「連雀町雀会囃子連による元旦の門付」2016年1月1日 | 「小江戸川越STYLE」

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年が明けた元旦、お正月といえば家でゆっくり過ごす人も多いでしょうが、

元旦だからこそ忙しくなる人たちも川越にはもちろんいます。

そういう人たちの側から見たお正月というのは、

お正月を全体として見られるような気がして、

なにより、年明けから人と人のドラマが間近で見られることが楽しいです。

毎年恒例となっている門付(かどづけ)が今年も行われました。

門付があることで、今年一年が始まったと感じるくらい風物詩となっている。

川越の連雀町の氏神様は熊野神社。

元旦早朝から初詣に来られている人の列が出来ている境内では、

雀会囃子連が準備を整え、熊野神社を出発していた。

門付というのは、連雀町の雀会囃子連の面々が、

正月の挨拶も兼ね、今年も無事に過ごせるよう、獅子、大黒天、もどきが巡り舞います。

雀会が回るのは連雀町内や近隣を中心にして普段お世話になっている家々やお店といった場所。

ここは、「昭和の街」、「大正浪漫夢通り」が地域を縦断しているだけあって商店が多い地域で、

商売繁盛の願いも込められているかもしれません。

そんな門付に、福を迎えようとぜひ来て欲しいとリクエストをし、

今年初の場所も何ヶ所か増えていました。


川越内では年明けから、各地域の囃子連が、氏子となっている神社で囃子を奏でていたと思いますが、

囃子連がわざわざ家の玄関まで、店先まで訪れてくれるのが門付。

門付は連雀町以外にも松江町一丁目などでも行われて、

こういう伝統が遺り続いているのが川越らしい。

連雀町のことから、川越らしいお正月が伝わってくる門付。

地域のお囃子の音色で一年が始まる正月らしい過ごし方は

本当は、除夜の鐘や初詣と同じくらい正月の行事として

川越の他の地域でも行われるといいなと思うものです。

連雀町の門付にしても、当初は一人で始めたものだそう。

それから人が増え、受け継がれ、こうして今元旦から大勢で行われている。

お囃子はその町そのもの。

地域の子が小さい頃から囃子会に入り、地域の大人に囃子を教わり、

地域の人に見守られながら大きくなって、地域を囃して回るという

お互い勝手知ったる関係の中で行事は行われています。


各地を巡るという意味では、川越まつりの山車曳行と同じで、

連雀町はあの道灌の山車で演奏していた面々が門付でももちろん奏で、舞っています。


(2015年川越まつりより)

川越まつりの街川越は、

2015年10月の川越まつりが終わっても雀会の活動は目白押しで、

毎月の熊野神社ご縁日に12月の酉の市と、お囃子の音色を川越に満たしています。

7月の百万灯夏まつりの時にもミニ山車を町内曳き回していたし、

連雀町は特に一年を通してお囃子に包まれています。

そしてお囃子が熱心な地域は、地域の人の結びつきが強いように感じます。

あの音色は人を繋ぐんです。

小さい子から年配まで年代問わず繋ぐことができる音というのは貴重です。

伝統行事、というものが、どこか田舎の方のもので衰退していっているものと思いがちですが、

ここ川越では中心部の市街地で活発に行われていることが興味深い。


2016年の門付、熊野神社を出た雀会は住宅街の道に入り込み、囃子を響かせる。

迎える方は玄関先で演奏を聞き、終わると

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」と挨拶を交わす。

一軒一軒、舞い手は同じ順番で獅子、大黒天、もどき、獅子と舞い、次の一軒でも終わると

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」と挨拶を交わしていく。

今年も来たよ、今年も来たか、という町の付き合い、こういう正月っていいなと思わされます。

こういうのを見ていると、

やっぱり地域の伝統って地域が育てるものだと感じます。

お囃子は町内の誰かがやってくれているもの、という意識でいるとお囃子は育たない、

門付があればうちにも来てくれ、と頼む人が地域にどれだけいるか。

地域力が測られるものなんですね。


今年の元旦も晴れて過ごしやすい日でしたが、日陰に入ると痺れるような寒さが体に伝わってくる。

お囃子はこの寒さだと手がかじかんで笛など大変そう。。。

人通りが多いところにやって来ると、

獅子や大黒の一行に何かが始まるらしい、という期待に通りすがりの人が足を止め、

囃子の音色に惹き付けられ、すぐに周りを埋め尽くしていきます。



おそらく周りの観客は門付というものを知らない人も多かったでしょうが、

でも家先で囃子を演奏している生の現場は何かを訴えるものがあって、

演奏に耳を傾け、カメラを取り出す光景が広がる。

演奏が終わると、

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

雀会とそれを迎える人の関係性のものなのに、

周りで見ている人から自然と拍手が沸き起こっていきました。

初詣に訪れた人を相手にしたものでも、観光客を相手にしたパフォーマンスでもありませんが、

純粋に地域の平安を願って巡る風景に、

観客から「へえ、川越って凄いね。いいね」と話す声が聞こえてきます。

演奏する人がいる、迎える人がいる、

元旦にそういう関係を見られたことにこれ以上ない正月らしさを見出しているようでした。

一軒の門付が終わると、獅子が周りを取り囲む観客の頭も噛んでいくのも恒例で、

子どもから大人まで次々と頭を向けていました。


さあ、次の場所へ移動だ!と歩いて向かう雀会、

またあの演奏、光景が見られるのかもしれない、と演奏に魅了された人たちが後をついていきます。

その煌びやかな装いから、大黒天が記念写真のお呼びがかかることが多い感じ。

県道に出て中村屋さんのところへ向かうと、すでにお店の二人はお店の前で待ち構えていました。

毎年立ち寄るお店で、今年も立ち寄れるという地域の幸せ。





終わるとまた来た道を戻って、と回るルートは決まっていてもきっちりではなく、

相手の時間の都合に合わせてルートを変えていくのも、地域密着らしい行事。





次は北の通りに入って桜井商店さんを訪れ、

県道沿いのいわかみさんを回っていく。






県道から北に進んで、左折して蓮馨寺に入っていくとお寺の住職などに門付挨拶を済ませると、

松山商店さん、境内の屋台村で披露していきました。

どこに行っても、演奏が始まるとすぐに人だかりができるのはさすが。

まことやさんまで来たら、門付午前の部は終了です。








午後の部は蓮馨寺前の中央通りからスタート。商店街のお店が多くなっていきます。

まず向かったのはトシノコーヒーさん。

トシノコーヒーさんは比較的新しいお店ですが、昨年に引き続き門付をリクエスト。

そして逆に言えば、新しいお店が伝統的な門付を頼むというのもまた素敵な話しです。

この地に何十年をお店を構えているところから新しいお店まで、

リクエストがあれば分け隔てなく訪れるのも門付のいいところ。

トシノコーヒーさん、自店に門付が来るということで、

今か今かとカメラを構えて待ち焦がれていました。





そして、おおつか花店さん、ワインスタンドポン!さんへと向かっていきました。


ポン!さんは昨年オープンしたお店で、早速初めての新年に門付をお願いしていた。

実際に元旦を迎え、いざ、お店の前にお囃子が現れると感激した様子。

目の前まで来てくれて、しかも自分たちのためだけに演奏してくれるということに

信じられないという表情を浮かべていました。








ポン!さん以上に感激していたのが、店内にいたお客さんで、

外が賑やかになったと思ったらお囃子がやって来て、

次々に舞い手がお店に入って魅せる光景に大興奮でした。

さらに獅子が店内に入り込んでお客さんの頭を噛んでいくと、みな喜んで頭を差し出していた。

ポン!さんを出ると次に向かうのは、

連雀町から少し足を延ばして末広町にある特別養護老人ホーム蔵の街・川越へ行き、
そしてまた昭和の街に帰ってきてAgosotoさんへ。

蓮馨寺向かいの古本カフェAgostoさんに来るのも恒例となっています。

ワインスタンドポン!さんもAgostoさんも、ツイッターやフェイスブックなどのSNSで

元旦の何時頃に門付がやって来ます!と発信していたので、

福のお裾分けももらおうと、店内でお客さんが待ち構えていました。

横断歩道の向こうに雀会の面々が見えると、

「あ!来たみたい」とAgostoの緑さんが声を上げる。

門付は確かに、お店の中で待って見ると感動的。

雀会がやって来て、構えて、始まる、その空気感が独特でたまらないです。





その後、同じ通り沿いにある栗原さんの所へ行き、

最後に、蓮馨寺前の立門前通りから曲がってなんでむんさん、大谷印舗さんで止まり、

熊野神社へと戻ってきました。









今年も無事に正月の門付が終わり、一安心の雀会。

元旦を、門付をする側から見ると正月の感じ方も違うのではないでしょうか。

本当は元旦くらいゆっくりしたいかもしれない、やる側というのは本当に大変です。

川越は川越まつりの街で、お囃子の街、

お囃子で始まりお囃子で終わる川越の一年が始まりました。

また、連雀町雀会囃子連の一年から川越の根が伝わることを願っています♪