「超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす」(三浦崇宏)
 
 
読んだ本を振り返ってみると、自分と近い世代の方の本が多くなりがちなのかな、と気づく。それは自然なことなのだろうが、意識的に次世代リーダー的な若手の方の本もほどよく読んで感性を磨きたい。ということで本書を読んでみた。
 
三浦崇宏さんの本は「言語化力」を読んで、結構共感した。一見チャラい風貌だが、ハートが熱くて、勉強家で、視野が広くて、志の高い方なのかな、という印象だ。
 
今回の本も参考になったし、読んでいて高揚する感じがした。自分と同世代の方は、なかなかここまで勢いづいたテンションで書けないのではないか。
 
「アイデアのつくり方」「センスは知識から」などにも通じるが、貪欲な好奇心と積極性をともなった豊富な知識・経験なしに、よいクリエイティブ、よいアイデアは生まれない。
 
 
 
以下、備忘
 
 
 
クリエイティブの定義

「非連続的な成長を促し、新たな価値を生み出す多面的な思考法」

独創性があるだけではない、既存の価値を拡大するのではない、社会の中で驚きをともなった新しい価値を生み出すことが、クリエイティブの本質。

あるものの意味を変えることによって新しい価値をつくり出す(価値を100倍にも1000倍にもする)

千利休は先駆的な存在。
茶碗に別の意味を与えることによって美術品としての価値を与えた。茶室をただの狭い部屋ではなく精神を落ち着け人と人とが親密にかつ平等に向き合う場として大きな意味を与えた。



クリエイティブは2つのレイヤーから

価値の「生産」
ゼロから何かをつくり出す

価値の「発見」
別の視点から新たな価値づけを生む



コアアイデア

アイデアとは「そのブランドの本質から生まれた、世界を良く変える考え方」。その中でも一番核心となる考えがコアアイデア。

ものごとの本質を見抜いたうえで、<状況を一変させる考え方>。

オセロの盤面がいっぺんにひっくり返る、サッカーだと思っていたフィールドがその瞬間からアメフトに変わる、そんなルールを更新するようなアイデア。

スケルトンカラーで流線型の初代iMacはいわば「コンピュータをスペックではなく、デザインで選ばせる」というコアアイデアを示した。

「アゴとこめかみを殴るような企画」。格闘技ではアゴとこめかみ以外の場所をいくら殴っても倒れない、一発で世の中の景色が変わるような衝撃をともなったコアアイデア――それは人間の根源的な欲望や感情にふれるものでなくてはならない



コアアイデアは「本質発見力」×「世界の複数性への理解」から生まれる。

・本質発見力
 
ex:ティッシュは「鼻をかむための紙」ではなく「あらゆる液体を受け止めるもの」「人の生理的な快適さをサポートするもの」

ex:緑茶は「お茶」ではなく「もっともナチュラルなカフェイン飲料」

ex:「COGYとは、自分の足で動くという夢をあきらめないための道具だ」

「COGYユーザー=あきらめない人」をヒーローとするために具体的にどういうプロモーションに落とし込むか。
一番ダメなのは、このタレントで仕掛けよう、費用対効果が高いウェブキャンペーンは?、などいきなりアウトプットを考えること。本質から生まれたコアアイデアのある企画が人の心を動かし、社会に届く。

ex:「スタジアムはでっかい居酒屋だ」(横浜DeNAベイスターズ)

野球観戦はつまみでいい、わいわい飲んで楽しめる場所にする(「コミュニティボールパーク化構想」)。
ターゲットは、野球が好きな人から、野球にさほど興味がない神奈川県下1000万人へ(観客動員数は2012年・110万人→2016年・194万人)。

・世界の複数性への理解

多面的な思考力、挫折体験(世界の不条理にさらされ、その不可解さを問い続けることが世界の複数性への感度を高める)、異常な量のコンテンツに触れる、圧倒的な量のマーケティングをする。



コアアイデアに必要な「AAA」

Anger(怒り)
怒りを社会課題と向き合う思考の立脚点に、現実を変えるパワーに。

Alliance(連携)
その怒りは多くの人が共通して抱えているかもしれない、共に闘ったほうが新しい価値は生まれる。

Accident(事件)
多くの人を驚かせ、感情を揺さぶる事件性を宿すものが変化の触媒となる。




クリエイティビティを高める名著10冊

『人間の土地』サン=テグジュベリ
『ツァトゥストラかく語りき』ニーチェ
『堕落論』坂口安吾
『永遠平和のために』カント
『実存主義とは何か』サルトル
『新訳 ソシュール 一般言語学講義』フェルディナン・ド・ソシュール
『野生の思考』クロード・レヴィ=ストロース
『デザインのデザイン』原研哉
『暇と退屈の倫理学 増補新版』國分功一郎
『切りとれ、ある祈る手を<本>と<革命>をめぐる五つの夜話』佐々木中

古典を知っておくことが、人間の感情や欲望への理解度を高める。人類は、さまざまな問題にぶつかり、そのたびに悩み、ときに間違いをおかしながら、乗り越えてきた。その履歴を知っているかどうかの差は非常に大きい。人類はどのように賢くなってきたのか。知るべきはモラル、アイデア、表現の歴史。進歩の足跡。




ブランドの競争力は、企業の行動規範、思想から生まれる
 
思想は「働く理由」であり「自分の行動を決定するルール」。
ex:「すばらしい」では足りない(グーグル)
ex:最善か悪か。(メルセデス・ベンツ)

広告代理店では遊びまくっていた社員がグーグルに転職したとたん、「グーグルっぽくないから」と不倫をぴたりとやめた。




時代を動かした宗教家はすぐれたコピーライター

聖書は名コピーの宝庫「人はパンだけで生きるにあらず」「求めよ、さらば与えられん」「剣を取る者は、剣で滅びる」「幸いなるかな、心貧しき人。天国はかれらのものである」




千利休は日本史上初のクリエイティブディレクター

「わび・さび」という美の基準を完成。「華美なものより、不足しているものこそが美しい」という美的感覚への転換(高価な茶碗や派手な演出が流行っていた価値観を根底から覆す)。