旅先で良い待遇を受けるための賢いマナー戦略についての医師限定公開コラムを4回にわたり、連載中なのでありますが、
に続き、3つ目がアップされました。
医療従事者限定の『m3.comメンバーズメディア』向けに書き下ろしました4回にわたるコラムの3つ目ということです
当ブログで地味〜に検索上位をキープしているこちらの記事を4つに分けております。
で、この度、医師限定メディアに出されたこちらを、
ブログにて惜しげもなく全文公開いたします。
ぜひご覧下さいませ
===========(以下本文)
こんにちは! 旅するフリーランス女医、えりおです。
週の半分ほど医師として従事する傍ら、総合旅行業務取扱管理者の資格を生かし、品格ある優雅な旅へ――体験した旅の情報は、現在メンバーズメディアのほか、ブログなどを通じ発信させていただいております。
前々回(https://membersmedia.m3.com/articles/2607)から4回にわたり、
日々の生活や旅先で良い待遇・サービスを受けられる顧客になるためのヒントは日々の診療にあり!
といったテーマで書かせていただいております。
「ついサービスしてしまいたくなる顧客」であるため、私が心がけていること、
コンセプトは「患者さんにされて嫌なことは、外ではしない」。
私は日々の臨床からヒントを得て、旅先で以下のことを心がけています。
- お金を支払った「その先」を意識し、素晴らしいサービスに対しお金を払うことを渋らない
- サービスしていただく相手に敬意をきちんと払う
- 相手にプロ意識がない、ということが判明したら、毅然と、理路整然と、クレームを入れる
前回(https://membersmedia.m3.com/articles/2628)は、「サービスしていただく相手に敬意をきちんと払う」とはどういうことなのか、お話させていただきました。
第3回の今回からは「相手にもプラスになるクレームの入れ方」として、以下の2つの「症例」を検討しながら、日々の診療をヒントに自分が心がけていることをお話ししたいと思います。
- 部下の粗相が上層部に全く報告されなかったために起きたトラブル
- 案内された座席/部屋がイマイチであった場合
本来であれば、2つ目の症例の方がメジャーな内容と思われるところなのですが、話の進め方の都合上、この順で、2記事に分けてお話しさせていただきます。
【症例1】 部下の粗相が上層部に全く報告されず…
クレーム発生場所:とある温泉旅館
クレーム内容:車で到着時「(紙の)宿泊リストに名前がない」と追い返されそうになるが、ネットで予約しているのでそんなわけはなく、フロントが大混雑の中、デジタルデータを確認するとのことで、時間を要した。
寒空の下、待たされるという、決して楽しい時間だったとは言い難い状態。蓋を開けてみると、紙のリストの方に記載された名前が間違っていたという、旅館としてはちょっと致命的ではないかと思われるミス。
フロントにクレームを入れ、今後こういうことのないように上の偉い人に伝えて欲しいとお願いするも、きちんとした旅館であれば通常、滞在中に謝罪があるだろうところ、一切なし。
滞在中ずっとモヤモヤした気分が残り、リニューアルされたお部屋、温泉、バイキングのお食事、たしかに素敵でしたが、心から楽しめなかった。
おもてなしする側は避けられない「クレーム」
サービスする側がクレームを受ける理由として、
- お客さんに対して良かれと思った行為が、結局裏目に出てしまった
- そもそもプロ意識が足りない
この2点の可能性は常に付きまといますよね。
飛鳥IIのイケメン船長は「100人いたら100人全員に満足いただけるクルーズを!」と意気込みを語っておられましたが、まあ、あれは、イケメンだからこそ絵になるセリフという説もあり(笑)
今までの話の展開からすると「それはサービスする側が言うことであって、客の我々が言うことではない」ともなるわけなのですが、現実には100人中100人を満足させることは、難しいわけです。
それでは、先ほどの症例のように、不幸にして自分が不快な気分になってしまった場合はどうすればよいでしょうか。
まず一息ついて状況を客観分析!
感情のままに怒るのは大人としてあるまじき行為です。患者さんに感情の赴くまま怒鳴られても建設的な議論にならないのと一緒ですよね。
「クレーム」は「いちゃもん」とは違います。
単に駄々をこねているだけ、とならないようにせねばなりません。
変な形でクレームを入れることで、逆に「ブラックリスト客」となってしまっては元も子もありません。こちらの非はなるべくないようにしたいわけです。
まず頭がカッとしている時、衝動的にクレームを入れるのは避けます。
その上で、客観的に、自分がモヤモヤしている内容を頭の中で、場合によっては書き出してみるなどして整理します。
なるべく冷静になった時の自分の判断、あるいは同行の友人などの意見も取り入れて、内容がクレームを入れのるに妥当か、ひと息入れて判断するようにしています。
私がとる作戦としては、このサービスのため、そして他のお客さんのために、どういう申し立てをすれば良い結果が得られるか、ということを念頭に置きながらクレーム内容を考えるということです。
せっかくですから、サービスする側も、客の我々もWIN-WINとなるようなクレームを入れるに越したことはありません。
施設側にも有益な情報を盛り込むのが◎
高級ホテルなど、きちんとした施設であればあるほど、お客さんを不快な気分にさせることを望むスタッフはいません。しかも立場が上になればなるほど、そうです。
上に立つ者として、部下に目を光らせる、当然のことですが、大きな施設にもなってくれば、なかなか全てを把握することはできません。
そんな時、お客さんから、自分の知らないところで、自分の部下による振る舞いで「不快に感じてしまった」という情報を頂けたら、それは迷惑なことでしょうか?
プロ意識が高ければ高いほど、そんな風には思わないのではないでしょうか。
むしろ、とてもありがたい情報だと感謝すらされるはずです。
相手方にそのような情報をきちんと把握してもらえれば、その後、他のお客さんが同じことで不快な目に遭うこともなくなります。
ということで、なるべく上の立場の方に、その施設や他のお客様に有益と思われる情報をお知らせする、これが、いつも私が心がけていることです。
できるだけ立場が上の人間にクレームが届くように!
どれくらい上の立場か、というと、クリニックにクレームを入れる時、クレームが入る時をイメージしていただければ良いかと思うのですけれども、やっぱりその時間帯の責任者クラス、クリニックだと事務長か院長、ホテルなどでいうと支配人クラスがよろしいですね。やはり責任が大きくて、その施設全体を良くしなくてはいけない立場の方。
実は、つい最近、あれだけイチオシしたThe Okura Tokyoに電話でクレームを入れる事態が起きたのですが(具体的な内容は次の回で提示させていただきますけれども)、その時も、電話のオペレーターが、こちらが何も言わずとも、「責任者にお繋ぎします」という対応をされたんですよね。やはりそれが一番手っ取り早い方法なのだというのが、ホテル側もわかっているのですよね。
責任者クラスにクレームを入れるということは、きちんとした応対をしていただける、という目的はもちろんなのですが、実はクレーム自体はきっかけに過ぎず、さまざまな分野のプロでトップの方と見解をシェアできる、という側面もあります。
あと、お部屋に置いてある、紙の「お客様アンケート」、あれ実は総支配人が直接見る可能性が高いものでして、そこにクレームを記入するという方法も有益な手段となる場合があります。
私がクレームを入れるサービス施設は、どうしてもホテルや旅館が多いのですが、ホテル側の、非常にビジネススキルの高い方とお話することで、結果としてクレームの内容以上にいろいろと気づかされることが多いです。逆に自分が勉強させられることもあります。
【症例1】その後の経過
「これは上まで報告がいってないな」――と、なんとなく思いつつ、チェックアウト間際、お部屋に置いてある「お客様アンケート」に記入。先ほども申し上げましたが、こちらはまともな宿泊施設ですと総支配人が直接見る書類ですので、やってみる価値はあります。
ただ、ここからが違いました。
なんとチェックアウト後5日くらいして、総支配人から直々のお電話が!
結局、私の宿泊中、従業員から上には(伝えるようフロントでお願いしたにもかかわらず)伝わっておらず、チェックアウト間際、最後の最後に私が書いた「お客様アンケート」を読まれてお電話されたとのこと。
1週間も経ってからでは遅すぎると、十分理解したうえでの謝罪のお電話でした。
結果、5分ほど、お話させていただきました。
滞在中に従業員がことの重大さを認識していなかったことで上に報告が来ず、謝罪できなかったことそのものが問題で、何かあった際の報告体制もしっかりせねば、といったことや、そんなことばかりやってると、その地域にいらっしゃるお客様が離れていってしまうでしょうとか、これをもとにきちんと立て直さないと、とか、わりと建設的なお話が沢山できました。
通常、宿泊施設の総支配人クラスにこうしてお時間を頂けることなぞ、滅多にございません。大変有意義な時間となりました。
さらにびっくりしたのが、後日、総支配人から直筆(しかも毛筆!)で手紙と宿のある地域の名産品であるお菓子の詰め合わせが届いたこと!(一応言っておきますけど、自分はこれを目当てにクレームを入れたわけではありませんからね笑)
失敗はどなたにもあります。そこをどう立て直すか、こうなってくると楽しみというもの。もうここはリピートしないな、と考えていたところから一転、また機会があったらどう変わっているか、訪れて確認したいと思える宿となりました。
サービスにきちんと敬意を示した上でクレームを入れることが「真のマナー」
いくら相手から受けた「仕打ち」を理不尽に感じても、相手以下に身を落としたら終わりです。
この心構えは、なにも高級なホテルや温泉旅館だけでなく、我々が携わる医療などあらゆる場面において共通してまいります。
自分以上に他の方のためを考えた行為、それは巡り巡ってちゃんと自分に還ってくるものです。
患者さんにされて嫌なことは、他の人にすることもやめよう。自分はそう言い聞かせて毎回旅に臨んでいます。
次回は案内されたお部屋やレストランの座席に対してクレームを入れた案件について「症例検討」させていただく予定です。
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