たくさんの種類のお菓子が並んでいる中から、フルーツケーキに目が止まった。
その優しい佇まい、その四角のお菓子を見ていたら、
そうだ、この建物自体が四角くてフルーツケーキのようだと思い浮かべた。
フルーツケーキの可愛らしい建物に、優しいフルーツケーキが並ぶお店。
お菓子ってなんだろう??
堅苦しい意味はなく、このお店にいると、なんとなくそんな事を考えてしまうんです。
「お菓子ってなんだろう・・・??」
お店に居てお菓子たちと視線を合わせ、食べて、
少しだけ分かった気がしました。
お菓子はお米やパンのように、
生活必需品ではないかもしれない。
でも嗜好品だからこそ、日常からフッと離れて一口サクリと食べる事は、
食べている時間と、
食べている「自分」を
より大切に思えるんじゃないか、って。
自分を大事に。
そして、美味しいお菓子は人に上げたくなる、
この美味しい時間を共有したくなる、
「人」を大事に思えるようになるんじゃないか、って。
人を大事に。
そんなことを考えていて、自然と思い浮かんだのが、
「自分を大事に。人を大事に」という言葉だったんです。
この言葉が、このお店のお菓子に本当にぴったりだなと思いました。
全部、やき菓子野里さんのお菓子から貰った言葉です。
お菓子の本当に触れられた気がしました。
自分を大事に人を大事に。
川越で貴重な焼き菓子専門店、「やき菓子野里(ノリ)」さんがあるのは、
川越の八幡通り、丸広百貨店と川越八幡宮の間くらいにあります。
「やき菓子 野里」
川越市新富町2-14-2
11:00~19:30
049-222-3250
定休日 月曜日・火曜日
HP:
https://www.yakigashi-nori.com/
扉を開くと甘い香りが漂う店内。
マフィンにタルト、フルーツケーキ、シフォンケーキ、
クッキー、パウンドケーキ、ビスケット、ガトーショコラ、
フィナンシェ、マドレーヌ、プリン、チョコレートケーキ、レアチーズケーキなどのお菓子があり、
週替わりで、あるいは季節によって顔ぶれが変わっていきます。
小さなお店だけど、その焼き菓子の種類の豊富さは、わあ!と思わず笑顔になります。
一口食べたら、優しい食感に口の中に広がる優しい味。
この味がずっと続けばいいのにと思う幸せの味。
一つ一つが丁寧に、大切に作られたお菓子たちは、
ここに在る佇まいを見ているだけで、ワクワクしてくる。
野里の焼き菓子たちは、全てのお菓子を毎日朝からここで焼いて作り立てを並べています。
作っているのは一人、これだけの種類を豊富に揃えるというのは、
誰の目からも明らかに大変な事。
作る工程は生地を扱うという点ではパンに似ているけれど、
パンのように一つの生地からいろんなパンを作れるわけではなく、
マフィンやシフォンケーキなど、違う工程で作られるお菓子はそれだけの手間と時間が必要になります。
そうだとしても、苦労を自ら背負おうとするのはやはり、
たくさんの種類を用意して「選ぶ楽しさを提供したい」から。
野里に通う人は、女性が多いのはもちろんのこと、男性もファンが多いのも以前から変わらず、確かにここのお店なら入りやすい。
野里といえば、特に常連が多いお店として知られ、
2009年9月のオープン以来、ずっと通い続けている人も数え切れない。
だから週替わりで変化する楽しみを用意しようとしています。
それに年代も幅広く、小さいお子さん連れから、
仕事帰りに「今日一日の自分へのご褒美」にといくつか買って帰ったり、
年配の方が優しい甘さに惹かれて、野里のお菓子に手を伸ばす。
店主である野里の田中自身も小さな子がいるので、
安心な食べ物には人一倍敏感です。
自分の子どもに食べさせるのと同じ気持ちで「安心、安全なものを食べてもらいたい」。
ファンは毎週のように通い、ずっと決まったお菓子を買い続ける人もいれば、
毎回違うものを買う人もいる。
12000円で一杯になる野里のスタンプカード、
これを何枚も貯めた人も多数いるなど、ファンのファン度のエピソードには事欠きません。
そしてそういうお客さんを、小さなお店で近い距離で接するからこそ野里も把握していて、
お客さんが扉を開けて入ってこようかという時から、
「あのお菓子をお買い求めになるかな」と、顔をお菓子を覚えている。
美味しいと言ってもらえるのがなにより嬉しいです」と、日々焼き菓子を作り続けています。
そして、野里で多いのが「ギフト用に」。
クリスマスやバレンタイン、ホワイトデー、入学式、誕生日、
その他お祝い事があればお店で用意しているボックスに、
選んだお菓子と共に思いを込めて、贈ることができる。
もう今更という感はありますが、当然のように野里は素材にもこだわっていて、
北海道産小麦100%、埼玉県産卵、
さとうきびをそのまま煮詰めたきび砂糖、
バターはクリームを乳酸発酵させて作る発酵バターを使用。
そして以前記事にしてから3年経ち、
今の野里はより質の高い素材を使っているのだと言い、
製法にしても粉の配合からクリームの作り方、細かいブラッシュアップがあり、
以前より確実にレベルアップしている。
そこに季節のフルーツなどを取り入れて、季節によって様々なお菓子を作っている。
そう、野里のお菓子の楽しみでもあるのが、
旬の食材を採り入れてお菓子に活かしている事でしょう。
「まず旬の食材が出てきて、それを見てから『どうお菓子に使おうか』考えます。
食材ありきなので、料理の発想に近いかもしれません」
そう考えるのは、やはり以前の料理経験も影響しているのかもしれません。
食材が出回ってからお菓子を発想するので、例えばお店でよく見られるような「8月限定のお菓子」という月替わりを謳うことはできず、
旬の食材が手に入る時が、新しいお菓子ができる時。
特にタルトは、旬のフルーツが手に入ってこそなので、
その時一番美味しいものを一番美味しくお菓子に仕立てて提供しています。
特に野里で使うフルーツに関しては、
(こだわるお店では見られませんが)ケーキ屋さんでよくあるような缶詰ではなく、
生のフルーツを使用。
生を使うことで必然的に賞味期限は短くなりますが、(そしてお店としてのロスも心配になりますが)
生のフレッシュ感、美味しさは何ものにも変え難い。
それがお菓子というか、食べ物の本当のはず、
野里は当然のようにこの道を選んでいます。
季節を敏感に採り入れる野里だから、その焼き菓子の上には季節が載っているとも言える。
野里のお菓子から、季節を感じるというのもなんだか楽しい。
今の1月の時季だと、とちおとめのタルトに焼きリンゴのタルト、デュポンのタルトが今らしく並んでいます。
2月に入れば本格的なバレンタインシーズンの到来、
チョコレートを使ったお菓子が店頭に多くお目見えしていきます。
引き続きイチゴに柑橘類は美味しい時季は続き、
冬を越えて暖かくなってくれば、3月、爽やかな桜の登場です。
桜のシフォンケーキ、はちみつと紅茶のパウンドケーキ
キャラメルナッツのタルト、和栗のマフィンなどが並んでいました。
(3月の野里のお菓子たち)
春が過ぎれば、イチジクのタルトや杏のタルト、ベリーのマフィン、さくらんぼも出てきて、桃のクランブルタルトなどの季節になります。
桃のタルトは、この時季になればあのお菓子、と待ち焦がれている人も多い人気お菓子。
外はサクサク、中には旬の桃が隠れていて、生地と桃の口の中の解け具合がたまらない。
さらに暑くなってくれば杏やレモン、オレンジを使ったお菓子が登場する。
(7月の野里のお菓子たち)
夏の暑さが落ち着いて秋になればお菓子が欲しくなる10月へ。
和栗のタルト、木の実のタルト、リンゴとさつま芋、かぼちゃのシーズンが始まっていきます。
(10月の野里のお菓子たち)
やき菓子野里の田中さんは川越生まれ川越育ち。
もともと、BAGEL&BAGELで店長として働いていて、
「自分で手作りするものを提供したい」と、
30歳の時に一念発起して調理師専門学校に通い始めた。
卒業後東武ホテルでフランス料理、料理からお菓子までの製造を6年間経験し、
ミオ・カザロで働いていた時期を経て、
2009年、ここ八幡通りに焼き菓子専門店をオープンしました。
ちなみに今お店で出しているタルトやパウンドケーキ、ガトーショコラは、
ホテル時代から作っているもの。その時のレシピをアレンジしたりして作っている。
野里は川越のイベントに出店する機会も多く、新たなファンを日々増やしています。
特に2015年11月、川越で満を持しての第一回開催が実現した「小江戸川越お菓子マルシェ」は、
野里さんがずっと抱いていた思いが後押しになったことは間違いありません。
「川越はパンのイベント『川越パンマルシェ』は盛り上がっているけれど、お菓子のイベントがない。
パンマルシェのようなお菓子のイベントが川越にあったらいいのに」
川越の和菓子店、洋菓子店は少なからず同じ気持ちを抱いていて、
一つ動き出すとあっという間に一つにまとまり、川越でお菓子店が一堂に集まるイベントが誕生しました。
(第一回「小江戸川越お菓子マルシェ」2015年11月3日(祝)蓮馨寺で開催
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12080821308.html )
旧川越織物市場でのアートクラフト手づくり市の野里出店は、もうお馴染みになっている。
手づくり市主催者が野里さんの大ファンなので、これかもきっと出店招待されていくと思います。
「アートクラフト手づくり市in織物市場2015」11月14日15日旧川越織物市場
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12096482650.html
川越最大の雑貨イベント、「川越ハンドメイドの雑貨市」では、川越のお店を巡るスタンプラリーを開催していますが、これまでの回ほとんどで野里は協力店として参加しています。
その時は作家さんによる雑貨の出店が店先に出て、普段の風景とはがらりと変わります。
これも主催者であるしろつめ雑貨店さんが野里のお菓子が好きで、
雑貨市のスタンプラリーを回る来場者に、野里のお菓子を知ってもらいたいと願っているから。
(「川越ハンドメイドの雑貨市Vol.4」2015年9月19日、20日初の二日間開催
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12076427529.html )
以前は、南大塚の栗原造園で行われている5月のオープンガーデンに出店したこともありました。
(栗原造園 春のオープンガーデン2014♪庭とお店と椅子
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11541056586.html )
別の場所に出店する機会もありますが、野里さんがこのお店の場所から主体的に発信しているのが、うらかわスタンプラリー。
お店がある八幡通りは、まさにうらかわど真ん中で、
素敵な個人のお店が点在するエリア。
お店同士が集まって、お客さんにお店を巡る「うらかわスタンプラリー」を企画する際には、
野里さんは毎回欠かさず参加していて、うらかわからの楽しさ発信に協力しています。
(2014年11月「うらかわスタンプラリー当選番号発表」
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11949511765.html )
ちなみにうらかわスタンプラリーは、2016年も開催予定となっています。
うらかわといえば、2015年12月にオープンした花屋「KONOHA」さんは、野里から歩いてすぐのところにある。
野里にやって来たお客さんからKONOHAの場所を訊かれることもあると言い、野里が好きな人はKONOHAも好きだろうし、その反対ももちろんありそう。
(「KONOHA」はながすきすぎる
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12116166208.html )
野里のお菓子が、週替わり、あるいは季節の旬のフルーツで変わっていくといっても、
お店として揺るぎない、変わらない芯があるから変われるという真実がある。
お店に並ぶ定番のバニラのシフォンケーキやレモンケーキ、それにあのフルーツケーキに、
野里のパウンドケーキ、どれもがいつも来る人を迎えてくれるお菓子たちなのです。
パウンドケーキは、お店のオープンの時からある野里にとって想いのこもったお菓子。
パンに近いので、使う小麦粉には特にこだわっていて、数種類の小麦粉を配合して作っているそう。
試作を何度も重ね、ようやく完成させた一品。レシピは最初の時から変えていない。
上は河越抹茶を練りこんだ一品です。
そして、定番のお菓子は、この日も朝から準備に追われていた。
お店のオープン前、可愛らしい焼き菓子たちは、
また、手に取ってくれる人がいますようにと、願いを込めて、一つ一つ大事に袋に包装されていきました。
自分を大事に。
野里のお菓子は優しい甘さで、
口の中に優しさがずっと残ります。
甘すぎず、優しく。
また買いに来るよね!なんて強引な甘さは皆無で、
いつも優しく待っていてくれる。
野里で並んでるお菓子を見ていると、自然に
『これを食べている時、自分』
を想像している。
お菓子を見て、味より先に時間を想像するって不思議。。。
でも、時間を大事にする、
味よりも時間を想像させるのが、
「お菓子の本当」じゃないかなって、野里で思ったんです。
自分を大事に。
野里のお菓子は、食べている時間が幸せ。
その間は時間がゆっくりになって、
優しさを感じながら、自分を大事にしている時間になる。
お菓子は嗜好品だからこそ、自分に無理をせず、
気持ちに正直なものが欲しい、気持ちが正直になれるものが、欲しい。
それぞれが、自分の時間を大事にするために、お菓子なんでしょうね。
野里のお菓子を贈り物として人に贈る。
丁寧に作られた、作り立てのお菓子を贈る。
賞味期限がそんなに長くないことが、
「新鮮なものをすぐに食べてもらいたい」と、そこに気持ちを込めることができる。
人を大事に。
自分を大事に。人を大事に。
ずっと変わらないお菓子のあるべき「本当」がここにあります。
「やき菓子 野里」
川越市新富町2-14-2
11:00~19:30
049-222-3250
定休日 月曜日・火曜日
HP:
https://www.yakigashi-nori.com/