「運命の恋愛」第三話

第一話はこちら
https://ameblo.jp/koremiturie/entry-12607499082.html

第二話はこちらから
https://ameblo.jp/koremiturie/entry-12607503044.html
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次の日出社すると、部署内がざわついた雰囲気。
ふと部長のデスク付近を見ると、

タクロウと部長が難しそうな顔をしながら話をしている。
穏やかな雰囲気とは程遠い雰囲気。


険悪な雰囲気はどんどんエスカレートしていき、
タクロウは部長を睨みつけ始め、
部署内に響き渡るような声を上げ始めた。

「だから、これは俺が手がけた案件ですよ。
なんで今さら、部長が出てくるんですか?

取引先へは今まで通り、俺1人で行かせてくださいよ」


「まあまあ、井上くん。落ち着いて。
契約できたのは井上くんの実力かもしれないけれど、
お客様との良い長い付き合いを維持するには
部長の私が担当すべき案件なんだよね」


そのやりとりを見て、大きくため息をついてしまう。
また、営業主任の安田さんが部長に告げ口したんだ。

彼の手柄を横取りする光景を見るのは本当に辛い。
もしも私が社員だったら......安田さんのチェックがなくても見積書が出せるのに。

そう思うと悔しくて仕方なかった。私のせいだ......と、
自分を責めてしまう。


お昼休み、彼にLINEしてみる。



「タクロウ、お疲れ。今朝見ちゃった・・・
部長とのバチバチ・・・でさ、今晩いつもの場所で飲まない?」


私のLINEを待っていたかのように、すぐに既読になる。

「ユウ、サンキュー。でも、今日はいいや。ごめん」

「そっかーわかった。また別の日、デートしよ。
私が、タクロウに甘えたいの」

「わかってる。ユウの気持ちは知ってるから。
またLINEする。サンキューな」


ハートたっぷりのスタンプを送り合い、LINE終了。
彼を元気付けられないもどかしさを感じて、

ふうーっとため息をついてしまう。
いつもそう......仕事で成功すると甘えてくるのに、
行き詰まると1人の殻に閉じこもる。



傷ついたオスのオオカミが洞窟の奥で、
誰も寄せ付けないような雰囲気で自分で傷を舐めてるような.......
もっと私に甘えて欲しい。もっと感情をぶつけて欲しい。


喜怒哀楽の全てを分かち合いたい。苦楽を共にしたい。
それなのに、彼が本当に傷ついた時にはカヤの外に出される。

もしかすると本当に傷ついた時は
同棲してる彼女に慰めてもらってるのかもしれない
なんてイヤな妄想してしまう。

息苦しい、もどかしい。
震えるような感覚が全身を駆け巡っていく。


タクロウからの急ぎ案件がないから定時で業務は終了。
今日は真っ直ぐ家に帰り、娘と一緒に晩御飯を作ろう。

娘が好きなプリンを駅ビルで買ってデザート付き。
ちょっと豪華な晩御飯にして気分を上げていこう。

「今日はママ、お仕事早かったのね。嬉しい」
台所で晩御飯の調理をしていると、娘がじゃれるように甘えてくる

「マナミちゃん、ママも嬉しいわ。
ね、お願いがあるんだけど、テーブルセッティングしてくれないかな?」

「はーい」


女2人で晩御飯の準備をして行く時間は至福の時間。
こんな時、娘を授かったことを本当に幸せに感じる。

タクロウと知り合う前、こんな平凡な時間だけが私の時間だった。

けれども今は、運命の恋に堕ちてる。
この恋愛に人生全てを賭けている。

もうこの恋愛なしでは生きていけない。
私は彼の片割れ。彼が居なくなったら、
私の人生は半分死んだかのようになる。
虚ろな感覚での人生になる。


それが分かってるから、この恋愛に全身全霊一直線。

娘を寝かしつけて、夜は1人でネットサーフィン。
最近は恋愛系のブログがお気に入り。

彼との恋愛は表面的には順調だけれど
一瞬先は闇という感覚が拭えない。

不安な気持ちが消えるのを願いながら、
ブログを読んで必死に勉強している。


男性心理やスピリチュアル恋愛、引き寄せの法則などなど......
調べれば調べるほど、彼とは深い縁で繋がってる感覚が広がって行く。


ネットサーフィンを続けて、恋愛スピリチュアルのブログに辿り着く。

努力しないで愛されるという名前に惹かれて
ブログを読み進める。

本当かな?あまりにも出来すぎた話のようで
信じられない気持ちもある。

でも目が離せない。どんどん読んでしまう。

最新の記事を読むと、オリジナル・ブレンドのメモリー・オイルが近々販売されるよう。

今回のブレンドは女神アフロディーテのオイルを
ふんだんに使ってるとのこと。

女神のエネルギーか......彼との恋愛は運命だから
ご利益がありそうな気がする。色も赤くて可愛い。

こんなオイルを使ったら、彼との恋愛も一気に進みそう。
この不安から解放されそう。

オイルに希望の光を感じて、思い切って注文をした。



ーー続くーー