保健室から見える子どもの貧困 - 病気やケガしても病院に行けない、給食以外に食べるものない | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※先週、中央社保協の総会で、全教の方からいただいた資料を紹介します。交通事故でケガをし救急車が来ているのに「保険証がない」と病院に行くことを拒む子ども…、喘息発作でも病院に行けない子ども…、32本中20本がむし歯でも医者に行けない子ども…、視力が0.06でもメガネを購入できない子ども…、給食が1日の栄養源のため夏休みになるとやせてしまう子ども…、家に炊飯器もレンジもお米すらなくやせていく子ども…、バス代がなく学校に通えない子ども…etc. 全国の小・中・高の養護教諭が、子どもの貧困を告発しています。(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)


 養護教諭は告発します!
 保健室から見える子どもの貧困の実態

 ――作成 全日本教職員組合〈全教〉養護教員部――


 「構造改革」がもたらした2008年以降の「100年に1度」といわれる経済不況のもとで、大企業による「派遣切り」など労働者の大量解雇がすすんでいます。労働者・国民が生活破壊に見舞われる事態は、子どもたちの「安心と希望の根拠地」である家庭を直撃し、「子どもの貧困」が叫ばれる状況をつくり出し、未来を担う子どもたちの学習権ばかりか、いのちと健康を脅かす事態となっています。そして、各地からの報告によると、貧困は健康を蝕むばかりか、子どもの心まで蝕んでいます。


 このようなもとで、養護教諭は保健室でそのような子どもたちをしっかりと受け止めています。保健室は、子どもの真の姿とともに、学校や家庭、社会のあり方が子どもを通してストレートにあらわれる場所です。


 全教養護教員部の仲間が、保健室から見える深刻な子どもの貧困の実態を告発します。


 貧困が子どもたちのいのちと健康を脅かす


 ▼小学校 健康だけでなく、心まで蝕む貧困


【大阪】
 ○喘息発作を起こした子どもの親と連絡をとろうとしたが、家も親の携帯電話も止められていて連絡が取れない。ようやく迎えに来た父親は、吸入器のみで薬は持参せず、その後病院へ行ったかも確認できない。父親は病気をして無職となり、給食費も滞納し、観劇や遠足も費用が払えず欠席させている。子どもは親をかばって、「保険証が無く病院にいけない」とはなかなか言わない。
 ○靴下に穴が空いている、しかも両方親指がにゅっと出ている子どもたちが増えている。寝るときの服も、学校に来る服も同じ子どもがいる。
 ○治癒勧告書を出しても、「給料前だから病院へ行けない」と養護教諭にはっきりと言う子どもが増えてきた。


【滋賀】
 ○高熱を出したため、父親と連絡をとったが、「仕事で迎えに行くことができない。保険証がないので病院受診はさせないでほしい」と言われた。容態が悪いので、父親の了解を得て、校長が市にかけあって無事受診させることができた。


【京都】
 ○体重測定の日にパンツをはいてきていなくて、替えのパンツを貸してほしいと言ってきた。聞くと、パンツは2~3枚しか持っていなくて、ときどきパンツをはかないまま登校してくるとのこと。たまたまパンツをはいていない日に体重測定があった。パンツを貸し出すが、返ってこなかった。


【東京】
 ○父親の仕事がうまくいかず、母親が2つの仕事をこなしている。長男の5年男児が下の妹2人の面倒をみている。学校では荒れ気味でキレやすく、ケンカをしてケガをさせることもたびたび起こっている。昨年度の給食費は未だに支払えないでいる。


【北海道】
 ○発熱しても2週間かけて自分で治す、病気をかくす子どももいる。
 ○漁村のある学校では3割が一人親家庭、祖父や祖母と暮らしている子どももいる。野球部でレギュラーになった子どもの背番号を養護教諭が「良かったね」と縫い付けたり、手荒れのひどい子にワセリンを持たせたりと、子どもたちを保健室でしっかりと受け止めている。


 ▼中学校 親の生活を見て、負担をかけまいと気を使う子どもたち


【和歌山】
 ○0.9以下の視力の生徒に渡している視力手帳を、すぐグチャッと丸めてしまう生徒がいる。母子家庭でトラック運転手をしている母親に遠慮して、メガネ代の負担をかけまいと、視力手帳を渡さないようだ。
 ○足をケガしても病院に行っていない様子なので話してみると、トラック運転手の父親が事故を起こし、免停になり、職を失っていた。二人目の母親のこともあるのか、ケガのことを話していないようだ。子どもは親の生活を見て、気を使っている。


【埼玉】
 ○母子家庭が増えている。経済面で大変なので多少具合が悪くても病院に行かないでいるのでいつまでもよくならない。食生活もきちんとしていないので風邪もよくひき、体調も悪いことが多い。ファーストフードのハンバーガーが夕食、朝食になる家がある。
 ○夏休み中にやせる児童制度が、ここ3年くらい増加している。休み中は、十分な栄養がとれないためではないかと思われる。(給食が1日の栄養源という子がいる)


【京都】
 ○健康診断の結果で、準要保護家庭の子どもに、学校病の医療費補助(医療証・医療券)をしようとしても、保険証を持っていないため、医療証・医療券を発行できない。(※学校病とは=学校保健安全法に定められた中耳炎、結膜炎、むし歯等の病気に対して、その治療費を国と地方公共団体が補助する制度。小・中学生が対象)


【北海道】
 ○生活保護家庭。次の保護費が出るまで2週間以上間があるのに、手元にあるお金は数百円。バス代がなくて学校に来られない。その生徒が町中で見ず知らずの人に、「お金ちょうだい」と声をかけまくって問題となった。


 ▼高校生 生徒の貧困・格差拡大


【北海道】
 ○生活保護家庭42%、一人親家庭が50%の高校。32本中20本がむし歯でも医者に行かない、視力が0.06でもメガネをかけない。親も病院に行くより、借金を返すことが先と病院に連れて行かない。生活が大変になると、最初に切るのは医療費。
 ○中学生の時から、頭痛に悩まされていた男子生徒。市販の薬を時々飲んで我慢していた。学校からも「受診勧告」は出したが、親が病院に連れて行ってくれない。2年生になって、ようやく連れて行ってもらって、左半身にわずかなマヒが認められ「脳梗塞になる可能性もあった」と言われた。
 ○家に体温計がなかったり、救急絆創膏や湿布もないので、簡単な傷の手当てができないで朝から保健室に来る生徒が多くなっている。母親が「学校(保健室)でやってもらいな」と言う。珍しいことではない。
 ○両親が別居。同居していた母親も長期不在で、月4万円のバイト代で生活している生徒がいる。


【秋田】
 ○修学旅行の積み立てを生活に回すため、自ら行かないという生徒が複数いる。(平気なふりをしているが悲しいことである)
 ○持っているもの、着ている制服、履いているズックなど汚れと破けでボロボロの生徒が多い。お金がかかるので運動部には入れない。


【福島】
 ○一人親で、授業料は免除されているが、通学のバス代が払えなくて、学校の来られない。親は「派遣切り」で失職中。


【兵庫】
 ○これまでも3,000円のインフルエンザ予防接種料を出せない生徒が多かった。去年の接種率は17%だった。


【埼玉】
 ○登校中に交通事故にあってケガをしたにもかかわらず、救急車に乗ろうとしないので、担任と養護教諭が呼び出され、事故現場にかけつけた。「保険証がない」と病院に行くことを拒んだ生徒に、交通事故は医療費の自己負担がないことを話し、救急車に乗せた。その生徒は、父子家庭で学費もアルバイトをして自分で支払っていた。
 ○妊娠して退学することになり、母親とあいさつに来た。母親はなんと30代。話によると、母親も10代で妊娠し、結婚したが離婚し、1人で育ててきたとのこと。どう見ても生活が大変そうで、この生徒も母親と同じような道を歩むのかと思った。
 ○あまりにも食べていないので、摂食障害かなと心配していた女子生徒。よくよく聞いてみると、家には炊飯器も、レンジも、お米すらない。まかない付きの中華料理店でバイトを始め、以前よりは随分人間的な生活を送るようになった。保健室には、インスタントの味噌汁とお菓子類を準備している。
 ○休み時間になると、氷を食べにくる子、お昼休みに居場所がなくて保健室にくる子、私の顔を見ると、「おなかがすいた」という子、「久し振りの食事が、学食のフライドポテトで、食べたら気持ち悪くなった」という女子生徒に「空腹に揚げ物じゃ、気持ち悪くなるでしょう? もう少し考えて、食べて」と話したら、「だってポテトが一番安いんだもの」。


 ▼貧困でない層の家庭の子どもたちは…大丈夫ですか?


 格差社会の貧困の反対側に、貧困でない層がある。競争社会の中で、貧困層に滑り落ちないように、長時間過密労働を強いられ、忙しい毎日を送っている。忙しいとは心を亡くすこと。何が貧しいかと言ったら心豊かな時間が貧しいのだ。


 ○6年生の男児が保健室のベッドで睡眠不足による頭痛を訴えて、「先生、何で夜なんてあるのだろう? 夜なんかなければいいのに。夜がなくて明るければ、もっと勉強する時間があるのに…」。彼は風邪気味で37.8度の熱があった。37度台の発熱程度では塾を休ませてもらえない。「最近、髪の毛が抜ける」というので、触っている頭を見ると、円形脱毛症だった。


 ○「今、自由な時間があったら一番したいことは何ですか」のアンケートの回答に、医師の息子がこう書いた。「お父さんとお母さんと一緒に、買い物に行きたい」。彼は近くの駅前の大手スーパーにすら、親と一緒に行ったことがなかったのだ。


 ○38度の熱があるので、母親に迎えに来てもらうと、母親の顔を見るなり、「お母さん、忙しいのに来てもらってごめんなさい」と泣きそうになって謝る5年女子。さらに、自分の身体状況を何時何分に何度の発熱状況であったかを理路整然と数字で説明し始めた。母親は「だいじょうぶ?」の言葉かけもなく家に連れて帰って、また仕事に戻った。


 ご一緒に、子どものいのちと健康を守りましょう!


 子どものいのちと健康を守るために
 ①子ども(高校卒業まで)の医療費を全額無料にする制度を、国の制度として確立すること。
 ②国民健康保険法を改正し、高校生の「無保険」状態を解消すること。
 ③すべての小・中学校、特別支援学校で給食を実施し、給食費を無料とすること。


 子どもたちの教育を保障するために
 ①すべての子どもの教育費を無償とすること。
 ②国公私立ともに高校授業料の無償化を実現し、学費・教育費を漸進的に軽減し、後期中等教育の無償化をすすめること。
 ③就学援助制度を拡充すること。高校生のために、義務教育における就学援助制度に対応した制度を創設すること。
 ④無利子奨学金の枠を拡充するとともに、返還義務のない給付型奨学金制度を創設すること。