去る5月末日に窓サッシの設置を終え、
次に6月2日(火)から始まったのは、床断熱材張り。
3日(水)のユニットバスの据付けをはさんで、
断熱材の施工に5日までの3日間かかりました。
2階の床はクローゼット等を除きほとんど全面が畳敷きになるので、
その下地の無垢杉板が早い時点でに張られていたのですが、
1階の床張りは土壁荒壁塗りの後でということで、
ずっと大引き(床の下地木組み)の上に足場板を仮に敷き並べた状態のままでした。
その1階の床板(フローリング)張りをする前に、
床下に断熱材(フォレストボード)を仕込むのです。
最近の家は断熱気密性能のために、基礎断熱を施します。
それはベタ基礎だからできることです。床下も密閉空間にできるからです。
基礎断熱をしない場合は、せめて床断熱を施す必要があります。
さて、ウチの場合は石場建てですから、
そもそもコンクリート基礎がありません。
礎石の上に直に柱が立っていて、床下は素通し!
通気性抜群で、木の腐朽を防ぐためにも防蟻性の観点からも、
多湿な日本には最も適しているといえます。
そのうえ地震にも強い、まさに日本の気候風土が生んだ構造です。
けれど、そのぶん冬場は床下が外気そのものですから、
断熱材のない昔、気密性の低い昔の施工では、
床から文字どおり底冷えがするということになります。
これは私の勝手な想像ですが、だからこそ
床断熱材として畳を敷き込むことが普及したんじゃないかと思います。
畳は夏場はひんやり心地いいものですし。
現代のように椅子生活が普及し畳を敷き込むことがなくなると、
しかも合板のフローリングだと、
足触りは冷たいし熱伝導率も熱容量も無垢材に劣るしで床の冷え込みが深刻になり、
今では床への断熱材の施工がかえって欠かせなくなってきました。
ウチのような石場建ての新築だと、そのあたりどうなんでしょう・・・。
ウチも1階はほとんど畳を敷かず板の間です。
伝統構法とはいえ、百年後の未来を見据えての施工。
現代的な水準を満たせる性能が要求されます。
そこで我が棟梁が考えたのが、
フォレストボードと杉の無垢板の組み合わせでした。
大引き(床の構造材)の間に根太と受け桟を仕込み、
そこに隙間なくフォレストボードを詰め込んだ上に、
本実突き合わせで無垢杉厚板を張り重ねてフローリングとします。
このフォレストボードが、完全自然素材の断熱材。
秋田杉を製材するときに出る廃棄物だった杉樹皮を有効活用したもの。
そう、これ、2/26「屋根断熱・・・フォレストボード」の記事にもあるように、
屋根の断熱材としても用いたものです。
あらためてフォレストボードとは・・・。
(全国林業改良普及協会 林業普及情報「スギ樹皮断熱材」☜click参照)
今まで再利用されることなく焼却処分されてきた
秋田杉の樹皮を資源として循環させた断熱材。
原料は、杉の樹皮49%+杉のバージンパルプ49%に
つなぎとしてコーンスターチ2%を添加したもので、完全に自然素材です。
(これ↑は 端材)
当初は断熱材としては、パーフェクトバリアが採用される構想だったんです。
ペットボトルのリサイクル製品で、自然素材の家との親和性も高く優れた製品です。
けれどポリエステル製・・・やはり石油製品には違いありません。
そこで私は、木質系の断熱材、フォレストボードかウッドファイバーか、
どちらかにできないか?!とお願いしたのでした。
フォレストボードは、高性能グラスウール16K相当の断熱材だそうです。
フォレストボードは熱伝導率0.044W/m・K、グラスウール16Kは0.045W/m・K。
それなら自然素材のフォレストボードがいいやん!となりそうですが、
問題は価格。
パーフェクトバリアでもグラスウールより1割ほど高いそうですが、
フォレストボードは廃棄物利用なのに、もっと高いらしいんです。
それでも棟梁がフォレストボードを採用してくれたのは、
完全に自然に還る素材だということ。何の化学物質も添加されていないこと。
そして、木質系繊維は、熱容量が高いという特性があるからです。
熱容量が高いということは、温まりにくく冷めにくいということ。
つまり熱伝導時間が長くなり、同じ熱伝導率でもより室温の安定をもたらし、
良好な室内温熱環境を維持することができるというわけです。
数値でいうと、16K高性能グラスウールが16kJ/m3・Kなのに対し、
フォレストボードは320kJ/m3・Kもあるのです。
(偉そうに言っていますが、単位もよく分かってません!)
そのあたりの仕組みについては、ウッドファイバーの数値を使ってですが、
自然エネルギー研究センター(NERC)の
「木質繊維断熱材 » 「木」は暖かい」(☜click)に詳しいので、参照してみてください。
さらにフォレストボードには、
吸放湿性が高く結露のリスクが低いという特性があります。
ウチの場合は石破建てでフォレストボードが外気に直に曝されており、
結露の心配はないと言えます。
でもそんな山羊でも食べそうなフォレストボード、直に床下にあると、
白蟻や腐朽が心配・・・と思われるかもしれませんね。
けれど、そもそも樹皮は、生きている木を白蟻や腐朽菌から守る働きのあるもの。
人間の皮膚もそうですよね!
そのことは経験的に知られていたのですが、
フォレストボードの実験でも確認されているそうです。
さらに直にフォレストボードが床下で外気に曝されていることで、
白蟻のリスクは下がります。
白蟻は、水や湿気のある空気の澱んだ30℃前後の環境を好みます。
それで言えば、そもそも通気抜群の石場建ての床下は、白蟻の生息に適しません。
逆に基礎外断熱は、白蟻の好む生息環境を敢えて作るようなもの。
毒性の強い農薬系防腐防蟻剤が必須で、その持続効果は最大で5年。
しかも床下は密閉されて見ることができないので、
食害に気付かないまま被害が拡大なんてリスクもあります。
話しが白蟻の方に逸れてしまいましたが、
フォレストボードには他にも利点があります。
それは、化学物質(ホルムアルデヒド等)の吸着性に優れ、
また再放出されにくいことが実験により明らかになっていることです。
それに、アンモニアなどの悪臭物質の消臭効果があることも分かっているそうです。
なので、これだけ自然素材と言っておきながら設置したユニットバスの中に、
フォレストボードの切れ端をたくさん入れてみました。
また、仮住まいのトイレにも1本入れてみたところ、なんか効果を感じる気がします。
その切れ端・・・元は、
フォレストボードは当たり前ですがボード(板状)です。
床下には45mm厚のを2枚重ねで90mm厚に敷き込みました。
大引きや根太に囲まれた方形の間に大きさをピッタリ合わせて切り、
隙間なく詰め込んでいきます。
このピッタリ詰め込むという丁寧な施工が、家の気密性を確保するミソ。
数が多いので、かなり大変な作業です!
フォレストボードは指で押しても潰れないほどの硬さがありますが、
樹皮とパルプでできているので鋸で簡単に切れます。
その意味で施工性はいいのですが、ただ木材に比べてかなり軟らかく、
切り口がモケモケになるし、粉塵も出ます。
切ってははめ、切ってははめ・・・延々その作業を続けるのも、けっこう大変そう。
で、結局はじめに書いたように2人がかりで3日もかかっていました。
本当にお疲れさまです。
このあとは、床板、40mm厚の無垢杉板を張っていきます。