「センスは知識からはじまる」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「センスは知識からはじまる」(水野学)
 
 
水野学さんの本を読むのは2冊目。以前、「「売る」から、「売れる」へ。」を読んだ。水野学さんは、親しみのあるゆるさを感じさせつつも、こだわりや信念の強い、熱い人で、本の内容的にも共感し、好感を持った。
 
この本は、タイトルを見た瞬間から共感した(読む必要ないのではと思うくらい)。
実際読んでみて、共感できることばかりで、気づきもあった。
 
ひとつ例を挙げると、ブランドのロゴマークの書体を決める際、書体のオリジンや源流から選んだというエピソードに、なるほど感があった。普通は商品のイメージにあいそう、といった感覚(シャープな感じとか、やさしい感じとか)で選ぶことが多いのではないかと思う。参考になる事例だった。

「THEシリーズ」(そのプロダクトの定番を作り出そうというブランド)の書体にトラジャン(trajan)を採用。トラジャンは、昔から「ものすごく美しい」と言われ続けていた、ローマ遺跡に描かれている石碑の文字。「これこそ、THEにふさわしい、THEのコンセプトそのものじゃないか」ということで決定した、とのこと。
 
 
デザインは細部に宿る。
ブランドは細部に宿る。
 
 
以下、備忘
 
 
 
技術がその時点の限界まで進歩すると、ノスタルジックな思いに身を寄せ、美しいものを求める傾向がある。技術力がピークを迎えるとセンスの時代が来て、しばらくするとまた技術の時代が来るというサイクルが感じられる。

戦闘技術がピークを迎え戦国時代が終わった時、大名たちは茶の湯や芸能に夢中になった。

産業革命の後、アーツ・アンド・クラフツ運動が起きた(大量生産による安価で粗悪な商品があふれる状況を批判したデザイン運動)。

情報革命によって技術がピークを迎えたあとのこれからの時代はセンスの時代。「無料で世界がつながる、すごい!」と言っていた技術の時代は終わり、文化や美が求められる。
 
技術とセンス、機能と装飾、未来と過去、こんなふうに対になっている時代の間を行ったり来たりしている。
 
 
 
日本企業を弱体化させたのは、市場調査を中心としたマーケティング依存ではないか。
 
スティーブ・ジョブズは市場調査を重視せず、自分の本当に欲しいもの、「みんなも本当は欲しいだろう」と自分が思うものを生み出す努力をしてきた。
 
調査だけに頼っていると、自分は何がいいと思い、何がつくりたいのか、自分の頭で考えなくなる。
「調査で決めた」となると責任の所在が曖昧になり、「この新商品がダメだったらクビになるかもしれない」という緊張感がなくなり、「もっとよくしよう、もっと面白いことをやろう」という向上心を弱めてしまう。
 
向上心のないところから、いい商品は生まれない。
 
 
 
センスとは知恵の集積である。
 
文章を書く場合、「あいうえお」しか知らない人間と「あ」から「ん」まで五十音を知っている人間では、わかりやすい文章、人を喜ばせる文章、を書けるのはどちらか?
センスがいい文章を書くには、言葉をたくさん知っていたほうが圧倒的に有利。仕事においても同様。知識があるだけで、可能性を広げられる。
 
 
 
世の中にある企画の割合
 
①「誰も見たことのない、あっと驚くヒット企画」2%程度
②「あまり驚かない、売れない企画」15%程度
③「あまり驚かないけれど、売れる企画」20%程度
④「あっと驚く売れない企画」63%程度
 
みんな①を作りたいと思っているが、④の現実を知ったうえで、③に注目するべき。
 
例えば、iPhoneは固定電話、携帯電話の流れ、AKB48はおニャン子クラブ、モーニング娘。の流れ、インターネットは飛脚、郵便、電報、テレックス、FAXという通信手段の流れ。
 
つまり、過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠だということ。
 


イノベーションは、知識と知識の掛け合わせである

イノベーションは、ゼロベースで何かをつくることではない。「1から2をつくる」「AとBを掛け合わせてCにする」そういった意味合い。

Aを知悉(ちしつ)していれば、Aダッシュを生み出すことが可能。「あっと驚かないけれど、新しいもの」というのはAダッシュ。
「あっ」より「へぇー」にヒットは潜んでいる。

みんなが「へぇー」と思うものは、ある程度知っているものの延長線上にありながら、画期的に異なっているもの。「ありそうでなかったもの」。

従来の考えを遠ざけ、独創性ばかりにこだわりすぎると、文字通り「独りよがりのクリエイティブ」になってしまう。新しさを追い求めながら、過去へのリスペクトも忘れないことが大切。

新たなアウトプットの見本やヒントとなるものは何か?
それを知る糸口になるのが、知識にほかならない。豊富な知識があるということは、センスを磨くためのよき師をたくさん持っているようなもの。



センスの最大の敵は、思い込み、主観性。
思い込みを捨てて客観情報を集めることこそ、センスをよくする方法。

ピンクが好きだからピンクの服を買う、といった好き嫌いの主観ではなく、「どの服が自分にふさわしいのか」という客観性を基に決める。

センスは感覚ではなく、膨大な知識の集積。

 
 


センスの磨き方一例、書店を5分で一周して気になったものをチェックする。