タケルと【舞鶴】にやってきた俺は、2日ぐらいで、すっかり金を遣い果たしてしまった。
だが、クビになった会社にはまだ、もらってない給料があったので、それをもらいに行き、再び舞鶴に。
思いのほか、2人の給料は残っていたので、そのお金で安いビジネスホテルを借り、街に繰り出した。
居酒屋で飲んでると、地元の女の子が話しかけてきた。
『あんた達、他所から来たんやろ?何処から来たん?』

『なんで【よそ者】って分かる?喋ってもないのに。』

『そんな派手なルックスの人間、この街にはおらんもん。』

『そうか……。』

そりゃ、目立つに決まってる。タケルは、ベースを弾いていたが、PUNK BANDのベース弾き。
髪の色は金髪で、幅が2cm、高さが25cmぐらいの【モヒカン・ヘアー】だったから(笑)
タケルのことを、みんな気持ち悪そうな感じで、横目で見ていたから(笑)

タケルが、その女の子達に髪型を自慢し、すっかり意気投合したようで、3人ぐらいいたうちの1人を、ホテルに連れて帰った。

急遽、もう1部屋借り、俺は1人で、その部屋に入った。
べつに【女に興味がなかった】わけでもない。良い格好をしてるわけでもない。ただ、【そんな気分じゃなかった】だけで。
部屋に、本が数冊あり、その中に【へルマン・ヘッセ詩集】があった。俺は、買ってきたバーボンを飲みながら、ヘッセを読んでいた。
タケルと女の子のことを、すっかり忘れていたんだが、どうやらその女の子達は未成年で、タケルが連れ込んだ、女の子以外の2人が、その子の親に話したようで、親が警察に通報し、タケルの相方の素性が、【俺】と言うことがバレて、ホテルにパトカーが5台も来て、真夜中だと言うのに俺は捕まり、警察署に連行された。

幸い、部屋は俺1人だったから、俺だけ連行され、3時間ぐらい取り調べを受け、ホテルに帰らされた。

朝、目を覚ましてすぐに、ホテルのロビーに電話をかけ、【連泊したい】旨を伝えると、見事に断られた。
まぁ、あれだけパトカーが来て、たいしたことでもないのに、まるで【大捕物】みたいな感じになれば、ホテル側が嫌がるのも無理はない。

チェックアウトを済ませ、他のホテルに行ったが、何故かそこでも、断られた。
数軒のホテルを回ったが、答えは同じ……。
ホテル同士の連携、すごいよ……(笑)

地元に帰れるほどの、金はない。
行くあてもない。
タケルと俺は、舞鶴市内の公園で、野宿をする羽目になった……。

【身から出た錆】【因果応報】………。
誰のせいでもない………。わかってる。わかってるけど【軌道修正】の仕方が、わからない。
ただのイカれた【ろくでなし】だ……。
ただのイカれた【チンピラ】だ………。

荷物は、着替えの入った、大きなバッグが1つずつ。
4月の舞鶴は、とても寒かった。バッグの中の服を、何枚も重ね着して、夜の公園のベンチで眠る………。安いバーボンで、少しは寒さも紛れた。
でも、こんな暮らし、想像もしてなかった。そりゃ、裕福な暮らしができるとも、贅沢な暮らしができるとも思ってなかったけど、まさか【公園で野宿】とは………。

【長い人生、生きてりゃ色々あるさ】
と、自分に言い聞かせながら、無理矢理に笑ってた。たぶん、あの頃の【俺の笑顔】は、きっと歪んで、ひきつってただろうな……。

隣のベンチで、呑気にイビキをかいて寝てる、タケルの神経が羨ましかった。

【諦め】と【抵抗】……。
繰り返す葛藤………。
でもこの頃、不思議なことに
【このまま終わってたまるか❗】
と言う感情が、とても強かった。


若狭に着いて、とりあえずは車で寝泊まりしていた。
夕方、近くの銭湯へ行き、そして近くの食堂へ。そこでビールを飲み、ちょこちょこっとだけつまんで、車に戻って眠る。
そんな日々が、1週間ぐらい続いたろうか。

ある夜、同じように食堂で飲んでると、懐かしい地元の方言が聞こえてきた。
ツトムとタケルと3人で、その人達の席まで行き、同じ地元であることを告げた。
すると、その中の1人のおじさんが、

『そうなんか❗同じ地元なんか❗嬉しいのぉ❗ところで、お前ら仕事しとるんか?』

『いや、してません。』

『そうなんか❗そしたら、うちの会社で働けぇや❗寮もあるけぇ、飯も風呂も、寝床も心配いらんけぇ❗作業着も全部、買うちゃるけぇ❗』

とのことで、いい加減【車のベッド】に飽き飽きしていた俺達は、その会社で使ってもらうことにした。どうせ、この街に長居するつもりなんて、さらさらなかったし。

会社の寮に入っても、毎日のように3人で、薬ばかりやってた。
当然、仕事には出てた。でも、なかなか【癖】は、直らない。その頃は、
【仕事はしてるんやから、これぐらいエエやん】
みたいな気分だった。やっぱり、世の中からは、かなりズレた生き方……。
でも、少しずつではあるが【変わりたい】と言う気持ちが、強くなっていたのも事実だった。

そんなある日、突然、ツトムが
『田舎に帰りたい』
と言い出し、1人で帰っていった。その時には解らなかったが、今思うとあれは【虫の知らせ】だったんだろう。ツトムが帰省して間もなく、ツトムの親父が他界した。

ツトムは幼い頃から、親父と2人暮らしで、母親の顔さえ知らない。ツトムはこれで、文字通りの【天涯孤独】になってしまった。
ツトムが、本当に可哀想だった。

タケルと俺はと言えば、仕事から帰ると、毎晩のように酒と薬に溺れ、同じ寮に暮らしている、他の会社の人間と、喧嘩ばかりしていた。

そんなある夜、いつものように喧嘩をして、相手をひどく傷つけてしまい、タケルと俺はクビになった。
タケルに、
『どこかで一杯飲んで、田舎に帰ろう。』
と話し、車を海に捨てて、【舞鶴行き】の列車に乗った。
【一杯飲むだけ】
のつもりで……。

【風来坊】な癖は、直らない。
【放浪癖】は、直らない。
でも何故か、いつも【母親】が、気がかりだった。
タケルと、2ヶ月ぐらい一緒にいたが、目的や目標のない日々に飽きた俺は、組織にこそ入らなかったが、タケルと離れ、再び【反社会勢力】の世界に浸っていった。

ある日、俺の【兄貴分】にあたる男から、俺の親父が車を買った、俺を借金の【カタ】にして……。相変わらずの親父のやり方に、心から嫌気がさした俺は、この街そのものが、嫌になった。
街に出て、いつも行ってた店で、いつものように飲んでいた。そこに、タケルがやってきた。

『こんばんは~。どうしたんすか~?  俺、暇なんすよ~。』
相変わらず、ラリっていた。
仕方がないので、店を出て、タケルと車でブラブラと走ってた。
ところが、車が動かなくなった。頭にきた俺は、車を乗り捨て、電車に乗った。
気がついたら、タケルと2人でふらふらと、ツトムの住んでた街の駅に、辿り着いていた。

駅を出て、缶ビールを飲みながら、ふらふらと歩く。気がつけば、ツトムの家に来てた。

なんと、ツトムが帰ってきてた。

『すまんな。昨夜、帰ってきたんや。』

『お帰り。コイツは、タケルや。』

『俺ら3人で、どこか知らん街でも行こか?  そこで、バカ騒ぎしよや❗』

『OK❗』

すっかり意気投合して、俺達は無免許で車を運転しながら、福井県の【若狭】まで来ていた。

【今度こそ、何かが変わる】
そんな気がしていた。