ツトムの家に転がり込んで、1ヶ月余りが過ぎた。
近くの、建設会社でバイトをしながら、とにかく【新しい何か】を見つけるために、生きていた。

そんなある日、突然、ツトムから告げられた。
『俺、東京に戻らんといかんのや。』
実は、ツトムは数年前まで、東京で暮らしていた。ところが、会社の仲間と一緒に、無免許なのに社長の車を盗んで、事故を起こしてた。その、借金の返済の為に、東京の会社から、戻ってくるように言われたようだ。

ツトムは俺に言った。
『すまんな……。』

『べつにええよ。俺こそ、世話になりっぱなしで、長居してしもたな。すまんな……。』

『帰ってきたら、また連絡するから、もう無茶してパクられるなよ。』

『またな……。』

こうして、ツトムと俺は再び、【それぞれの場所】に戻った。

俺は、古巣の街に戻り、鬱々とした日々を送っていた。
そんなある日、俺は【タケル】と出会うことになる。
タケルは、俺の弟の同級生で、以前から俺のことは知っていたようだ。
ただひとつだけ、厄介なことがあった。それはタケルが、【正真正銘のジャンキー】だったこと……。まぁ、俺も似たようなもんだったが……。

こうして俺は、再びタケルと薬漬けの日々を送ることになるんだが、どこかしら、今までとは違う気持ちだった。これまでは【もう、どうでもいい】と思ってた気持ちが、【このままじゃあマズい。本当にヤバい。】と言う思いが、強くなってきてた。
心の中の【何か】が、自分自身を捨てきれなかった。心の中の【どこか】が、諦めきれなかった。
葛藤が始まった。

抵抗する俺……。流されまいと、心の中で必死にもがく俺……。
諦めようとする俺……。投げやりになろうとする俺……。

なんとかしたかった。変えたかった。
【環境】じゃなく【自分自身】を変えたかった。


【俺は、何の為に生まれてきたんだ?】
その【意味】を、知りたかった。

そう、【どっちつかずの半端者】と言われても、俺には返す言葉もない。

真面目な社会人ではない。かといって、【反社会勢力組織】も務まらない。
【俺は一体、どうしたいんだ?】………。相変わらず、湧き出る自己への疑問。
今まで殴ってきた連中から、仕返しを繰り返された日々。離れていった、昔の仲間達………。また、薬漬けのような日々………。
こうなったのも、すべてが【自業自得】だよな。
【死】を意識しはじめた。
結局、俺の19年間の人生って、たいした楽しみもなかった。かといって、これから先にだって、たいしたこともなさそうだし。
無気力な感情が、俺の全部を包んでいた。

【そうや❗ツトムに会いに行こう❗】
突然、そんな思いになった。
ツトムと言うのは、俺の幼馴染で、隣の街に住んでいた。中学の頃に、俺の従兄弟の紹介で、仲良くなった。よく、一緒にバカなこともやった。

突然、俺が現れたので、ツトムは少々、驚いていた。
『年少から、出てきたんか?』

『うん。』

『何かあったんか?』

『べつに。』

『そうか。』

ツトムはそれ以上、何も聞かなかった。恐らく、すべて判ってたんだろうけど、何も聞かなかった。
ただ、2人でバカな話をして、笑いながら酒を飲み明かした。

この頃は、ツトムの【何も聞かない・何も言わない】優しさが、唯一の支えだった。

たぶん、その時のツトムの気持ちは、この曲みたいだったんだろうな…………。
1年と数ヶ月が過ぎ、少年院を仮退院。

帰ってきた俺は、【反社会勢力組織】からは、抜けようと思っていた。それは【真面目になる】とかそんな気持ちじゃなくて、ただ【疲れた】と言うのが、その時の素直な心境だったと思う。

組織の親分に、【抜けたい】と伝えることは、正直な話、とても恐かったが、それをしなければ、何も始まらない。とにかく、それをやってからしか、【次】に進めない。
勇気を出して、親分の家に行き、少年院から出てきたことを伝えた。そして【カタギになりたい】と言い出そうとすると、逆に【破門】を伝えられた。
ようするに【クビ】だ。

時代は【バブル初期】。好景気に肖り、金儲けをしようとしていた組織は、俺のような【危険人物】を組織に置いていては、それこそ警察に目をつけられ、まともに儲けられないから、とのこと。
おかげで、たいしたイザコザもなく、組織を抜けられたわけではあるが、反面、【虚しさ】も感じた。【俺は、こんな組織でさえ続かない】と言う、よく分からない、虚しさ。

その後、これまで敵対していた連中が、毎日のように【仕返し】に来た。
その連中に、どれだけ殴られても蹴られても、耐えるしかなかった。これも【因果応報】と言うものだろうから。
【御礼参り】のような出来事は、2週間ぐらい続いた。身体は、病院の御世話になるほど、ボロボロになった。

【御礼参り】のような出来事もなくなってきた頃、昔の仲間達の家を訪ねたが、みんな【真面目】になっていた。
付き合いは、全員に断られた。

まるで、ドーンと上がった打ち上げ花火が、一瞬にして消えるように、みんな【過去】を捨てていた。それぞれが、前に進んだんだな。

俺はまた、【孤独が仲間】になった。

そりゃ、みんないつまでも、バカなことばかりやってられないよなぁ……。