川越style「教えて!古事記@川越八幡宮」川越八幡宮の神主さんがお話する 日本の神話 | 「小江戸川越STYLE」

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日本最初の三十一文字(みそひともじ)、「和歌」は、
古事記(ふることしるし)の「スサノオノミコト」の歌だそう。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに
八重垣作る その八重垣を」
スサノオノミコトが須賀の宮をお作りになった時に作った歌で、これは結婚の祝いの歌です。
日本最初の歌が、結婚の祝いの歌というのが微笑ましい。
古事記の最初の和歌が、つまりは日本の最初の和歌で、
それが、怒りでも、悲しみの歌でもなく、
喜怒哀楽の”喜”にも”楽”の歌にもなる結婚の祝いの歌ということを古事記は記し、神主さんは話しました。
共に生きる二人を祝う歌というところに”共生・共存”する”日本人”というDNAを感じさせる、なんともほっこりした気分になるエピソードです。

 

2018年2月・3月・4月と3ヶ月3回にわたって開催されたのが、「教えて!古事記@川越八幡宮」。
『川越八幡宮という清められた場所で、川越八幡宮の神主さんがお話する
日本の神話(古事記)を一緒に学びませんか?

講師:川越八幡宮権禰宜 岸野克己さん

◆テーマ「夫婦円満」
他人同士が縁あって共に暮らすのが夫婦。
日々の営みの中で、人間関係・夫婦関係を上手に保つ智恵を古事記からお話いただきます。』
https://www.facebook.com/events/184781765479227/

古事記は全体を学ぼうとすると膨大な時間・エネルギーが必要ですが、今回の講座では古事記を題材にテーマを決めてそれに沿ったものをピックアップして紹介するという講座。

中でも講座全体として3回全て夫婦円満の秘訣を導き出そうという内容で、それに留まらずそれを含めた人の生きる道について洞察をもって話しをする講座。連続シリーズというより都合に合わせどの回に参加することができました。

この講座は「古事記」に着目したという視点が新しく、改めて見ると今に活かすことができるヒントがたくさん含まれている書物である。

しかも会場が講座を特別なものにしていて、「教えて!古事記@川越八幡」の会場となったのが、八幡通りにある川越八幡宮。神社の神主が古事記について紹介してくれるという、これまでにない取り組みでした。

「川越八幡宮」
〒350-0045 埼玉県 川越市南通町19-3

川越駅東口より徒歩6分

本川越駅より徒歩7分
http://kawagoe-hachimangu.net/

川越八幡宮は創建990年近く。
ご由緒
『当社・川越八幡宮は、第68代・後一条天皇の時代の長元3年(1030)に甲斐守源頼信によって創祀されたと伝えられています。
長元元年(1028)、下総国(千葉)の城主前上総介平忠常は朝廷に謀反を企て、安房、上総、下総の3カ国を従わせ、大軍を起こして武蔵国に攻め入りました。この乱は長元の乱と言われ、3年に渡り鎮圧できませんでした。有力武士だった冷泉院判官代甲斐守源頼信が長元3年に平忠常追討の倫旨を賜りました。
源頼信は当地で必勝祈願を行い、敵陣に斬り込んだところ、忠常の軍勢はたちまちに乱れました。そして三日三夜の間、追討してついに乱を平定しました。頼信は神様の御神威に深く感謝して、すぐに当地に八幡神社を創祀しました。これが当社の創建です。』

川越八幡宮ご神徳
『全国には約8万社の神社があると言われています。人々の生活の中に、一年の四季の移ろいの中に、神様を大事にする文化が日本にはあるのです。
八幡神社は全国でもっとも多い神社で、分霊は約1万5000社もあります。九州の宇佐八幡宮、京都の石清水八幡宮、鎌倉の鶴岡八幡宮が有名ですが、当社は総本社の宇佐から勧請されたと伝えれられます。
御祭神は第十五代天皇の応神天皇です。応神天皇は母親である神功皇后と共に大陸文化を日本に取り入れて、日本文化の興隆をはかられました。また神功皇后が自分の御子神(応神天皇)を自分の替りとしてこの世に下されたものと言われ、八幡様の信仰は母が子を抱きかかえた慈愛で子を育てる大愛です。母の愛情に勝るものはありません。この大愛こそが八幡信仰のもとと言えます。
広く日本人に信仰された八幡様。大愛の御神徳を感じながら日々の暮らしを過ごしてみませんか。ぜひ四季のお祭りや観光などに当社にお立ち寄りください。きっと「心のオアシス」を体感できるはずです。』
年中行事
1月「新春特別祈祷」
1月第2日曜日「成人式」
5月4〜5日「春祈年祭」
6月「川越八幡宮こども相撲大会」
6月30日〜7月6日まで(祭事30日16:00)「茅の輪くぐり」
9月「鎮守の森コンサート」
10月14日・15日「例大祭」川越祭山車・神輿巡行
9月〜11月「七五三」
12月31日「大祓」
川越八幡宮で、夫婦円満をテーマにしたお話しをするのは、実は川越八幡宮らしいと言えるものでした。川越八幡宮の象徴といえば、そうです、「縁結びイチョウ」です。


縁結びイチョウ。

『平成明仁天皇がお生まれになった 御年(昭和8年12月23日生)、川越八幡宮の神職によって男イチョウと女イチョウ2本を植樹しました。いつしかその2本の木は寄り添い合い一本に結ばれました。固く結ばれた2本の御神木に触れ、手を合わせると良縁に巡り逢うと言われています。どうぞ川越にお立ち寄りの 際には、触れて手を合わせてみてください。皆様が良縁に恵まれます事をお祈り申し上げます。当神社では良縁を願う方を対象に、毎月第1・3日曜日の16時より(予約制)、「良縁祈願祭」を行っております。』
神前結婚式も行っており、縁結びからの夫婦円満というのも八幡宮として理にかなっているものでした。

日本神話というところでは、川越氷川神社の「七夕祭」で、舞殿で巫女舞、奉納演奏と並んで日本神話の紙芝居が上演されていました。以前は「ご縁市」でも日本神話の紙芝居が定番として行われていました。

(川越style『川越の街にきもの姿を増やす会「氷川神社の七夕まつりに着物の集い」』氷川会館

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12189812953.html

 

「教えて!古事記@川越八幡宮」に至るまでには紆余曲折あり、主催者の想い、それに応えた川越八幡宮の岸野権禰宜という色んな繋がりから川越でも例を見ない古事記講座が開催を迎えていました。

教えて!古事記@川越八幡宮を主催したのが、川越の子どもの教育と環境作りなど様々な活動に携わる、飯島希さん。

その姿は川越の至る所で見かけ、縁の下で支え続けています。

最近だと、2018年2月ウェスタ川越で開催されたかわごえ環境ネットの「第16回かわごえ環境フォーラム」において、みんなで語らいの場、かわごえカフェ2018:川越を語ろう・伝えよう・行動しよう「みんなではぐくむ水と緑と歴史のまち・川越」のファシリテーターを務めていました。飯島さんはかわごえ環境ネットの理事でもあります。

(川越style「第16回かわごえ環境フォーラム」2018年2月25日かわごえ環境ネット
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12356385330.html

飯島さんが古事記に注目したのは、川越八幡宮の権禰宜、岸野さんと話しをする機会があった際に古事記のことを聞き、古事記や日本の神話の面白さ、奥深さに魅入られたと振り返ります。

古事記に登場する男女の神々の話しは、現代の夫婦にも通じる部分があり、夫婦円満に役立つのではないかと考えた。

自身の子どもとの関係から母親としての役割を突き詰めて考え、悩んだ時期もあったが、そんな時にたまたま手に取った書籍、「女子の武士道」(石川真理子著)に、『おなごは大地のようなもの』という言葉に勇気づけられ、女性は男性と役割が違っていい、大黒柱を支える大地が女性なのだと思いが至ったのだという。

折しも、川越八幡宮の岸野さんとの話しでも、古事記に『おなごは大地のようなもの』という内容があることを知り、運命的なキーワードであると受け止めた。

ここから、飯島さんが発案し、コーディネーターとして川越八幡宮と話しを進めて実現したのが、「教えて!古事記@川越八幡宮」だったのです。

 

改めて古事記とは。

現存する日本の最古の歴史書。奈良時代初頭の和銅五年(712)、太安万侶(おおのやすまろ)が編纂し、元明天皇に撰上された。遠いいにしえから伝えられてきた日本の神話・歴史を三巻にまとめている。

天武天皇の命により、稗田阿礼(ひえだのあれ)が誦(よ)み習った古事を、太安万侶が筆記して成立した。

上巻は古事記成立の事情を伝える序文に続き、「天地の初め」より始まる神代の事績を記す。

中巻より「人の世」に移り、中間は、初代天皇・神武天皇より、第十五代応神天皇まで、下巻は第十六代仁徳天皇より第三十三代推古天皇までの歴史を記す。

「古事記」は漢文で書かれているが、外来語である漢文によって、稗田阿礼が誦み習った、古代の言葉・文章を書き記すという特殊な漢文で書かれていたため、後の時代には、「古事記」を読むことは大変困難になっていた。

江戸時代の国学者・本居宣長が、注釈書「古事記伝」を著すに及んで、古事記は古代の言葉、古代の心を伝える書物として、重視されるようになった。

 

古きを知り新しきを知る。

川越は歴史を大事にする街、古事記を扱う講座は川越で見られないもので敷居が高く見えますが、街との親和性は十分あるもの。興味を持つ人は多いのではないかという想定した期待通り、川越で古事記の講座、、しかも川越八幡宮の権禰宜が直々に解説してくれるという内容に、多くの参加者が集まりました。

2018年2月20日に第1回「教えて!古事記」が開催。参加者は、古事記という名前は聞いたことはあっても内容は知らない人が全員で、岸野さんが古事記の概略から一般的に有名な話しを噛み砕いた分かりやすい語り口で紹介。


1回目の教えて!古事記では、人生で辛い時こそ笑う(楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる)という智恵を、天岩戸の神話から丁寧に話しをした岸野権禰宜。

人が生きる根底となるお話しを深い洞察をもって紹介しました。
古事記の中にこんなにも豊饒な世界が広がっているのかと参加者から声が漏れていました。

・須佐之男命御荒備(すさののをのみことみあらび)の段

・天の岩屋戸(あめのいはやど)の段

・須佐之男命御被避(すさののをのみことみやらはえ)の段

・八俣遠呂智(やまたのおろち)の段

・須賀宮(すがのみや)の段
「天の岩戸開き」のお話しでは、
「天照大神が天の岩戸にお隠れになり、
真っ暗闇に困った神々さまたち・・・、
神々さまが相談して作戦をたて、宴会をして大笑いする声に天照大神が、笑い声が気になり
岩戸を開いときに・・・」
という話から
「光を失って絶望してもおかしくない、
そういう時こそ”笑う”ことを神々さまはしていらした。
私たち人間も絶望するような悲しみに面した時思考を停止して表情をなくしてしまうことがありますが、そうではなく、悲しい時こそ”笑う”ことではないでしょうか。
笑うから、楽しい事がやってくるんです。
楽しいから笑うのではないんです」
という岸野さんのお話し。
飯島さんは、「古事記の中には八百万の神様たちのふるまいが語られているんですよね。
でもこの話を聞いただけで、古事記って、神々さまのふるまいが語られているってことは
そのままそっくり、人の世のふるまいの知恵が詰まっているのね!ってすごく期待感が膨らみました。日本の八百万の神様のお話(古事記)を川越八幡宮という神社の神主さんからお話を伺うことができるなんて、そういう機会に恵まれすごく幸運だわ~と感じる毎日です」と振り返っていました。

2018年3月22日開催の教えて!古事記も、神主さんが直々に古事記の話しをしてくれる特別感に、前回から引き続き参加した人に加え、初参加の人も集まっていました。

・大国主神(おおくにぬしのかみ)の御祖の段

・稲羽の素兔(いなばのしろうさぎ)の段

・手間山(てまのやま)の段

・根堅洲国(ねのかたすくに)の段

・うきゆひの段

岸野さんは、神様も嫉妬することや人間にも同様に心の闇があり、しかし、それをコントロールして心の闇の根源を認め、本当に伝えたいことを”あや”のある言葉で伝える智恵について解説しました。
 

最終回の3回目は、基本に戻って「イザナギ・イザナミ」の国生みの話。


あらゆる結婚の原型が、この「イザナギ・イザナミ」の話。
男性と女性の役割についても書かれています。
時代がかわろうが、男性の愛を女性に与えることで女性は女神であることを思い出し、女神として輝く。
すると男性も自分が男神であることを思い出す。
かつ、岸野権禰宜の着目点がさすが。
「みとのまぐはひの段」で
其の嶋の天降り坐して、天之御柱を見立て、八尋殿を見立てたまひき。・・・
の”見立て”に着目。
「見立て」という表現は
そのことを身に受けて己がわざとして行う、ということ。
「見ること」は、「知ること」。
そしてそれは、「知ることは、愛すること 愛するとは、知ること」
と日本の哲学者西田幾多郎が「善の研究」の中で述べている「知と愛は同じである」
というところにつなげ、紹介してくれました。
つまり、愛を大切にするならば相手を「知ること」であり、
そのためには、相手を「見ること」である・・・と、岸野権禰宜は、
イザナギ・イザナミの国生みの話から展開しました。

 

こうして3回開催した、「教えて!古事記@川越八幡宮」。

神話の物語を紹介するだけではなく、日々神の側で神と共に過ごす神主だからこその、古事記という神話から引き出す洞察に満ちた話しがあり感激していた参加者。古事記から様々なものを学び取ったのでした。
引き続き、飯島さんは八幡宮の古事記講座を企画したいと意気込んでいて、次回は別のテーマを設定したいという。これからも川越から古事記熱を高めていきます。
 

今を照らす典教。
古事記の「序」の末尾にこう書かれています。
『照今以補典教於欲絶』
古来日本では、古(いにしえ)を省みることで世の道徳が崩れることを直し、
歴史によって今の時代を照らし、人の道が絶えようとしていることを補わないということはありませんでした。
歴史によって今の時代を照らし、人の道(道徳)が絶えようとしていることを補う。

 

今、古事記から学ぶことは多くありそうです。

 

「川越八幡宮」
〒350-0045 埼玉県 川越市南通町19-3

川越駅東口より徒歩6分

本川越駅より徒歩7分
http://kawagoe-hachimangu.net/