川越style「株式会社80%(エイティーパーセント)」連雀町の交差点長屋のリノベーション | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
川越のヒト・コト・モノ、川越物語りメディア、小江戸川越STYLE。
川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

 

「笑っちゃうくらい可愛い子(建物)なんです」

 

掘り起こせば掘り起こすだけ、川越には可能性が埋もれている、

街の見方を少し変えるだけで、気付かなかった可能性に気づいたりする。

川越の潜在的な可能性。川越の埋もれている魅力。は無限大。

それは、川越の現状からの問題提起であり、川越の可能性を示す取り組みでもありました。株式会社80%の荒木さんにまず、冒頭に話してもらいます。

「蔵造りの印象が強い川越ですが、実は、裏通りにも時を重ねた、風合いのある建物がたくさんあります。しかし残念なことに、中には空き家・空き店舗も多いのです。人の『暮らし』のない状態では、建物は呼吸をすることができません。まだまだ輝くことができる、旧い素敵な建物も、時間の流れとともに壊され、開発され、姿を消していきます。今あるこの風景も、何もしなければずっと存在し続けるわけではない。建築に関わる仕事をする人間として、地元の抱えるこの課題をいつか何とかしたいと考えていました。」

 

いつか何とかしたい。・・・その「いつか」は、遠い未来のことではなく、荒木さんたちの目の前に意外と早く、想いもよらぬ形でやって来たのでした。2016年、川越市主催で行われたエリアリノベーション事業「まちづくりキャンプ」をきっかけに、4人の仲間と共に会社を興し、この課題に正面から向き合うことになりました。

彼らが取り組んだのが、この長屋だった。すぐに、あ!あそこのと気付く人も多いでしょう。長年見慣れた長屋。

川越の連雀町、県道川越日高線連雀町交差点から西へ一つ目の信号、ちょうど大工町通りと交差する交差点には、古くから長屋が建てられていました。横長の外観は、通りを通る人の目に必ず止まる。

昭和30年代に建てられたこの建物は、バイク販売店、青果店、作業用品店、など、時代とともに看板を変えてきました。

地域に根差した場所でしたが、近年はシャッターが下りたまま長い風雪に耐え続けているような状況だった。

しかし、建物を見上げた彼らの目には、無限大の可能性を感じさせる場所、長屋だと映った。

「この長屋を、自分たちの手で蘇らせる」。

外部の職人などに頼むことは最小限、最大限自分たちの手で、まさに手仕事でリノベーションし、建物を蘇らせ、場を創ろうとした。

連雀町のこの長屋のリノベーションに果敢にも挑んだのが、2016年12月に設立された「株式会社80%(エイティーパーセント)」の4人。 
株式会社80%は、地元川越で設計事務所を営む一級建築士荒木さん、

人気飲食店の店長なども経験した飲食店開業希望者鈴木さん、

地元川越で不動産会社を経営する不動産コンサルタント松ヶ角さん、

中目黒でリノベーション会社を営む一級建築士田中さんの4名が集まってできた会社。それぞれがその道のプロで、それぞれの力を発揮してリノベーションを推し進めていった。4人を紹介します。


・荒木牧人(あらきまきと)
株式会社80パーセント 代表取締役(事業統括、工事担当)
荒木牧人建築設計事務所(http://maao.jp)代表
一級建築士 一級建築施工管理技士、埼玉県被災建築物応急危険度判定士、
福祉住環境コーディネーター2級、省エネ建築診断士(パッシブハウスジャパン)
現場監督、設計事務所勤務を経て自分の設計事務所を構えた途端、地域の自治会長や小学校のPTA会長になることで地域とつながり、偶然知った設計コンペの受賞を機にリノベーションに興味を持ち、現在に至る。川越市在住。
趣味は読書・献血・子どもたちと遊ぶこと・新河岸川でのカヌー&SUP。

・鈴木豪(すずきごう)
株式会社80パーセント 取締役(飲食事業担当)
すずのや 店主
1993年より、飲食業界に従事。新橋の人気立ち飲み店の店長を務めるなど、飲食業界で多くの経験を積む。今回、その豊富な経験と知識、人脈などを活かして、川越市連雀町に「すずのや おやさいとくだものとお酒と」を開業予定。特に日本酒の選定にはこだわりと自信有り。秋田県出身。川越市在住。
趣味はまち歩き、居酒屋探訪、デパ地下めぐり

・松ヶ角尚人(まつがすみなおと)
株式会社80パーセント 取締役(不動産、財務・経理担当)
有限会社川越ホーム(http://www.kawagoehome.com/)取締役社長
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、マンション管理士
普通の町の不動産屋さんだったはずが、なぜか個性的な人・物件が周りに集まり、そのような案件も多数手掛けることに・・・。ユニークな案件たちを実現化すべく、日々、楽しみながら悪戦苦闘中。川越市在住。
趣味は読書、ランニング、まち歩き、山歩き

・田中明裕(たなかあきひろ)
株式会社80パーセント デザイン部長(リノベーション、デザイン担当)
中目黒のリノベーション会社 株式会社coto(http://coto-inc.net/) 代表取締役
中目黒のコワーキングスペース knot 運営
一級建築士 日高市生まれ、日高市育ち、日高市在住、ただ会社は中目黒・・。
地元に街に愛される場を作りたいと東上線を行ったり来たり。 
趣味 サッカー。古い建物を見て妄想すること。

 

長屋リノベーションに取り組む株式会社80%のメンバー4人、絶妙なバランスで成り立っていて、過不足なくぴたっとパズルが綺麗に嵌るがごときバランス。

特に代表の荒木さんのリノベーションに懸ける思いが、裏打ちされた経験が、全体を動かしている。

荒木さんのリノベーションの出会い、動きは、

2013年4月に事務所を設立後、同年9月「第3回リノベーションアイデアコンペ」参加、2015年9月「リノベーションスクール@紫波」参加、2015年11月川越市主催「馬場正尊氏講演会」参加、2016年1月「リノベーションスクール プロフェッショナルコース」参加、1月「南房総リパブリック・エコリノベ」参加、1月「川越まち歩きワークショップ」参加、2月「岸町放デイ現場(セフルリノベ)」、10月「講演会・まち歩きワークショップ」、11月「まちづくりキャンプ」があり、経験を積んできました。

 

それにしても、この4人は、一体どういう繋がりの4人なのか、昔からの知り合い・・・?いや、そう思わせる良い連携を見せる4人が、実は出会ってそんなに時間が経っていないこと、出会ってすぐに意気投合して会社設立したと聞いたら、ほとんどの人が驚きを隠せないでしょう。しかし、本当にそうなのです。

まず前段として、2016年1月川越市主催の「まち歩き物件探索ワークショップ~川越路地裏ツアー~」があって行政が本腰を入れて動き出す。ここで、参加者だった荒木さんと鈴木さんが出会う。

この時に街中を歩いて気になった建物が、この長屋だった。

ここが最初の最初と言える。

2016年10月には、リノベーションの大家が川越に。

川越市主催の「エリアリノベーションの講演会&まち歩きワークショップ」で講師が㈱OpenA代表(東京R不動ディレクター)馬場正尊さんでした。

・エリアの活性化や価値の向上を意識してリノベーションを展開する「エリアリノベーション」の講演会
・地域資源を発掘し、エリアのポテンシャルマップを作成する「まち歩きワークショップ」

 

その翌月、4人を強く引き合わせたきっかけが、先に荒木さんが述べた川越初の試み、2016年11月に川越市産業振興課主催で2泊3日で行われた「まちづくりキャンプin川越」でした。

2016年11月11日(金)~13日(日)
会場 川越市役所ほか
講師 ㈱OpenA代表(東京R不動ディレクター)馬場正尊氏ほか講師多数
内容 エリアリノベーションの考えに基づき、実際の物件をもとにリノベーションプランを作成する「まちづくりキャンプ」の開催。
『蔵造りの古き町並みが残る川越。そんなまちに眠る「空間」と「コンテンツ」を再発見しながら、川越の未来を描き事業を生み出す「まちづくりキャンプ」を開催。
エリアの定義、コンセプトや企画の作り方、事業計画や事業収支の考え方、プロモーションなど、遊休不動産の活用に必要なノウハウを実際の物件をもとに3日間にわたって集中的に学び、キャンプ最終日には、事業プランのブラッシュアップを経て、最終的にオーナーへの提案を行い、了承を得たら、即、事業化に向けた取り組みを行います。』

まちづくりキャンプでは、4つのコースがあり、
(1)エリアリノベーションコース

エリア価値の向上を図るためビジョン、スキーム等を組み立て、エリアリノベーションの戦略をプラン二ングするコース
講師:株式会社OpenA代表取締役 馬場正尊氏
(2)飲食・物販事業コース

飲食や物販事業を始めたい人を募り、実際の物件に基づき事業計画等のプランニングを行うコース

講師:久遠チョコレートプロジェクト推進リーダー 吉野智和氏
(3)リノベーションプランニングコース

まちの新たな魅力となる事業を立ち上げるため、実際の物件に基づき事業計画等のプランニングをするコース

講師:株式会社OpenA 大我さやか氏
(4)ローカル・メディア編集コース

地域の資源や魅力を発掘・発信するための、エリアのプロモーション戦略をプランニングするコース講師:フォトグラファー 堀越一孝氏
上記の他、倉石智典氏(MYROOM代表) 、柿原優紀(Happy Outdoor Wedding/たらくさ株式会社代表)、宮崎晃吉氏(HAGISO/一級建築士事務所HAGI STUDIO代表)等による豪華なレクチャーも開催。
 

荒木さんと鈴木さんは2番目の飲食・物販事業コースに参加。

飲食店チームに、まさに鈴木さんが飲食業を希望だったこともあって、計画は一気に机上のものから現実の路線で進んでいった。

つまり、キャンプの計画が、現実的な飲食店オープンの様相を呈していき、単なる計画以上の熱気を帯びていったのだった。

飲食店チームで取り組んだのが、この連雀町の古い長屋。

チームで考えたのが、どのような「コンセプト」を持ってこの場所に飲食店を始めるか?でした。
人口統計で物件のある「連雀町」の年代区分を確認したり、街を歩いて地域の雰囲気を感じ取ったり、年代別の路線価や、観光街の特性を調べたりした。「連雀町」は、30-40代のファミリー層が多いエリアでした。飲食店チームのメンバー達の年代と同じ。
その時、「家族との時間」という一つのキーワードが出てきたのだった。

振り返れば、ここに参加者として集まっていたのが80%の4人。

荒木さんと鈴木さんは以前に出会っていましたが、別チームに参加していた松ヶ角さんと繋がり、田中さんが加わった。
まちづくりキャンプで出会った4人は、2016年12月に自立型民間まちづくり会社「株式会社80%」を立ち上げ、事業の目的を「空き家・空き店舗を、関わる人・集まる人が等身大で幸せに、楽しく過ごせる場にリノベーションすることにより、まちづくりに貢献すること。」と定め、早速活動を開始しました。
出会いからあっという間に会社設立まで突っ走っていった疾走感。

 

彼らには確固とした思いがあった。

それが、
「名も無き交差点を川越の新たな交流拠点に」。
実は、県道川越日高線と大工町通りが交わるこの交差点には、名前が付けられていない。
東に進めば連雀町交差点、西に進めば六軒町交差点、町内が付いた交差点に挟まれて、地域の人からも見過ごされがちになる交差点に佇むこの建物を、川越の新たな交流拠点にしたい。

交差点という、まさに人と人が交差する場所に位置する長屋は、本川越駅や一番街のちょうど中間にあって、どちらからも来やすく、人と人が交差しやすい場所にある。

また、地域に向けては、角地という場所特有のメッセージ性もあって、

人が交わる場所で、新たな交流拠点となり得ると見込んでいた。

見過ごされがちですが、長屋があるのが連雀町。今熱い盛り上がりを見せている「川越昭和の街」の南西地にあり、今後一緒に何かができたら楽しい。

 

 

(第一回「昭和スタイルでおもてなし 川越昭和の街」2017年4月29日『昭和の日』

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12270591425.html

 

それに連雀町と言えば・・・川越まつりで祭りに懸ける熱は市内随一の町内であり、ちょうど長屋前の交差点が山車同士が行き交うポイントでもあります。連雀町太田道灌の山車は午前の町内曳きで交差点を通り、他町内の山車とすれ違うことは毎年のようになります。そんな光景を長屋の中から見上げる日がやって来る。

 

 

(午前の部「川越まつり」町内曳き連雀町道灌の山車2016年10月16日

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12210527955.html

この場所にあるこの建物を見上げる度に、人が交流する未来予想図が思い浮かび、心の底からやってやるぞとやる気が満ち溢れてくるのだった。

長屋を所有者から借り受け、リノベーションを施し、地域活性化を担ってくれるテナントにサブリースをするのが80%の役目です。
(実はこうして物件を通じて住人と地域の間を取り持つ仕事は江戸時代「家守(屋守)」といわれていました。意外と古い仕事です!)」

4人は、リノベーション第1号案件として、連雀町の長屋リノベーションをスタートさせていったのでした。

既にこの長屋には鈴木さんによる飲食店「すずのや」が6月オープンする予定となっていて、店主である鈴木さん自身も80%の一員として具体的リノベーションに加わっています。自分のお店を自分の手で作り上げる、その過程のリアルもここにあった。
もう一つは、川越市役所前交差点にある「glin coffee」さんの二号店が入る予定となっていて、長屋に二つのお店が入ることになる。

(「glin coffee」川越市役所前一号店 glinの輪が広がっていく。楽しいコーヒーショップ

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12196953531.html

 

2017年2月から始まった長屋のリノベーションは、6月18日にお披露目&完成事業説明会、6月20日に「すずのや」がオープンしました。

80%の軌跡を追いかけます。手仕事と言えば聞こえがいいですが、実際の現場の工事となると、不慣れなところもある80%の面々。試行錯誤、思わぬトラブルに遭遇することも想像できた。

一体、どうなるのか・・・!

4人の堅固なチームワークで乗り切ろうと燃えていたのだった。

 

2月、作業はほぼ毎日のように行われ、それぞれ仕事をしながら時間を見つけて自分たち自身で建物のリノベーションに取り組んでいった。

屋根は、瓦職人が古い瓦を撤去するところから。外部足場が設営され、いよいよ屋根改修が開始。
無断熱だった屋根面に少し断熱材を施しつつ復旧。
漏水があったため、これで改善。構造体の補強が終わるまで内部はサポートで補強です。
既存の屋根瓦をおろし、ざっと1000枚程ある一部は必要な人に渡した。瓦をはぎ、土を撤去した後は、躯体補強として構造用合板を張り、ルーフィングを三層張り、断熱材を敷き込み、ガルバリウム鋼板(フッ素樹脂)で新たな屋根を葺きます。

 

 

 


3月22日、屋根と1階土間解体の継続作業に加え、今日は80%の定例会議。メンバーが集まり、工程進捗や予定確認、仕上げやレイアウト調整などを行った。6月のオープン目指しているが、ギリギリという状況。間に合うか。作業をしていると、交差点で立ち止まる人から何人も声を掛けてもらうこともあるという。確かに、見慣れた建物に、何か新しい動きが生まれていることを察知して気になる人も多かったでしょう。


・・・と、80%の活動には思わぬ援軍が現れた。偶然にも繋がった「ふなはしわか」さんが、長屋リノベーションに興味を持ち、その活動の記録などをまとめたレポートを定期的に発行して周囲に周知させていったのだった。


(レポート第1号)ふなはしわかさんの活動はこちら→http://2784wakawaka.strikingly.com

建物の外にレポートを置いていたところ、毎回なくなるのが早く、周辺の人が気にしている様子が伝わってくるようだった。

 

3月27日には「こども生コン打設」ワークショップ開催。
春休み中のこども達による生コン打設。上級生=ネコ(一輪車)による生コン運び、下級生=木コテ・金コテによる生コン均し1h程の作業で無事に終了。作業、をワークショップと言い替え、いろんな人に積極的に建物に関わってもらおうと考えていた80%の面々。この後も、「ワークショップ」はいろんな企画で続いていくことになる。

 

階段鉄骨補強に続き、遂に厨房部分の鉄骨補強を行なった。

4月5日、すずのや厨房地中梁CON打設&2F梁・小屋裏みがき。

4月6日、1階床シートはがし&2階木部磨き・釘抜き。こどもたち3名+オトナ2名でコツコツ作業しました。

 


1階=撤去柱材釘抜き・磨き 2階=梁・小屋裏材磨き。
柱撤去材は各店舗前に並べる「ベンチ」に再利用。交差点や歩道側にベンチが並ぶ予定です。
4月14日土間コンクリート打設・外壁クラックシーリング、
4月15日外部足場解体・東京建築士会見学会、
4月18日断熱ワークショップ、
4月20日断熱材&気密シート張り。
既存土壁に薄ベニヤが張られただけで無断熱だった2階居室。
超薄型断熱材4mm+発泡スチロール板10mm+気密シート(タッカー留め)+タッカー孔塞ぎ気密シール を施して少しでも断熱化しています。大工さんたちが増員して乗り込んでくる前に、セルフ部隊にて作業。

 

2月中旬からスタートしたリノベーション工事。多くの協力を得つつ、屋根改修、耐震補強、断熱工事がほぼ完了。いよいよ木工事を開始し、後半戦へ突入していった。

4月22日になると、廃墟同然だった空間が、だんだんと何かを感じさせる場へと姿を変えていました。この日は、80%の荒木さん、鈴木さん、松ヶ角さんと会うことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

二階部分は、この数日後には一部が外され吹き抜けとなるそう。覆われた天井という姿は、これが見納めになりました。こちらでも黙々と作業に没頭する姿。

 

右、荒木さんの足元が吹き抜けになる予定。

 

 

 

 

5月13日に開催されたのが「塗装ワークショップ」。
前回来てから一ヶ月、天井が吹き抜けになり、一気に明るくなった建物内。
厨房スペースの区切りが造られ、飲食店の形が見えてくる。
階段も新しくなってだんだんとお店らしくなってきました。
塗装ワークショップは、ペーパーヤスリで木を磨き、お米から生まれた自然塗料のキヌカをみんなで塗り塗りしていきます。この時には天井の一部が取り外され、吹き抜けが現れていました。

 

 

 


撤去柱を再利用したベンチは、お店の外周に置かれる予定で、地域の人がここで一休みする光景が目に浮かぶよう。
うん?子どもたちが集まって何やら熱心に書きこんでいる。。。
ベンチをひっくり返し、目に見えない裏側に・・・メッセージを書き込んでいた。

 


何気なく書いたかもしれないものが、これから時が経つごとに、思い出深いものになっていくはず。
ずっと後年になって、大きくなった子どもたちが、そう言えばこれは自分が書いたものだったんだ!と見つける時がやって来るでしょう。タイムカプセルのようなメッセージ。
荒木さんはじめ、参加者や職人さんたちも一文字一文字丁寧に記していく。

 

 


お店に行ったらベンチに座りつつ、そっと裏側を覗き見てみてください。この日、書き込んだメッセージがそこにある。
工事は着々と進みながら、あと一ヶ月ほどでお店がオープンになるとはまだ実感できませんが、ここからが一気に加速していく。


5月28日、いよいよラストスパート。長屋に入る「すずのや」のオープンが6月20日に決まり、俄然作業にも力が入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

2017年2月半ばから始まったリノベーションは、毎日のように作業を続け、4ヶ月後に無事に完成しました。長いようであっという間の工程は、自分たちの手でリノベーションしたからこそ、4人にとっては愛着もひとしおだった。

通りで工事の様子を気にして見守っていた人たちも、ついに完成した!と感慨深かったことでしょう。外観は、極力そのままの姿を維持し、内部はもう別世界と言えるほど以前とはがらりと変わりました。

6月18日に開催されたのが、お披露目と株式会社80%の事業説明会。もちろんどちらも誰でも参加できるもので、建物から溢れるほどの人が押し寄せる光景に、完成がどれだけたくさんの人に待たれていたかが分かるよう。

 

 


 

 


 

 

 

事業説明会では、荒木さんによる本物件のリノベーション内容の紹介に加え、株式会社80%の鈴木さんと松ヶ角さん、「glin coffee」の大谷さんが挨拶。

サプライズとして・・・事業説明会に招待されていた長屋の大家さんに80%の面々から感謝状が贈られ、大家さん共々記念写真に収まったのでした。

 

 

 

 

 



 



最後に、80%の田中さんが、ゲストハウス計画の説明を行い、事業説明会が終わると、長屋リノベーションの終了と、「すずのや」と「glin coffee」二号店オープンという新たなスタートを迎えていったのだった。

その夜行われた、すずのやのレセプションでは、関係者が集まり、すずのやオープンを祝福しました。

 

 


高度成長期に、住宅を始めとする建物が足りず、一生懸命に多くの建物を築いてきた日本。
多くの事象を経て、技術も精度も向上し、法改正もなされ、建物を作り続けてきた。そして、その築く勢いは人口減少期に入った今も、威力を減少させながらも、続いているが、結果的に目の前に広がるのは、多くの空き家・空き店舗・空きスペースといった現状。
その現状の中に、80%の対象物件もありました。
人通りのある交差点に位置しながらも、ずっとシャッターが閉じられて無表情だった建物。
そんなに大きくない、奥行きもそんなにないかわいらしい建物が、目の前に。
あったはずの笑い声、
あったはずの日常、
あったはずの息遣い、
店舗併用住宅の2階建て長屋には、多くの生活や、商売の風景があったはず。
その全てが、ひっそりとなくなって、ただ、佇んでいました。
もしかしたら、朽ち果てて崩壊したり、
もしかしたら、解体されていたかもしれない。
「よく、残っててくれたね。」
南北に観光軸線がある川越中心街。
物件は一つ西側の交差点角地で、じっくり見ると、観光地と地元の境のような場所。どちらかというと「地元」「地域」の方の動線でした。
多くの外国の方も来てくださるスポット満載の観光都市、
素敵な着物を着て、楽しそうに街歩きができる歴史都市、楽しそうな表情で歩く観光客。その傍らの日常は、忙しそうに地域の人が行き交い
とっても静かに静かに「衰退」が進んでいく。
悲観的にこのことを捉えるのではなく、むしろ成熟期を迎えた日本における豊かな生活の一提案として。
本川越〜札の辻経路、観光メインにある「連雀町」交差点
川越市駅から出て来た生活幹線上にある「六軒町」交差点
80%の対象物件は、その間に位置する「名も無き」交差点。
今の日本だからこそ、
今の川越だからこそ、
自分たちなりにできる動きを、その場所に「80%」のメッセージを掲げよう。
これが、80% という言葉の誕生になった訳です。
 

「株式会社80%(エイティーパーセント)」

https://www.facebook.com/80per/

荒木牧人

鈴木豪
松ヶ角尚人
田中明裕

 

生まれ変わった長屋は、人と人が交差する拠点となり、新たな文化を創り出していくに違いない。

80%の愛すべき長屋は、80%の力で、街に漕ぎ出していく。