外国人労働者を人権無視の奴隷労働で搾取・収奪~日本の経営者の人権感覚がいま問われている | すくらむ

すくらむ

国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 雑誌『DAYS JAPAN』7月号に、ジャーナリストの鎌田慧さんが「国策偽装研修は日本産業の悪の根源」と題した記事を寄せています。


 法務省、厚生労働省、経済産業省が「国勢貢献」を錦の御旗に「外国人研修・技能実習制度」をつくって、「諸外国の労働者を日本に受け入れて、日本の産業・職業上の技術、技能、知識の移転を通じ、それぞれの産業発展に寄与する人材育成を目的」(制度運営を担っている公益法人・国際研修協力機構のマニュアル)に、外国人労働者を受け入れる事業を進めています。


 「技術移転といえばもっともらしいが、年間10万人の『研修生』の多くは、未熟練労働、というよりは単純、重労働に従事させられている」と鎌田さんは指摘します。


 鎌田さんが取材したベトナム人労働者たちは、愛知県のトヨタ系自動車電子部品工場で働かされていました。不当解雇され、愛知県労働組合総連合(愛労連)の支援を受けて解雇を撤回させ、契約期間をまっとうできるとのこと。雑誌には、愛労連が開催した「ベトナム人研修生激励と交流のつどい」のカラー写真が掲載されています。(※『中日新聞』がトヨタ系自動車部品工場のベトナム人女性の記事を掲載していますので参照ください。→「信じ合えず、悲しいネ 眠らぬ街」


 外国人研修生は、「技術の研修」が目的とされているため、労働者あつかいされず、賃金も「研修手当」として月に6万5千円程度で残業手当なし。4人相部屋なのに、賃金から家賃・水道光熱費などで一人当たり4万円も徴収。研修生の手元には月2万5千円程度しか残りません。


 「トヨタ系の部品工場では、寮に監視カメラを設置したり、作業中にトイレに行くと1分15円の罰金、掃除を忘れると1回につき2千円の罰金を取ったり、人権無視の奴隷労働が公然化している」と鎌田さんは実態を告発します。


 「低賃金、無権利状態は、本工(正社員)、期間工、派遣、外国人出稼ぎ、外国人研修生と、労働構造を重層化させて貫徹している。『偽装請負』が表面化したキヤノンの経営者である、御手洗・日本経団連会長を筆頭とする、日本の経営者の人権感覚が、いま問われている」


 「日本の労働者は『派遣』、外国人は『研修』、人間性を無視した搾取と収奪、日本資本主義の獰猛さである」と鎌田さんは記事を結んでいます。


 『週刊東洋経済』(2008月5月17日号)でも、風間直樹さんが「増え続ける外国人研修生~不正行為の続出で移民論議が本格化」と題した記事を書いています。


 記事の中で、このブログでも紹介した熊本県の外国人労働者のひどい実態 が詳細な取材で告発されています。


 驚いたのは、中国側の送り出し機関に登録料と称する保証金5万元(80万円。年収5年分に当たる)を支払った上に、別途、父親と親戚の3人を保証人に立てて、何か問題があれば「違約金」として保証人が10万元(160万円。年収10年分)ずつ払うという一方的な契約を結ばされていたということ。


 二言目には「荷物をまとめて中国に帰れ」と怒鳴り散らしていたという日本の経営者は、こうした外国人研修生の恐ろしく不利な立場を知っているから、人権侵害を平然と繰り返しているわけです。


 風間さんの記事によると、1993年に年間4万人弱だった外国人研修生の新規入国者は、2007年に10万人の大台に乗ったとのこと。そして、労働法規違反やパスポート取り上げなどの不正行為は、2007年は449件に上り、過去最高だった前年から倍増しています。外国人研修生を扱う組織的ブローカーが暗躍しており、米国国務省の世界の人身売買の実態に関する報告者でも、日本の外国人研修生が「一部は強制労働の実態にある」と指摘しているのです。
(byノックオン)