先ほど、画廊を開けるまえに行って来ました。
挿絵はどことなく懐かしさを感じさせて、いいもんだなあ、
とつくづく思った。
いま、なかなか挿絵のある本を見る機会がないからね。
少なくともぼくは。
新聞小説には今でも挿絵があって、そこに目が行く。
絵だけを見て、その小説の輪郭と言うか、内容を想像したり、
雰囲気をつかんだりしてしまうから、
挿絵はその小説にとって、重要な位置を占める。
この展示会でも、伊勢田邦貴や堂昌一の絵を目の当たりにすると、
その時代の匂いと言うか、物語のイメージがいっぺんに蘇ってくる。
ぼくのこどもの頃に接していたのは、こう言う絵だった。
また筆遣いの美しいこと!
女性の実に艶かしいこと!
また股旅物の出で立ちって、どこか虚無僧的でいいよなあ。
いまネットで岩田専太郎の絵を見ているけど、
しびれるね。
この、しびれるって何だろう?
何にしびれるのだろう?
表情の、或いは姿形の、隅々にまで行き届いた描写の的確さ、だろうか。
それはもちろん指先の、そのまた先まで、と言う意味で。
でも一方で的確さのみ、ではない、全体から醸し出される雰囲気がつくる
味、と言う漠然としたイメージの造形力もある。
しかし決定的なのは、何より心根の有り様が、
目に映る形で表わされる筆使いに対して
驚嘆を込めてしびれる、と言うのではないだろうか。
新宿紀伊国屋書店本店4階 紀伊国屋フォーラム。
電話03-3354-0131
15日(木)まで。