《こころとハーモニーの講座フェルマータ》
~フェルマータは藤沢市の音楽教室です~
合唱・ピアノ・声楽・手話歌・音楽講座
♪プロフィール♪
(前回のお話はこちら)
『愛の夢』
名曲リストの『愛の夢』第3番は、
彼がマリーと別れた直後に書いた
歌曲『おお、愛しうる限り愛せ』が
そもそもの原曲になっています。
リストはこの歌曲を書いた5年後に
これをピアノ曲へと編曲したのです。
さて、原曲となったこの歌曲ですが、
ドイツの詩人
フェルディナント・フライリヒラートの
詩にリストがメロディーをつけたもので、
歌の冒頭では、
おお愛せよ、愛することができる限り
その時は来る その時は来るのだ
汝が墓の前で嘆き悲しむその時が
と情熱的な言葉が続き、曲が転調すると
心を尽くすのだ 汝の心が燃え上がり
愛を育み 愛を携えるように
愛によってもう一つの心が
温かい鼓動を続ける限り
と、更に内容は感情的に盛り上がり
汝に心開く者あらば
愛のために尽くせ
どんな時も彼の者を喜ばせよ
どんな時も悲しませてはならない
と、深い愛を淡々と語り続けます。
/
・・・ところが
\
この歌曲はこの後、
ピアノ編曲版とは異なる短調に転調し、
同時にその歌詞も一変するのです。
言葉には気をつけよ
悪い言葉はすぐに口をすべる
「ああ神よ、誤解です!」と嘆いても
彼の者は悲しみ立ち去りゆく
(何だか、マリーとの事みたい・・
もしかしたらリストは、別れた直後に
この詩を見つけて「これだ」とばかりに
書いたのかもしれないね?!)
興味深い事は、
彼がこの曲をピアノ曲に編曲した際に
敢えて最後の暗い部分をカットした事です。
そして、これにはどうも
原曲の歌曲を書いた後から始まった
彼の新しい恋が関わっていた様なのです。
(・・・)
リストの新しい恋人カロリーネは、
裕福なポーランド貴族出身の地味な女性で
ロシアの公爵と既に結婚はしていましたが、
彼女は夫と気が合わず別居中だったので
二人は間もなく恋に落ちマリーの時の様に
約10年間の同棲生活をおくる事になります。
そしてリストは、この時は本気で
彼女との正式な結婚を考えるのですが、
ただ、カロリーネが敬虔なクリスチャンの為
法律・宗教上の問題が複雑に絡んで
どうしても彼女は夫と離婚する事が出来ず
これが原因で二人は別れる事になります。
でも・・・
/
彼が例の歌曲をピアノ版に編曲したのは
このカロリーネと暮らしていた時
だったのです
\
多分、原曲となった歌曲を書いた時の
モデルはマリーだったのでしょう・・
かつて二人であんなにも愛し合い、
3人もの子どもに恵まれたにも拘わらず、
最後は激しく彼を罵倒して立ち去った彼女の
豹変した姿に、彼は愛の怖さ、人間の弱さを
歌いたかったのだろうと思います。
でも、その後敬虔なクリスチャンの
カロリーネと出会った事で、
今までと異なる愛の形について知る事に
なります。
彼は、
信仰心の篤いカロリーネと暮らした10年間で
人間の真実の愛とは?更には神への愛とは?
という事について自身で考える様になり
人間の罪と許し、そして神の慈悲について
持論を持つようになるからです。
結果的にはカロリーネとも別れてしまい
ますが、でも彼はその数年後には
聖職者になる事が自らの使命と決意し
礼拝堂で剃髪式を受け神学の修養を行って
正式な聖職者になります。
そして、そんな考え方の移行期に編曲された
『愛の夢第3番』は、彼の再構築された
人間の真実の愛を語る曲にする必要性があり
その為に原曲の最後の部分を全て削除して
新たなピアノ曲として発表するという作業が
彼には不可欠だったのです。
(そういう経緯だったんだ!
あの曲の最後が暗いメロディになって
悶々とした感じで終わっていたら
ちょっとイメージも変わってたね)
そうそう、カロリーネと出会った事で
彼が変わった事は他にもまだあります
あんなに忙しく演奏活動でヨーロッパ中を
駆け巡り、心のどこかでずっと偉大な
ピアニストとしての評価を求め続けていた
彼が、その華やかな演奏活動を一切やめて
静かに作曲だけに専念する様になった事
です。
きっと彼はカロリーネと暮らした10年間で
本当に自分がすべき事は何なのか?
自分にしか出来ない事は何なのか?
を見つけられたのでしょうね。
(でも・・
カロリーネがそれだけ彼に影響を与えた
素晴らしい女性だったって事はわかったけど
怒って飛び出していったマリーの事も
すごく気になるなぁ・・)
リストとダニエル
高まる感情をこらえきれずリストを罵倒して
逃げる様にパリに戻ったマリーにはもはや
人を信じるなんてとても愚かな事だった!
という悲しい心の叫びしか聞こえません
でした。
それで彼女は、パリへ戻るや否や
自分が新しく生まれ変わる為の目標を定め
すぐさまその準備に取り掛かったのです。
これは具体的には、
先ず友人の夫で新聞記者の紳士に会い、
彼に自分のサポートを願い出ると
ジャーナリストとなってパリデビューする
事を決意しその準備を始める事でした。
そして自分の名前をダニエル・ステルン
という男性の名に変えます。
この名は息子の名前の前に「星」という意味
の独語の言葉を組み合わせて作ったもの
でした。
聖書の中で私が一番大好きな
ライオンの居る洞窟から救い出される
予言者ダニエルの名の隣に、
真実を語る「星」を加えましょう。
さぁ!今から生まれ変わる私は
ダニエル・ステインとなって
どんどん小説を書いて
真実を発表していくわ
その彼女の決意は現実のものとなって
新鋭ジャーナリスト=ダニエル・ステルンは
どんどん記事を発表する様になって
いきます。
そして彼女は、この新しい仕事の為に
苦手だった華やかなサロンに再び顔を出し
名だたる政治家や文筆家達に計画的に会うと
幅広く交際を始めて政権中枢にいる重要人物
に繋がり、ジャーナリストとして議会を傍聴
したり取材する様にもなるのです。
私はペンの力だけを信じて生きるわ
そしてこのペンの力で明確に真実を
人々に伝えていく事こそが私の使命。
人間なんて愚かな物よ。
真実は語らず互いに傷つけ合うだけ。
でも、真実は弱いものを救うわ!
だから私は
真実は常に一つである事を
生涯伝え続けるの
さて、多忙になったダニエル・ステルンが
以前のマリーに戻って唯一楽しめる時間
と言えば、
毎年夏になると自分の子ども達と一緒に
ライン川に位置するノンネンヴェルト島で
静かな時間を過ごせる時でした。
相変わらずリストは演奏旅行でヨーロッパ中
を忙しく駆け回っていたので、
母子4人でゆっくり過ごせるこの時間は
マリーにとってとても大切なひと時でした。
でも!!
これが、3回目の夏を終えた後、
突然奪われる事になります。
/
リストがマリーと子供たちを
完全に引き裂いたのです
\
彼はマリーから親権を突如取り上げると
子ども達の親権者を自分だけにしました。
思い返せば、過去に提出した3人の子の
出生届に書いた母親名は偽名だったので
この手続きは彼にとって容易な事でしたし、
(詳しくはこちらから)
それ以前に、そもそも19世紀のフランスでは
まだ離婚制度という物が廃止されていたので
親権については男の方が有利だったのです。
勿論、これに対して怒ったマリーは
彼はピアノの事しか考えない
と激しく異論を唱えましたが、
マリー・ダグーについてしまったレッテルは
夫のダグー伯爵を裏切って若い愛人と逃亡
した挙句に子どもまで産んだモラルを欠き
パリ社交界から脱落した女性でしたから、
既に下されたこの決定を彼女一人の力で
覆す事などとうてい出来ない事でした。
でも、何故リストは突然
こんな事をしたのでしょう。
実は彼のこの行動の影には新しい恋人
カロリーネの姿がありました。
何事に対しても真面目で厳格なカロリーネは
彼の子ども達の教育にも大変関心を寄せて
家庭教師をつけてきちんと早期教育すべき!
と提案すると直ちに彼に親権を持たせ
彼女はそれを強硬に実行し始めたのです。
この事実を知ったマリーは決心します。
真実でありたいと思いました。
(マリー・ダグー)
彼女の決心とは小説『ネリダ』を書いて
これを大きく世間に発表する事でした。
この長編小説『ネリダ』とは、
無能な画家に騙され続けた貴族の令嬢物語を
描いたもので、誰が読んでもリストを無能な
画家に例えた彼に対する当てつけ小説である
事が明らかにわかるものでした。
勿論、リストは自分がモデルである事は
最後まで強く否定し続けましたが・・
(つまり、今でいう暴露本ね?)
そうですね
彼女の怒りはそれほど強かったのです。
親権を取られたマリーは絶望の境地の中、
ペンでリストと戦おうとしたのです。
多分、彼だけでなく自分が産んだ子まで
他の女性に支配されてしまった事が
彼女にはどうしても耐えられなかった
のでしょう・・・
でも彼女は、この本の出版を区切りとして、
その後リストには一切関わらなくなります。
丁度パリで2月革命が勃発した事もあって
恋愛論を離れて政治や社会に視点を変えて
世に真実を伝えていく事に奔走し始めた
という事もありますが、
自分の使命は真実を伝える事だけだと
あらかじめ線を引いていたのでしょう。
彼女はその後革命家と共に
女性には社会を動かす大きな力がある
と多くの政治家や思想家たちに訴え
当時ほとんど力を持てなかった女性による
社会の変革を世の女性らにペンの力で懸命に
問いかける様になりますが、
結局歴史的には、マリーの意に反し
彼女の革命的な考えは世間から打ち砕かれ
ナポレオン3世の第2帝政が始まります。
でも、この時マリーは既に
自分の中で強く確信出来るものが
ありました。
とどまっていたなら、
私はあなたのもとに居たでしょう。
そして、ダニエル・ステルンが
暗闇から浮かび上がる事も
なかったのです。
(マリー・ダグー)
元々は権力者ダグー伯爵の夫人で
社会の事など何もわからなかった貴族の娘が
若い音楽家リストとの運命的な大恋愛の末
駆け落ちまでして3人の子を出産するも、
突然別れを切り出された奈落の底で、
親権をも奪われてしまった悲しみのマリー。
でも、そこから
ダニエル・ステルンに生まれ変わって
目的に向かって強く逞しく活動していく事が
出来たのは、彼女が自分に与えられた使命を
見つける事が出来たからです。
もし彼女が奈落の底のマリーのままで、
裏切られた事をひたすら恨むだけの依存型
人間であったなら、決して見つける事が
出来なかったであろう自分に与えられた
本当の使命。
「自分を信じる事」とは、
自分の価値観や判断基準などを
自分自身が確かなものとして
受け入れられる様になる事
だと言われています。
そして、この結論に至るまでには、
あなたはそう思っても私は違うという多様性
自分にはここまでしか出来ないという肯定力
あれは自分の過ちだったと認められる柔軟性
を人生の中で身につけていく事が必要なのだ
そうです。
でも、これさえ掴めればかつて詩人ゲーテが
きっと、生きる道が見えてくる。
と名言を残したように、
やがてはそこから自分の進む道が見えてくる
のです。
(マリーは自分の子どもの事では
悲しい結末になってしまったけど、
これまで自分だけでは気付けなかった事を
リストに気付かせてもらえたのだから、
結局リストと出会えて良かったんだよ。)
最終的に本当の彼女になれた訳ですから
きっとそうなのだろうと思いますが・・
ただ忘れてはいけない事は、
それには自分たちの3人の子どもたちを
巻き込んでしまったという事ですね。
(うん、そこは気になるところだなぁ。)
では、
この二人の波乱な人生に振り回されて育った
3人の姉弟については次からのシリーズで
ゆっくりお話ししたいと思います
(続編へつづく)
【人生の目的と音楽家シリーズ】
☆私は音楽で世に訴える!!
☆本当の名を何故名乗ってはいけないのか!
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もあります。
ドイツ歌曲も150曲以上!!
Schubert、 Schumannなど
宜しければ
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