今年も繁殖の秋がやってきた。

私はこの日のために、1匹のハムスターを買った。

毎年、春と秋に1回ずつ、私の家ではペットたちの発情期が来る。

もちろん温度は毎日一定であるが、日長の違いがあるからだろうか、毎年卵を生んだり子供を生んだりする時期は決まって春と秋だ。

私のハムスターたちはプディング遺伝子を持っていなかったため、いつかほしいと思っていた。

そして、今年ついにクリーミーラインを手に入れたのだ。
その子はメスのジャンガリアンとして売られていた。

同じケージで売られていたもう一匹の子は、買う直前になるまで気づかなかったが、赤目であった。
ルビーアイ、と言っていただろうか。
私が知っているジャンガリアンの赤目は、
アルビノ…つまり体色も真っ白な個体だけだった。

そして、赤目ではない子を選び持ち帰ったが、
回し車の回し方がどうもキャンベルハムスターの回し方に近い。

おそらく純粋なジャンガリアンではないなと気づいた。

その子は人見知りなどしなかった。
ただ家にいるジャンガリアンより少し足が速く、後ろ足の筋肉が発達していて、飛ぶように回し車を回しているだけだ。我が家のハムスターであることには変わりない。
私はその子を、プリンと名付けた。

私はその子と家のハムスターのオス、ワカと会わせた。

なんとも、やはり難しいのです。

歩く速さが違う。
オスはメスに追いつこうともしない。
メスはケージの中を走り回る。

やはり無理であるだろうか、そう思っていた。
まだ他の動物たちは発情していなかったが、ワカだけは違った。

ずっと諦めずメスに近づいていくのである。
私は、ワカは期待できる、と思った。
良い意味で積極的なオスは、繁殖には向いている。
臆病すぎるのはメスに噛まれてしまう。
メスの体を噛みに行くオスもだめである。

いろんな性格のオスがいるが、家で今一番期待できるオスだ。
名前はワカ。ノーマル個体。今年の主役になるかもしれない。

本当は、トノというノーマルのオスと交配したかったが、あとに話すとおり、高齢で、うまく行かなかった。


家にはヒメというメスのハムスターがいる。
この子は私が受け継いでほしい血を持った唯一のハムスターで、スノーホワイトだ。
人懐こく、何代も続いたブルーサファイアの血を持っているのだ。
ブルーサファイアは人懐こくないイメージがあるが、ノーマルとノーマルと間で何度も交配していたときに偶然ぽつんと出たこのサファイア遺伝子を持った子は、なぜか人懐こかったのである。私はこの遺伝子を絶やすまいと必死である。
そして今、このブルーサファイア遺伝子をもった子はたった一匹。ヒメ、この子しかいないのだ。

今、ヒメは私が一番大事に育てているハムスターなのだ。

そして、今年は2ペアの繁殖を試みていた。
ヒメとトノのペアと、ワカとプリンのペアだ。

トノは我が家のハムスターの中で一番賢く、一番強い。

喧嘩には動じず、噛みつかれそうなときは道場でも通っていたかのようなマウンティングをし、相手が興味を持って近づいてくるのを待つような、とても堂々としたハムスターだ。

ちなみに人懐こいサファイア遺伝子の子が生まれたのは、
トノと同じ家計のノーマルのハムスターから生まれたのだ。

トノの家計とヒメの家計は少なくとも5代は別々であった。私がサファイア同士、またそこにパールホワイトをかけ合わせ、スノーホワイトの個体を作るまで時間をかけたのだ。つまりトノとヒメは多少血のつながったとおーい親戚なのだ。

しかし、ヒメ以外のサファイアを受け継ぐハムスターはいなくなってしまった。
だから、やむを得ずノーマルの、私が初代に選んでいたハムスターの血を受け継ぐ者を今回掛け合わせることにした。

しかし、トノはもう若くない。腰も曲がってきた。

ヒメは未だ妊娠する傾向は全くないが、
ここで希望が現れたのである。
プディング遺伝子を持ちこむための繁殖だったワカとプリンのケージである。
ワカはトノの子であるので、一回り若い。

このワカとプリンのけーじでは、なんと、1週間前に交尾に成功しているような行動が見られたのだ。

今プリンのお腹が日に日に大きくなっているのだから、おそらく間違いはない。

ワカなら、ヒメの子供を作れるかもしれない。

そう思い、ヒメと一緒のケージに入れてみることにした。

今日がその1日目である。

前にもヒメとワカを数回合わせているから、すんなりうまく同居できている。

ただ、ヒメはトノが大好きなのである。
トノの魅力は私にも伝わるほどだ。ヒメはトノのおかげで戦い方も、見る目も変わった。

最初ヒメは、怖がりだった。トノと初めて会ったとき、鼻をお互いくっつくギリギリのところになってはキーキー言ってお腹を見せていた。
トノはその頃から素晴らしく、噛み付くなど一切ないし、そこにヒメは惚れたのだろう。

私はとても悩んだが、ハムスターの繁殖適齢を過ぎてしまったら、
ヒメの子孫は残せない。
ヒメには、今か来年の春までにどうにか妊娠してほしいという私の焦りもあった。

泣く泣くトノと引き離し、ワカに委ねた。

そして、
今年もやってきたのである。
繁殖の時期だ。

これからが楽しみである。