「とにかく仕組み化」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「とにかく仕組み化」(安藤広大)

 

 

「リーダーの仮面」「数値化の鬼」の続編。

 

特に「リーダーの仮面」は、「えっ」と思うようなことが書いてあるものの、「確かにそうだ」「そう言い切ってくれるのか」「そう考えてよかったのか」と感じることたびたびで、共感度最高水準の良書だった。

 

今回も共感できる部分多く、読後の充実感あり。特に共感したのは、仕事における厳しさを見せる「怖い人」になるべき、頑張っている人に報いるのが本当の「平等」、といったところ(自分自身、常々、真面目に頑張っている人がバカを見ない会社にしたい、と思っている)。

 

 

なお、「歯車になるべき」という点は、本書を読んでアタマでは理解できるものの、言葉の印象的なものが影響しているのか、なかなかしっくりこなかった。しかし、読み返してみると、なるほど、と思える。ひとまず納得。

 

 

 

以下、備忘

 

 


組織の中で、
「替えの利かない人」は、
今の位置にとどまる。

「歯車として機能する人」は、
人の上に立てる。

いっけん、逆だと思ったかもしれない。
しかし、残念ながら、これが真理だ。

・・・

歯車として機能する人には、
「仕組み化」の考えが備わっている。

・・・

「なぜミスしたんだ?」と、
“個人”を責めるか。

「どうずれば防げたのだろう?」と、
“仕組み”を責めるか。

・・・

つい、感情が先に出てしまいそうなときに、
「とにかく仕組み化」
という言葉を心の中でつぶやいてみてほしい。





機械は、歯車が嚙み合うことで、大きな動きができる。
組織も、全員が機能的に動き、大きな目的を果たす。

この世は、たった一人で大きなことをやってのけることができないようになっている。



プロの登山家は、「太陽がてっぺんに来るまでに頂上に着かなければ、その場で引き返す」などという判断が、キッパリとできる。

判断の責任を果たす人がいないと、多数決や空気感で、「まあ、いいでしょ」となる。
結果、遭難事故が起こってしまったら、「みんなで決めたから」と全員で言い訳をするのだろうか。

プロは、ルールを決め、線引きをして、仕組みを守り切る。



「優秀な人がいる」=「優秀な組織」ではない。
むしろその逆。
「優秀な人が不在でも、チームとして機能することで勝てる組織」=「優秀な組織」。



「完璧な組織」にカリスマは存在しない。
会社名は有名なのに、その会社の象徴的な人物が思い浮かばないような企業、それがまさに、いい組織。



全員が満足できるルールはない。どこかで「線引き」が必要。会社での判断軸は一つ。
「ちゃんと成長したい人が成長できるかどうか」


既得権を持っている人、成長を諦めた人、そういう人たちからの反発に負けることなく、活躍する人が辞めるような組織にしない。





■ステップ1 「責任と権限」を手に入れる
決めたことを守り切るようにすること


「いい権利」=権利の範囲が文章として明確になっている(権限がある)
「悪い権利」=文章として明確になっていない曖昧な権利(既得権益)

「見えない決まりごと」がもっともトラブルを生む原因。

優しい人は、全員を納得させようとして、ブレる。
ex:「Cさんは○○してもOKです」と例外をつくる


「得意なことだけを仕事にしたい」「長所を活かしたい」と言う人がいる。
特技や長所を活かすことは否定しない。しかし、「長所だけで活躍し続けられる職場」などというものはない。


本当の優秀さとは、その組織に入ることで、いかに適応し、成長するか。
「仕組み」によって組織に合わせていく能力。

運動神経のいい人は、どんなスポーツも得意。
ビジネスも同じ。他業界での成功を他の環境でも活かせないと意味がない。
試行錯誤してコツをつかむ。メンバーに再現性ある方法を伝える。これらが優秀さ。

そもそも変化のスピードが速い時代には、「適応」こそ武器になる。
どんな部署に行っても、やっていける人。そこに価値が生まれる。


「何をしなければいけないか」「そのために何をやっていいか」を明文化し、「自分が自由に動ける範囲」を示す。
それが「権限を与える」ということ。




■ステップ2 「危機感」を利用する
正しい恐怖を感じ続けるようにすること


「怖い人」とは
手を抜いたことを見抜かれる、言い訳が通じない、ルールを守らないと指摘される。
基準が明確で、誰が見ても「理不尽な部分」がない。


その厳しさを「本当の優しさ」と部下が認識できれば、成長のチャンス。

基準を明確にし、「書いてること」を指摘するだけでいい。
「○○を達成すれば評価します」「○○に未達だと評価しません」

あとは本人に考えさせる。説教しない。話を聞きすぎない。距離を保つ。


「ゆるいブラック企業」
厳しいフィードバックがなくて成長できない、バリバリ働きたいのに仕事量が少ない、このままだと社会で通用しなくなりそうで怖い。
若者中心に新たな不安(成長できないことへの不安)が生まれている。



「怖い人」は人格否定やパワハラをする人ではない。明確な判断基準を持って、仕事における厳しさを見せる人。




■ステップ3 「比較と平等」に気をつける
正しく人と比べる環境を整えること


同じ年齢だから給料も同じ、というのは根本的に間違っている。頑張っている人に報いるのが、本当の「平等」。

誰が見ても明らかな基準(明文化されたルール)で給料に差を設けることで、「負けたことを正しく認識し、危機感が芽生える」。
給料に差がつかないと、「別に頑張らなくてもいいんだな」という認識につながる。

マイナス評価は、長期的に見ると、働く人たちにとって大きなプラスに転じる。
逆に、マイナス評価を与えず、曖昧な評価をすることで、その人が成長しないことのほうが、はるかに残酷。

「降格・降給」も必要なルール。頑張って成果をあげなければ自分の身が危なくなる、というのは当然の仕組み。


頑張っている人に報いるのが、本当の「平等」。頑張った人が残り続けてくれるし、評価されなかった人の意識も変わる。

「褒めるべきものを褒める」「褒めるべきものでないものを褒めない」ということを徹底する。



■ステップ4 「企業理念」を再確認する
自分がどこに向かっているかを迷わないこと


会社に入ったときは、「とりあえず給料が目的」かもしれないが、それだけでは仕事を続けていく醍醐味は味わえない。
人生において、もっと大事なこと。「何のために生きているか」

「企業理念」は言えなくても、「何を実現させようとしているのか」という認識は持つ。

企業理念は、経営者にとっての「判断軸」。
「企業理念に近づくことをやり、遠ざかることはしない」



■ステップ5 「進行感」を感じる
他者と共に大きなことを成し遂げること


組織なら「1人では手に負えないこともできる」という感覚。「同じ会社にいる」ということのメリット。
 
会社が企業理念の実現に近づいていく実感が得られることによる「進行感」がもっとも大切


企業理念を自分の中に落とし込む。

「どういう10年後を迎えたいか」

・どの方向に成長したいか?
・どうやって世の中に貢献したいか?
この2軸で考えて、企業理念と照らし合わせ、同じ方向を向いているか。



企業理念があり、そこに向けて前に進んでいるという「進行感」を感じると、1人1人が仕事に邁進できる。
プレーヤーをそこまで導いていくのが、仕組みを整える人の責任。



「会社はどうやって貢献していくのか」「何のために存在しているのか」。ハッキリ明文化して伝える。







組織や個人が成長できる環境であれば、優秀な人は辞めない。

「とにかく仕組み化」。人を責めずに、ルールを責める。




「かけがえのない歯車」「なくなったら困る歯車」になりましょう。

プレーヤーも、
マネジャーも、
組織のトップも、
会社にとって、
1つ1つが重要な部品であるから、
機械は大きな動きができる。






組織のために働き、
人の役に立ち、
最後は組織の中で、
「辞めるのが惜しまれる」
というような人。


ぜひ、それを目指してください。