若狭に着いて、とりあえずは車で寝泊まりしていた。
夕方、近くの銭湯へ行き、そして近くの食堂へ。そこでビールを飲み、ちょこちょこっとだけつまんで、車に戻って眠る。
そんな日々が、1週間ぐらい続いたろうか。

ある夜、同じように食堂で飲んでると、懐かしい地元の方言が聞こえてきた。
ツトムとタケルと3人で、その人達の席まで行き、同じ地元であることを告げた。
すると、その中の1人のおじさんが、

『そうなんか❗同じ地元なんか❗嬉しいのぉ❗ところで、お前ら仕事しとるんか?』

『いや、してません。』

『そうなんか❗そしたら、うちの会社で働けぇや❗寮もあるけぇ、飯も風呂も、寝床も心配いらんけぇ❗作業着も全部、買うちゃるけぇ❗』

とのことで、いい加減【車のベッド】に飽き飽きしていた俺達は、その会社で使ってもらうことにした。どうせ、この街に長居するつもりなんて、さらさらなかったし。

会社の寮に入っても、毎日のように3人で、薬ばかりやってた。
当然、仕事には出てた。でも、なかなか【癖】は、直らない。その頃は、
【仕事はしてるんやから、これぐらいエエやん】
みたいな気分だった。やっぱり、世の中からは、かなりズレた生き方……。
でも、少しずつではあるが【変わりたい】と言う気持ちが、強くなっていたのも事実だった。

そんなある日、突然、ツトムが
『田舎に帰りたい』
と言い出し、1人で帰っていった。その時には解らなかったが、今思うとあれは【虫の知らせ】だったんだろう。ツトムが帰省して間もなく、ツトムの親父が他界した。

ツトムは幼い頃から、親父と2人暮らしで、母親の顔さえ知らない。ツトムはこれで、文字通りの【天涯孤独】になってしまった。
ツトムが、本当に可哀想だった。

タケルと俺はと言えば、仕事から帰ると、毎晩のように酒と薬に溺れ、同じ寮に暮らしている、他の会社の人間と、喧嘩ばかりしていた。

そんなある夜、いつものように喧嘩をして、相手をひどく傷つけてしまい、タケルと俺はクビになった。
タケルに、
『どこかで一杯飲んで、田舎に帰ろう。』
と話し、車を海に捨てて、【舞鶴行き】の列車に乗った。
【一杯飲むだけ】
のつもりで……。

【風来坊】な癖は、直らない。
【放浪癖】は、直らない。
でも何故か、いつも【母親】が、気がかりだった。