厨房では、真剣な眼差しでケーキ作りに向き合っていました。
一つ一つ手作りで、丁寧に仕込み、宝石のようなケーキへと仕上げていく。
ショートケーキ、モンブラン、プリン、シュークリーム・・・
カップの中に夢の世界が広がる。
「ケーキをもっと身近に」。
ケーキの新しい食スタイルの提案。
2019年3月にオープンしたのが、「菓子工房Hiro」さんです。
お店があるのは、川越市市役所近く。
一番街の札の辻~川越市役所の本町通り沿いにあります。
向かって左が「もとやだんご店」さん、右が「glin coffee」さんで、和菓子店と洋菓子店と珈琲店が3店並んでいます。
「菓子工房Hiro」
川越市元町1-8-1
営業時間
10:00〜19:00
定休日 月曜日、月1回火曜日休み(祝祭日の場合翌日休み)
TEL/FAX:049-227-9335
西武新宿線本川越駅蔵のまち口(東口)より徒歩約24分/東武東上線川越市駅出口より徒歩約30分
札の辻交差点を市役所方面に進んで左手
お店の扉を開くと、真っ先に目の前にショーケースが現れる。
パティシエが丁寧に手作りしたケーキたちがケースの中でニッコリ笑顔で輝いている。
菓子工房Hiroさんは生菓子と焼き菓子を提供しているお菓子屋さんで、生菓子がメイン。
菓子工房Hiroは、パティシエ池田浩也さんのお店で、下の名前から店名をとっている。
池田さんが一人で全てのお菓子作りの全ての工程を行っており、全てが池田さんの手作り。
さらには接客まで自身で行う時間帯が多い。
本町通りは、昔から続く老舗店に近年になってオープンした新しいお店も点在し、混在具合が魅力的な通り。
場所柄、観光客が多いかと思いきや、地元の人がメインに足を運んでいるお店。
その秘密は、元町一丁目や近隣の地域の人にとっては、待望のケーキ屋さん。
(元町一丁目で言えば、元町一丁目初のケーキ屋さん)
地域の人はケーキを求める際は駅方面に行ったりすることが多く、近場で美味しいケーキが手に入れば・・・と熱望していたところに菓子工房Hiroがオープンし、早速常連になっている人もいる。一度買うとリピーターになる人も多い。
お気に入りのケーキを毎回購入する人、色んなケーキを食べ比べる人、それに、お店の前が小学校の通学路になっており、お菓子屋さんに目をキラキラさせる子どもたちは、お小遣いを握りしめてケーキを買いに来る光景も見られる。
なんだかそれは地域の駄菓子屋さんのような光景でもあり、町のお菓子屋さんとしての存在になっている。
お店のショーケースには、菓子工房Hiroのキラキラとした華やかな定番ケーキがずらり。
定番の生菓子が8~10種類ほど。
・ショートケーキ
・フルーツまつり
・フランスマロンモンブラン
・川越芋のモンブラン
・ティラミス
・フランボワーズショコラ
・レアチーズ
・プリン
・シュークリーム
・小江戸ら(生どら焼き)など
ケーキは当然ながら、保存料・着色料などの食品添加物は不使用。
ゆえに、生ものなので消費期限は当日。
一見して、他のお店では見られないものが並んでいることに気付く。
ケーキであるけれど、通常パティスリーで見られる三角形ではなく、シュークリームなどのお菓子以外、カップに入れられているのです。
そう、菓子工房Hiroでは、カップケーキに特化したお菓子屋さん。
カップケーキもある、のではなく、カップケーキが主という世にも珍しいお菓子屋さん。
カップで中でムースや、ゼリー、ショートケーキを仕上げています。
カップケーキ主体と言うと、創作ケーキのお店かと思いきや、菓子工房Hiroのショーケースに並ぶケーキはケーキ屋さんお馴染みのショートケーキやプリン、シュークリームといった顔ぶれ。
カップで定番ケーキというのが逆のギャップかもしれない。このギャップが新鮮。
カップケーキは一般的なケーキとまた異なるジャンルと思い浮かべるかもしれませんが、ここが菓子工房Hiroの真骨頂で、一般的に見られる三角形のケーキそのままをアレンジしてカップに入れているのです。
つまり、使っているケーキフィルムやアルミなどの資材が違うというだけで、ケーキはケーキ、全く同じものです。
作る工程が若干変わりますが、使い素材が変わるわけではなく、パティシエが作るお菓子である。
容器に入っているというケーキの新発想。
カップだと量が少ない?というのも想像を裏切り、Hiroのカップケーキは一般的な三角のケーキの量と変わらない。
容器が変わるだけで別のジャンルと思わせるところが、ケーキの伝統イメージがそれだけ定着していることを物語ます。
意外な発想ですが、しかし考えてみればこれは実は理にかなっているもの。
カップであれば、まず手が汚れにくいです。
子どもでも一人で食べることができます。
また、手でカップを持って食べることができ、口まで近づけることでこぼすことも減ります。
ケーキを倒して「ああぁ・・・!」という残念な気持ちになることもない。
(障がいを持っている人が倒したり手を汚したりしないで食べやすい・食べさせやすいと菓子工房Hiroの常連にもなっている)
持ち帰り時に箱の中で倒すこともほとんどありません。
一般的なケーキは箱から取り出した後にお皿に移すなりという工程があり、人によってはきちんとナイフとフォーク、珈琲・紅茶などの飲み物を用意してから食べるという人もいる。
それと比べると、カップケーキだと箱から出したらそのまますぐにケーキタイムがスタート。
ケーキを食べるハードルがグンと下がるのが特徴。
そして食べ終わった後の片付けも簡単。
ケーキを食べる心理的ハードルも格段に下がり、手間も減少し、ハレの日にケーキをという食スタイルから一転、まさにおやつ感覚でケーキを食べられるメリットがあります。
良いことが多いではないかというカップ容器ですが、この食べ方が世の中に浸透しているとは言い難い。
ケーキは普段使いよりハレの日にという認識は根強く、ハレの日に食べるならお皿に載せて珈琲や紅茶と共にという形も健在。
作り手のパティシエにとっても、伝統的な三角形を崩そうという発想も持ちにくい現状があるでしょう。
だからこそ、パティスリーからの発信で、世に新提案のカップのケーキが誕生したことが貴重なのです。
Hiroさんは、パティシエとして誰もがイメージする一般的な形のケーキを作ることができます。
菓子工房Hiroを、イメージをし易い「パティスリー」とすることもできた。
しかし、あえての選択で、カップを選んだのです。
菓子工房Hiroさんがカップを採用したのは、なによりも、
「気軽にケーキを食べてもらいたい」
その一心に尽きます。
ケーキを特別なものから日常のものへと変換の提案をしたい。
お菓子作りの腕に自信を持つからこそ、この選択をできたとも言える。
カップケーキのお店であり、キャリアを積んだパティシエが作るガチガチの正統派ケーキ屋さんでもある、ここが菓子工房Hiroの世にも珍しい立ち位置なのです。
形に目を奪われつつも、なによりケーキの美味しさが人を虜にしている。
菓子工房Hiroのケーキは、特に生クリームが美味しいと評判、脂肪分多くし過ぎないようにし、でも軽くならないようにし、甘さ控えめに調整して老若男女問わず食べられるようにしている。
「美味しいケーキを食べてもらいたい」
と小麦粉や卵、砂糖、バター、チーズ、チョコレートなどの素材の質の追求もHiroらしい。
(菓子工房Hiroのケーキ、クッキーなどはバターのみ使用。マーガリン、コンパウンドは一切使用していません)
カップだから変わった内容なのでは?とイメージすると思いますが、カップだから正統派ケーキを意識していると言うこともできる。
このようなケーキゆえに、子どもたちが揃ってケーキを買いに来たりする姿も見られる。
通常のパティスリーでは、子どもだけで買いに来るなんてそうそう見られるものではない。
子どもたちは、自分たちでもここは入れる、と敏感に察知している。そこに、菓子工房HiroのHiroたるゆえんが発揮されているようでした。
ショーケースに並ぶケーキは、季節のケーキも定期的にお目見えし、暑い時期にはさっぱりしたビターオレンジとライチのケーキなどのフルーツケーキにゼリーなど、秋になれば和栗のモンブラン、秋冬はチョコレートやキャラメルを積極的に展開、春になればイチゴを使っていく。
他にも母の日、父の日、雛祭り、こどもの日、敬老の日、ハロウィンやクリスマスといったイベントケーキも登場させていく予定です。
イベントケーキは短期間の提供ですが、例えば旬の桃を使ったケーキは一ヵ月間は提供できる、その時期ならではの限定ケーキは常に何かがあるのだ。
そして、ここに菓子工房Hiroならではの思いが潜まれていた。。。
菓子工房Hiroさんで、他のお店では見られないこととして、雛祭り、こどもの日、母の日、父の日、ハロウィン、クリスマス、バレンタイン、ホワイトデーなどのイベントケーキの提供を、翌日まで提供している点が挙げられる。
母の日、父の日などの節目が当日仕事でケーキ屋さんに買いに行けない人も多い。
そして多くのお店ではイベントケーキは当日までの提供で終わってしまうため、贈りたくても贈れない、もどかしい思いに駆られている人も多い。
ケーキ屋の現場で働いてきたからこそ知るお客さんの気持ちに応えようと、そしてHiroさん自身が仕事でなかなか当日に贈れない経験をしてきたからこそ、菓子工房Hiroではイベント翌日まで店頭でイベントケーキを提供しているのが特徴。
これはお店の運営にとっては大英断。多くの人にとっては母の日はその日に贈るもので、お店の方はその日が最も売れる。翌日に母の日ケーキを並べても売れないというのがケーキ屋さんの本音でしょう。しかしニッチでも必要だという需要があるなら提供しようと、菓子工房Hiroではイベント翌日まで提供を行っているのでした。
気軽にケーキを食べてもらいたいと願いつつも、ケーキが生活の節目を祝うことに大事な役目を果たしているのも事実。菓子工房Hiroのケーキは、記念日に「ここのケーキを」と指名する人も多い。
ちなみに菓子工房Hiroでは、3日前までの事前予約で誕生日などの記念日にホールケーキを作ることもしています。
「ショーケースに並ぶこのカップケーキ(プリン以外)で誕生日のホールケーキが欲しい」と言えば作ってくれる。名前入りプレート、ロウソクも提供している。
そこはパティシエとしての本領発揮、お客さんの要望に合わせたケーキを作ることもできる。
カップケーキ主体でありながら、誕生日などの要望が寄せられるとろこに、パティシエとしての腕が信頼されている証拠と見ることもできるのでは。
(普通に考えたら、カップケーキのお店で誕生日ケーキを頼まない・・・?)
「応えられるだけ応えたい」
と話し、要望に応じて、例えばチョコレートとスポンジの生地を半々にしたショートケーキなどオリジナルのケーキを製造してくれる。
地域の人に親しまれているお店の在りようが伝わってくるよう。
洋菓子のみならず、和洋菓子として、生どら焼き小江戸らも販売中。
パティシエ池田さんが1枚1枚焼き上げたどら焼きで、こしあん、生クリーム、栗のきざみ、川越芋のペーストをサンドしました。
生菓子以外にも、焼き菓子は10種類ほど用意しています。
チョコチップ、マーブル、フロランタン、マドレーヌ、ガレット、川越芋のタルトなど、焼き菓子BOXもあり。
他にも、菓子工房Hiroでは食べ歩きにも対応しており、お菓子と合わせて、おしぼり、紙ナフキン、空の容器を入れる袋も渡している。
定番ケーキをカップで提供する、これは一体どんな工程で作られているのか?
その裏側は・・・カップ容器に入れるためにスポンジの形状を変えたりする工夫はありますが、ケーキ作りとしては他と全く同じ。
店奥の厨房では、製造に取り掛かっていた。
菓子工房Hiroでは作りだめのケーキは一切なく、常に作りたての新鮮なケーキを提供している。
スポンジ作り、仕込み、仕上げ、全ての工程を一人で行っているのが特徴。
この時はビターオレンジとライチのケーキ作り。
出来上がったケーキは新鮮なまますぐにショーケースに並べられ、そして、目当てにしたお客さんが早速家に連れて帰っていくのだった。
菓子工房Hiroの池田さんは、お店を開く時に確信を持ってカップケーキを提供しようと決めていた。
菓子工房Hiroの、カップケーキが誕生するまでの経緯とは。
菓子工房Hiroの池田さんは、一貫してお菓子作りの人である。
西武文理大学附属調理師専門学校在学中、研修で鶴ヶ島市にある「お菓子の店 ファリーヌ」で働いた縁から、卒業後そのままファリーヌに入社しました。
ちなみに、八幡通りにある「やき菓子 野里」さんと池田さんは専門学校の同級生。
(川越style「やき菓子 野里」自分を大事に。人を大事に。八幡通りにある焼き菓子店
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11573146131.html)
ファリーヌは30年以上の歴史があり、地域の人気店としての地位を確立している。
ちなみにお菓子店 ファリーヌは、「ぶらり途中下車の旅」で紹介されたり、鶴ヶ島市のふるさと納税のお礼の品にも選ばれている。
池田さんはケーキ作りのイロハをファリーヌで学び、
「今の仕事のベースはファリーヌで学びました」
と振り返り、ケーキ作りの工程から接客に至るまで、パティシエとしての形をここで作り上げていった。ファリーヌでは13年ほど働いていました。その後、2店のケーキ店で働く。
パティシエとして仕事をしながら、池田さんの胸の内には、「自分が作りたいケーキ」のイメージがふつふつを湧き上がってくるのを自覚していた。
池田さんは、お菓子作りに従事しながら、以前から胸の底からふつふつと湧き上がってくる気持ちがありました。
「近年、世の中のパティシエの地位が上がり、お菓子の価値が高まったことは嬉しい、しかしそのことでお菓子が特別なものになってしまっているのではないか」
特別なものとしてのお菓子がありつつ、もっと身近なものとしてのお菓子があってのいいんじゃないか。
自分が自分のケーキを作るならこうしたい、こんなお店にしたいという思いは膨らみ、独立を決意する。
ケーキのハードルを下げるための、カップ容器。
これなら(例えが正解でないかもしれないが、コンビニのカップスイーツのようであり)見た目の親近感から一気にハードルが下がり、躊躇なく手を伸ばすことができる。
「地域密着で、子どもから大人まで気軽に立ち寄れるお店にしたかった」
自分のお店を開くとするなら、カップケーキだ、池田さんのコンセプトは定まっていった。
「特別なものとしてのケーキもいいが、もっと気軽に、身近な食べ物としてケーキを提供したい」
長く住んでいる川越でお店を開きたいと場所を探し、2019年3月に独立したのでした。
池田さんの明確なイメージは、独立前から既にカップケーキを主体とすることを決めていただけでなく、ケーキの種類なども決めていて、こういうお店にすると確信を持ってのオープンでした。
店名はPatisserieではなく、親近感を持てる「菓子工房」に。
ケーキの名前も、ショートケーキ、プリン、シュークリーム、モンブラン、誰もがすんなりイメージできる名前を意識した。一見してどんなケーキか掴みにくいフランス語表記などのケーキはここにはない。
お店の前が通学路になっていることから、
「子どもたちがショートケーキ一個だけでも買えるような雰囲気のお店にしたかった」
その想いは通じ、菓子工房Hiroには、駄菓子屋に通うがごとく、小銭を手にして子どもたちがケーキを買いに来る光景が見られる。
務めていた時からお客さんとのやり取りが好きだったと話す池田さん、今お店で接客まで自身でこなすのは苦労でもなんでもなく、お客さんの反応や要望にダイレクトに応えられるとメリットとして捉えている。
一人で製造・販売までこなすことで、この場所には常に自分がいる。店名にまで入れた自身の名前が生きてくるのだ。
店名に名前を入れるパティスリーは多いですが、その人がお店にいないことも実は多い。
その点、菓子工房Hiroには、店名が表している通り、池田浩也さん、Hiroさんがいつもいる安心感がある。
日常にあるケーキ屋さん。
器が変わるだけでケーキとの関係ががらりと変わる。
カップの中に夢を詰めて、菓子工房Hiroはケーキの新しい提案をしていく。
カップを手に、ケーキが身近になっていく。
「菓子工房Hiro」
川越市元町1-8-1
営業時間
10:00〜19:00
定休日 月曜日、月1回火曜日休み(祝祭日の場合翌日休み)
TEL/FAX:049-227-9335
西武新宿線本川越駅蔵のまち口(東口)より徒歩約24分/東武東上線川越市駅出口より徒歩約30分
札の辻交差点を市役所方面に進んで左手