檻の中のライオン(使用者)に「休憩なしで48日間連続の24時間労働が合法になる檻」つくる高プロ | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 私、「憲法と消費税」というテーマで「憲法カフェ」の講師を依頼されたことがあります。普通の講演と違って「カフェ」なので、超わかりやすくする必要があり参考にさせていただいたのが、楾大樹弁護士の「憲法がわかるおはなし『檻の中のライオン』」です。ところどころにクイズもはさみながらパワポを作ったのですが、その導入部のパワポ4枚が以下です。

 

 

 

 



 加えて、上西充子法政大学教授による「高度プロフェッショナル制度「きほんのき」(1):「労働時間の規制を外す」→でも労働者は時間で縛れる」の記事を読んで、この「檻の中のライオン」の例え話を高度プロフェッショナル制度にも使えるのでは?と思いました。(※もちろん憲法と法律ではレベルが違うので全面的に「檻の中のライオン」の例え話があてはまるとは思っていません)

 労働基準法の名宛人は「使用者」であることを政府機関の労働政策研究・研修機構(JILPT)が次のように解説しています。

 

 労働基準法(労基法)の規定の名宛人は「使用者」です。同法にいう使用者とは「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」と定められています(労基法10条)。事業主とは労働契約の一方の当事者である事業主体であり、個人事業であればその事業主、法人たる会社であれば会社(法人)そのものが使用者となります。労基法は、使用者の概念を事業主以外にも拡大し、現場で実際に労基法の遵守義務を負う立場にある者をも使用者とし、法的責任を負わせているのです。

 最初に紹介したパワポ画像の1枚目のクイズ「憲法を守らなければならないのは誰?」の答えは「①国務大臣、国会議員等(公務員)」ですが、労働基準法を守らなければならないのは「使用者(企業、事業主等)」です。憲法は国家権力・政府(ライオン)の「檻」ですが、労働基準法は使用者(ライオン)の「檻」と例えることができると思います。

 一人ひとりの労働者が人間らしく働くためには、まずルールをつくらなければいけません。使用者(ライオン)には労働者にかみつかないように「檻」の中にいてもらう必要があるのです。

 現在は、使用者(ライオン)は労働基準法という「檻の中」にいます。使用者(ライオン)を労働基準法という「檻」で拘束しているのです。今回の高度プロフェッショナル制度にかかわる今の労働基準法の「檻」は以下です。

 

労働基準法
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
 2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。(※36協定を労働者の過半数代表と使用者が結び、割増賃金を支払って初めて残業が可能)
第34条 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
第37条 使用者が(中略)労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 4 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。


 今のこの使用者(ライオン)の「檻」である労働基準法が、今回の高度プロフェッショナル制度でどうなるかをバナーにしてみたものが以下です。

 



 「1日8時間労働の檻」「休憩時間付与の檻」「残業の割増賃金の檻」がなくなってしまって、かわりに「1日24時間労働の檻」「過労死・サービス残業が合法化される檻」「休憩なしで48日間連続の24時間労働が合法になる檻」になってしまうのが高度プロフェッショナル制度です。この高度プロフェッショナル制度の「檻」で、使用者(ライオン)から労働者の命をどうやって守ったらいいのでしょうか? 高度プロフェッショナル制度を強行しようとしている安倍政権、自民党、公明党、日本維新の会、希望の党は、ぜひきちんと説明してもらいたいと思います。

 また、私たち労働者はこの高度プロフェッショナル制度という危険な「檻」の意味や仕組みをよくわからないまま、いやそれが私たち労働者を守るための「檻」であることすら知らないまま、「檻」を改修されようとしているのではないでしょうか? そして、労働組合は、使用者(ライオン)に「休憩なしで48日間連続の24時間労働が合法になる檻」を与えてしまうことの危険性をもっともっと多くの労働者に知らせていく必要があると思います。高度プロフェッショナル制度の廃案を求める署名にぜひご協力ください。【→★#高度プロフェッショナル制度 は現代の奴隷制!今すぐ廃案に!

(井上伸)