「「考えすぎない」人の考え方」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「「考えすぎない」人の考え方」(堀田秀吾)
 
判断を間違いないものにするために、情報をたくさん集めたり、検討の時間をたくさんかけたりした方がいいに決まっていると思っていた。
 
しかし、情報が氾濫し(情報を集めようと思えばいくらでも集められる)、結局のところ正解だったのかどうかわからないことも多く、さらには時間が制約される、という環境下、時間をかけて情報を集め検討することに疑問を感じていた。
 
そんな中、この本を読んでみた。「考えすぎない」ことのメリットは予想以上だった。特に、中古車情報から正しい判断をする実験がわかりやすく、とても納得した。
 
心配性なところがあるので、どうしても情報を集めたくなり時間をかけたくなるのだが、情報収集はある程度のところで見切りをつけ(もしくは今ある情報の中だけで)、重要な情報かつ正しい情報にフォーカスして、ピッと判断し、パッと行動に移して、もし間違えていたらさっと修正する、というのがよさそうだ。
 
 
 
 
 
以下、備忘
 
 
人間が他の生物よりも特に優れているのは「考える力」。しかし、弱点もある。それは、
“考えすぎてしまうこと”
 
迷う、悩む、決断できない… 場合によっては心の病に…
 
 
合理的に行動しよう、ベストの判断をしよう、と考えすぎて、行動が遅れたり、ネガティブ思考になったりする人がいる。
一方、考えすぎず、行動が早い! 判断が的確! いいアイディアを出す! という人がいる。
 
 
この差について、いろいろなことが明らかになってきている(以下、研究結果例)
 
◆不安やネガティブな感情は、考えごとをするほど強くなる(ミシガン州立大 モーザー)
 
◆情報が多いほど、時間をかけるほど、人は合理的に判断できなくなる(ラドバウド大 ダイクスターハウス)
 
◆忘れっぽい人、ものごとをざっくり記憶する人のほうが思考力は高い(トロント大 リチャーズ)
 
◆「やる」か「やらないか」の決断は、コインで決めても幸福度は変わらない(シカゴ大 レヴィット)
 
◆考えているときよりもぼーっとしているときのほうが脳は効率よく働く(ワシントン大 レイクル)
 
◆優秀な人ほど、優秀な人のマネをして行動や思考を効率化している(南デンマーク大 アナリティス)
 
◆心配事の79%は実際には起こらず16%は事前準備で対処可能(ペンシルバニア大 ボルコヴェック)
 
◆人は短期的には「やってしまったこと」ことに対する後悔をよく覚えているが、長期的には「やらなかったこと」への後悔を強く覚えている(コーネル大 ギロビッチ/メドベック)
 
◆怒りやイライラは何も考えずに心の中で10数えるとおさまる(ノースウェスタン大 ファンケル)
 
総じて言えるのは「考えすぎないほうが、行動力や幸福感が高まり、仕事や人生にいい影響がある」ということ。
 
 
 
以下、特に参考になった調査結果
 

◆情報が多いほど、時間をかけるほど、人は合理的に判断できなくなる(ラドバウド大 ダイクスターハウス)
 
中古車を4台準備し、1台の「当たり」(お買い得)を見つけ出す実験結果
「よく考えて選ぶグループ」…正解率25%
「選ぶための時間が少ないグループ」…正解率60%
 
短時間で決めなくてはいけないグループの人は、時間がない分、情報に正しく優先順位をつけて合理的に選択。無意識下で情報の取捨選択が勝手に行われていた(燃費、価格、走行距離、など重要ポイントで判断)。
 
時間があるグループの人は、ドリンクホルダーの数やトランクの広さなど細かい情報にも意識がいってしまい、小さな欠点やマイナス要因が大きな問題のように見えてしまった。重箱のすみをつつくような思考になり、不安が増長され、シンプルに大局的に考えられなくなってしまった。
 
 
◆「やる」か「やらないか」の決断は、コインで決めても幸福度は変わらない(シカゴ大 レヴィット)
 
コイン投げサイトをつくり、「コイン投げの決断によって人生がどう変化したか」、1年かけて4000人を調査。
 
調査の結果、コイン投げで「表(やる)」だろうが「裏(やらない)」だろうが、悩みの解決に向かって何かしら行動を起こした人の幸福度は高い、ということがわかった。
※ちなみに、多かった悩みは「仕事を辞めるべきかどうか」「離婚すべきかどうか」など
 
やると決める、やらないと決める、そうやって腹をくくることが結局のところ人生の満足度を大きく左右する。
停滞の原因は「考えすぎる」こと。前進するための決断を大切に。どう転んでも、結局はどうにかできてしまうのが人間。
 
 
 
◆考えているときよりもぼーっとしているときのほうが脳は効率よく働く(ワシントン大 レイクル)
 
脳は忙しくしているときよりも、ぼーっとしているときのほうが2倍のエネルギーを使っている(何もしない安静時に活動が活発になる脳の領域が複数存在)。この機能を「デフォルトモードネットワーク」という。
 
考えごとをすると、エネルギーがそこに集中。
ぼーっとしていると、エネルギーが全体に分散。
エネルギーがたくさんの場所に届くことによって、有機的な「つながり」が生まれる。
それまで結びつかなかったようなもの同士が結びついて、新しい発想がひらめく。
意識的な思考ではたどりつけない「すごいアイディア」が生まれる。
 
「よし考えよう!」と意気込むと行き詰まる。
探し物はあきらめたときに見つかるもの。
切羽詰まったときなどは、一度脳を休めてみるとよい。