くの正しい判断ができる人は、よく耳を傾け、よく自分の考えを変える人だ」(ジェフ・ベゾス)

 

 

■相手に再考を促す方法

 

・他人に心を開いてもらうためには、話すより聴くほうが効果的(まず、意見を言うのではなく問いを多く発する)

 

・相手を脅して賛同を得ることはできない、どんな証拠であれば受け入れられるかを尋ねる

 

・ディベートは戦いではなくダンス

 

強く引っ張ると相手は抵抗、相手の動きに合わせ相手も同調すれば双方リズムに乗れる。

真実に基づいて協議しようという前向きな姿勢を。

 

・「少ない」ほうが得るものが「多い」

 

多くの理由をあげすぎると相手は身構えることも(最も強い理由を数点のみ挙げる)。

一流の交渉人は、主張の論拠をごく少数しか提示しない(持論のベストポイントの効果を薄めたくないから)。

「弱い論拠は、たいがい強い論拠の効果を薄めてしまう」(心理学者、ニール・ラッカム)

論拠が多いと個々の論拠についての説明が少なくなり、すべてにおいて十分な説得力を持たせることができなくなる。