宵越しの銭はもたねぇ | 心の風景

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江戸っ子の「宵越しの銭はもたねぇ」という人生哲学はどこから来たのか。少し前ですが、NHKが実に面白い番組をやっていました。「NHKスペシャル 大江戸 第3集『不屈の復興!!町人が闘った“大火の都”』」です。

 

 

 

「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるほど江戸は大火が多かったそうです。何と3年に1回! 当時の消火は家を壊して延焼を防ぐという「破壊消火」が主だったんです。ですので、庶民の家はいつでも壊せるように簡単な作りになっていて、住人は身の回りの物だけ持って逃げる覚悟が出来ていたとのこと。そこから物や金に執着しない「宵越しの~」という江戸っ子気質が生まれてきたんだそうです。

 

 

他にも色々な説があるのでしょうが、これには大いに納得しました。環境が短期間で地域の人の心に影響を与えたいい例ではないかと思います。

 

 

(ここからは推測に基づく私見です)。しかし、その環境がなくなれば当然江戸っ子気質もなくなります。近代に入り、防火・消火の態勢が整って、火事の被害が小さくなれば、物や金に執着しない生き方を貫く必要もなくなるわけで、江戸っ子らしい人がいなくなるのは時代の必然と言えましょう。

 

 

世間では執着のなさを評価する傾向がありますから、そういう変化を嘆く人も多くいるかもしれませんが、江戸の人も命や財産を奪う火事は、ないに越したことはないと思っていたでしょう。近代はその願いをかなえたと言ってもいいわけです。

 

 

やはり「得るものがあれば、失うものがある」のだと思います。