ピンと張り詰めたような空気が充満する室内、あちこちに散らばる、ように見えておそらく整然とそこにあるのであろう画材たち。
窓からはのどかな景色が覗き、混じりけのない空気が柔らかく流れ込んでいた。
その空気を吸い込み、吐き出し、溶け込みながら、キャンバスに向かう。
すっと筆を走らせたら一閃、止まることなく筆は走り、真っ白い画面には絵が浮き上がっていきました。
そしてまた、次の一枚に取り掛かるために、手際良く準備を進めていくのでした。
ここは若手アーティストたちの拠点であり、熱い発信源。
ここから川越を熱くする。。。
「アトリエみらい畑」は、川越でも珍しいシェアアトリエ。
この時点でアトリエみらい畑には、「東佑樹」さん、「蘭恵-Rankei-」さん、「BEKo.」さんという川越在住の3人のアーティストがここを共同アトリエとし、日々制作に没頭していた。
「アトリエみらい畑」
https://www.facebook.com/%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%84%E7%95%91-500640470123531/
東佑樹さんが、母方の実家であった場所の空き建物を利用してシェアアトリエを開いたのが2015年夏頃のこと。
そこから、場に「アトリエみらい畑」という名前を付けたのが、2016年3月のことでした。
みらい畑があるのは、川越市的場516。
最寄駅だとJR川越線的場駅です。
入間川に架かる八瀬大橋や関越自動車道からほど近く、昔からの農家の家々が点在するのどかな場所にあります。
もし分からなければ東さんに直接。
東佑樹 電話09010451467
地図で見ると分かりづらいかもしれませんが、道を入って行くと、間違いなくすぐに見つけることができる。
道沿いに、一見するとなぜここに!?という場違いなような雰囲気を発しているアトリエ・・・といか小屋?が目に入ります。
さらに地面には・・・チョークアート、と言えばいいでしょうか。。。
そこが、みらい畑。
あ、ここだな、とすんなりと辿り着くことができます。
外観を見て一瞬入りにくそうと思うアトリエも、扉を押し開き、いつ入っても全然ウェルカム、予約なども必要なく、ふらりと自由に足を踏み入れることができます。見に来る人も多いそう。
目的地として来る人もいれば、通りすがりで、何か不思議な場所を発見した!と入って来る人もいて様々。
タイミングが合えばアーティストたちが制作する生の現場を間近に見ることができ、東さんは土日中心に、平日は朝早くと夕方に制作しています。
来た人を応対するギャラリー的な場というより、まさに制作のアトリエで、そちらに向き合っている姿がありますが、きっと雑談にも気軽に応じてくれるはず。
ただし、一歩足を踏み入れた瞬間・・・
若いアーティストたちの熱過ぎる表現欲、熱情が室内に充満している様に圧倒されるかもしれない。
いいものを創り上げたい、純粋に突き進む姿は近寄り難いオーラを放ちながら神々しい。表現に没頭する人の姿はやっぱりどこかで美しいのだ。
東佑樹さん、蘭恵さん、BEKo.さんによるシェアアトリエというのは、その名の通り、アーティストたちが一つの場所を共有してアトリエを構えています。
川越を拠点にして活動するアーティストは意外にもたくさんいます。
川越が好き、川越を盛り上げたい、川越は色んな人がいるから刺激を受ける、それが制作にも活きる、それぞれの思いを胸にこの街から発信している。彼らに共通し繋げていたのが、やっぱり「川越」でした。
アトリエみらい畑は、アーティストたちにとっては夢のような場。
それぞれが川越で点で活動している中で、単に交流という枠を超えた、同じ場にアトリエを構え、お互いの存在を意識しながら制作するというライブ感。
意気投合して一緒に制作しよう、共同のアトリエを構えたいね、そんな話しもよく出ることでしたが、まさか本当に実現させてしまうとは。。。
シェアアトリエという場は、川越では他に、伊佐沼にある「伊佐沼工房」という例があります。
あるいは現在工事中の立門前通りにある旧川越織物市場も、作家さんたちのアトリエの集積というプランがある。
市街地より外れた場所にアーティストたちが集まる拠点があるというのが川越的かも。自然を感じさせるのどかな場所から、発信されています。
ただ、みらい畑が他と違うのは、伊佐沼工房も織物市場も、それぞれの部屋が壁で区切られ独立性が確保されているのと比べると、ここにはアーティストたちを隔てる壁が一切ないj。(!)
一つの大きな部屋に、それじゃあ、お前はこの辺、お前はそっち、とざっくりと決められ、お互いに何をやっているのかが一目瞭然。いや、何なら横で制作しているアーティストの息遣いさえ聞こえてくるほど。
その密着感、ライブ感。
川越でシェアアトリエを、20代の若手が作り上げたことが奇跡的。
いや、川越だからだったからか。。。
川越というキーワードで人と人が繋がることは多いですが、アーティスト間も例外ではない。
独りで制作している者にとっては、他のアーティストからの刺激は何物にも代え難いもの、それが、すぐ横からライブで伝わってくるのですから。他のアーティストの姿に創作意欲が刺激、喚起され、自分に跳ね返ってくる。居ながらにしてのコラボレーション。お互いに刺激し合う相乗効果、関係性がありました。
それになにより、みな若手アーティストたちです。互いにヒリヒリと意識し、ビシビシと交感するのはもう目に浮かぶよう。
互いの筆遣い、息遣いを耳にしながら、相手をも吞み込んで自身の作品に昇華させながら、筆は先へ先へと進んでいくのだった。。。
例えば、東さんと蘭恵さんは、その作風は全くの正反対と言いますか、
目に見えないような自然の摂理に惹かれてあっという間に制作していく東さんに、じっくりと時間を掛けて一枚の絵を仕上げていく蘭恵さん。
相反する作風の二人ですが、真逆だからこそ引き寄せ合っているのかもしれない。重力や引力といった自然の運動をテーマにする東さんらしいとも言える。
シェアアトリエがなぜ可能だったのかというと、ここが東さんの母方の実家で、使われなくなった建物がそのまま空いていたから。
東さんはこの地で16代続く家。
空いた建物が、すぐにシェアアトリエとして夢の場に結実していくまでには、そう時間が掛かることでもなかった。
・・・と、東さんがアーティストになってからの話しをするよりも、アーティストとして活動する前、そこに至るまでのいきさつがなんとも紆余曲折で、波乱万丈でした。
栃木県出身の東祐樹さんは、小さい頃から絵を描くのが好きで、「小さい頃は『地層』をよく描いていました」。
頭で考えるよりも、なんで色が違うんだろう、不思議だなと自然の形に惹かれていた。
この感覚は、今でも東さんの心の奥底に豊かに湛えられている。
自然の形、色、音、動き、自然の摂理に心が奪われずっと見つめている姿は、小さい頃も今も変わっていない。それが創作の原動力で、尽きることなくどこまでも進んでいく力になる。
高校卒業後、吉本興業の養成所NSCに通い、卒業後吉本興業所属の芸人として活動していた。
この時、都内に通うために引っ越してきたのが、今の川越の母方の実家。
芸人生活は楽しい時もあれば苦しい時もあり、5年間活動していました。
ここからなぜ絵を描くように・・・??
実はお笑いの舞台のオーディションで特技を披露するという時に、東さんは絵を描いて見せたのだという。
その時だった。
絵を描くことが自分の中で歯車がぴったりと合致したというか、これだ!という稲妻のような直観が降り注いできたのだという。
「これだ!これが自分がやりたいこと、自分が生きていける」。
それからは水を得た魚のように絵に取り組み、芸人の生活を終え、絵描き一本で行こうと決意しました。
25歳。まさに人生の転機でした。
奇しくもその年、東さんに多大な影響を与えた母方のお祖父さんが亡くなったタイミングでもあった。
東さんの個性は、このお祖父さんの遺伝子を受け継いでいるものなんでしょう、お祖父さんも相当な個性的な人だった。
もともと家はお盆などを作る木工の仕事をしていましたが、お祖父さんが落花生作りを始めたり、東さんと同じく自然の動きに惹かれて楽しむ人でもあった。
そうそう、お祖父さんが落花生作りに使用していた建物が、今のアトリエみらい畑でもあります。
木工の道具が家に揃っていることで、絵の額縁も手作りしている東さん。
今、考えれば、東さんの感覚と的場という場所の空気も合っていたのではないかと思う。
市街地から離れ、のどかな雰囲気の的場は「自然の動き」がリアルに肌で感じられる地で、お祖父さんから孫へ、きちんと正確に、何かが受け継がれている。
敷地にはギャラリーであり作品置き場でもある建物もあって、こちらも出入り自由。
ギャラリーではテーマによる展示が行われていて、最近では・・・
新作展vol.139「人、結晶」、
新作展vol.141「仮面」、
新作展vol.146「いろいろ」、
新作展vol.150「ダークヒーロー」、
新作展vol.154「星空」、
新作展vol.158「夕焼け」、
というように回を重ねてきました。
アトリエみらい畑が的場という霞ヶ関地区にあるからなのでしょう。この地域にあることの必然として、地域の人が猛烈にみらい畑の若手アーティストたちを応援しようという動きがある。作品を展示して応援しようというのも霞ヶ関のお店に多く、霞ヶ関では、あ、ここに、ここにも、と色んなお店でみらい畑のアーティストたちの作品を見ることができます。
東さんの作品を置いている場所は、現在15ヵ所ほど。
角栄商店街だと美利河(ピリカ)さん、川庭(KAWATEI)さん、桜英数個別塾さん、他にはファミリーマート川越安比奈親水公園前店さん、えすぽわーる伊佐沼さんなどなどにも展示されています。
中でも猛プッシュで応援しているのが、霞ヶ関駅から歩いて10分、かすみ商店街にある「カフェ&ギャラリー Le Cottage(ル コタージュ)」の美奈子さん。
「カフェ&ギャラリー Le Cottage」
(川越市的場北2-23-6霞ヶ関マンション1F
東武東上線 霞ヶ関駅南口下車徒歩10分程)
美奈子さんはシェアアトリエ開設の時からずっと彼ら地元アーティストを応援し続け、もちろんみらい畑にも何度も足を運んでアーティストたちの生の熱気に触れています。
店内では、みらい畑企画の展覧会が常時開催していて、いつ行ってもみらい畑のアーティストの作品が展示されているという応援ぶり。
2ヶ月ごとに展示会が変わっていきますが、
常時展覧会であり、常設店と言った方がいいようなお店です。
(「カフェ&ギャラリー Le Cottage(ル コタージュ)」)
この時開催されていたのが、2016年12月19日~2017年.2月26日、
アトリエみらい畑合同展vol.5「女装するおじさん」。
オープニングレセプション2016年12月23日。
■展示者
BEKo.
福島英人
monyoratti
鎌田萌奈美
Gosuisei(悟水晴)
蘭恵
東佑樹
そして、Le Cottageで現在絶賛開催中なのが、アトリエみらい畑の第6回展示会「新作展」。2017年2月27日〜4月30日まで開催されています。
今回のテーマは「新作」。
『今まさに自身が興味ある物事を製作し展示してもらいました。新鮮さの中には作り手本人もまだ気づいていないような自分の一面があるかも知れません。人が創り出す自然が感じられたらそれが一番良いなと思います』。
3月19日(日)16:30〜にはLe Cottageにてオープニングレセプションが開催されました。
◼︎展示者
福島英人
Natsuki Wakita
長島一広
Gosuisei(悟水晴)
蘭恵
東佑樹
制作したアーティストたちが一堂に会し、自身の作品の説明をしたり、来場者との交流を深めました。
このようにみらい畑の展示会では毎回のようにオープニングレセプションが行い、アーティスト&来場者の橋渡しをしています。
さらに、若手アーティスト応援なら、霞ヶ関と言えばあの男、いや、あの漢の存在を忘れてはならない。
川越日高県道の的場交差点から八瀬大橋方面へ、東上セレモニーホールの斜向かいにある「モナミモータース」の富岡さん。
彼もずっと以前から東さんの活動を応援し、事務所の壁に作品を展示し続けています。
(「モナミモータース」富岡竜一、川越で最も熱い30代と呼ばれる漢
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11772813359.html)
みらい畑の熱の連鎖ははさらに広がっていく。
Le Cottageと同じく、かすみ商店街にある「たまり場 博多屋」さんでも東さんの作品を店内に展示、応援していくことになりました。
博多屋さんの記事の中では、奇跡のような東さん颯爽と登場の下りを伝えました。
『東さんも霞ケ関を拠点にして頑張っているし、
この日の霞ケ関ナイトには彼の存在も欠かせないのではないかと、
富岡さんがLINEで東さんに連絡しようとしたところ・・・
博多屋の前で止まった自転車の影、降りてお店のドアを開けて入ってきたのが・・・
なんと、東さんだった。。。!霞ケ関人は引き寄せ合う。。。
博多屋でも今度東さんの絵を飾ることになり、ちょうどこの時、絵を届けにきたところだったのだ。』
ちなみにその中には、上記モナミモータースの富岡さんも登場していることは偶然なのか、必然なのか。。。霞を巡る地域の糸は、辿ればどこかで知り合いに繋がるという濃密なネットワーク。
霞で霞の人を話題にすると、その人が現れるという地域の神話は、いや、実際に起こって驚愕させることがしばしば。
富岡さんと東さんが酒を酌み交わすのは実に2年ぶり。
話しをしていたまさにその人がこの時に現れるなんて。
せっかくだから一杯と、東さんも席について霞ヶ関ナイトの輪に加わっていった。
(「たまりば 博多屋」もつ鍋が人気の博多料理店 人が人を呼ぶたまりば 川越の霞ケ関
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12235294445.html)
ちなみに、モナミモータースからみらい畑は歩いてすぐ。距離の近さも気持ちを繋げているのかもしれない。
「アトリエから街に出よう」。
東さん、蘭恵さんがアトリエを飛び出して、川越のイベントに登場する機会も近年は増えている。
東さんは、街で知られている側面として、毎月ウニクス川越で行われている「にぎわいマルシェ」で、お絵描きワークショップの人、と言えば、ああ!と思い出す人もいるかもしれません。そう、あの子どもたちに大人気のお絵描きワークショップの人が東さん。
(地面に広げたキャンバスに子どもたちみんなで絵を描く)
川越のアーティストたちが街の目に触れる場所に出てくるようになったのは、その奥には、川越のアーティストを応援しようという街の人が下支えしていて、みらい畑の二人に声を掛けているのだ。
イベントでは、会場で作品展示・・・というのは普通に考えることですが、いや、もっと楽しく、アートでもっと人を巻き込んでいこうと、ライブパフォーマンスを披露しています。アトリエでの制作とはがらりと変わった特別仕様で、アートから人に近づいていこうとしていました。
アーティスト支援というところでは、NPO法人おとまち小江戸がまず積極的。
2016年10月に開催された「おとまち小江戸秋まつり」では、
みらい畑の東さんと蘭恵さんが揃って登場。
東さんはお絵描きワークショップを、蘭恵さんたちがライブペイントを担当しました。
(2016年10月おとまち小江戸秋まつり)
ちなみに、アトリエみらい畑の入口には、おとまち小江戸デザインの自販機があるので、それも大きな目印。
(みらい畑入口に目立つおとまち小江戸の自販機)
さらに言えば、東さんと蘭恵さんを繋げたのも、おとまち小江戸の茂木さんでした。
そして、2017年4月にウェスタ川越・ウニクス川越で開催された
「2017年世界自閉症啓発デー Light it up blue 川越」。
自閉症啓発イベントであり、一般の人にも気軽に来場して楽しんでもらおうとしたイベントは、アートの力を借りようと、やはり二人に声を掛け、みらい畑の二人がイベントを盛り上げました。
(「2017年世界自閉症啓発デー Light it up blue 川越」2017年4月2日
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12262975510.html)
イベントでは、東さんには地面いっぱいに真っ白なキャンバスを広げ、子どもたちに自由に絵を描いてもらおうという「お絵描きアート」を。
そして蘭恵さんは、広場入口にてライブペイントを実施。
ライブペイントではいつも自分の制作のみならず、他のアーティストたちをまとめる役も担っています。
各地からやって来たアーティストが集結し、思い思いに自分の作品を制作していくライブペイント。
世界自閉症啓発デーにちなんで「青色」を使用するアーティストが多く、無地だった板に青の世界が広がり、深まっていく過程を魅せました。
(Light it up blue 川越 ライブペイント)
そして、 Le Cottageでのみらい畑主催の展示会は、これからも続いていく。来月から新たな企画がスタートします。
『アトリエみらい畑の第7回展示会「新緑」。2017年5月2日〜6月25日まで展示しています。テーマは「新緑」。
5月21日(日)16:00〜オープニングレセプションがあります。展示者さんのトークあり。ご来場お待ちしてます。』
街での展開は引き続きこれからも広がっていく。
最近の一番のトピックとしては、何といってもアトリエみらい畑に新しい動きが。。。
さらに一人、これまた若いアーティストみなみさんがみらい畑に加わり、4人となった。!
4人の創作意欲、熱情が渦巻き、ぶつかり、絡み合い、新しい何かを生み出していく。
川越を拠点に頑張る若手アーティスト、これからも目が離せません。
「みらい畑」
川越市的場516
東佑樹 電話09010451467
https://www.facebook.com/%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%84%E7%95%91-500640470123531/
「カフェ&ギャラリー Le Cottage」
川越市的場北2-23-6霞ヶ関マンション1F
東武東上線 霞ヶ関駅南口下車徒歩10分程
10:00~18:00
月曜・第2火曜休