束帯である袍の下に着るのが下襲で、上に半臂がありましたが見えないために略されるようになります。本来は普通の衣の形でしたがどうしたものか下襲は背中、つまり後見頃が伸び始め、どんどん伸びて位で制限されます、大臣一尺、納言八寸。しかるに伸長は止まず結局大臣一丈四五尺、納言一丈二三尺…。

下襲 Shitagasane

下襲(したがさね)

 

 

 

 
 

指貫は袴のことですが、裾に緖を差し抜くためにこの名で呼ばれます。元は狩りのためのもので狩袴、布製です。ところが上級貴族の日常着となると絹で作られるようになります。延喜式弾正台で改めて絹製が禁じられるとそれを逃れるために指貫と名を変えます。天皇も五節の帳台試のときのみ指貫を着す。

指貫 Sashinuki 狩袴 Kari_bakama

      指貫(さしぬき)          狩袴(かりばかま)

 

五節の帳台試

五節の帳台試

 

 
 

壺装束は中流より下の婦女が巷を歩くときの身なりです。長さを愛でる髪は衣の下へ入れ込んで、袿を頭に掛け、市女笠を被ります。名前の由来は衣を壺折ることから来ていますが、この〈壺折る〉に二説、打ち掛けた袿の両褄を前で挟んだから、或いは衣をたくし上げて腰で結わえたから。因みに袴は履かず。

壺装束

壺装束

 

 

 
 

直衣は宮中の正装である袍とほぼ同じ形にしてやや小ぶり、貴族の日常着です。袍が革帯の石帯、冠、表袴であるのに直衣は布帯、烏帽子、指貫の違いがあります。三位以上で宣旨の聴しがあれば直衣での参内もできますが、例えば拝賀に訪れた客に主人が答拝揖譲するとき直衣のままでは礼を欠くとされます。

直衣 Noushi

直衣(のうし)

 

 

 

何事も忌むべきことを避ける平安の世です。方角が忌まわしければ帰途を他所に一泊しても方違えしますし、物忌みには家に籠もって外との接触を避けます。髪を洗うのも吉日良辰を選ぶ徹底ぶり。忌み月とされたのは正月、五月、九月で身を慎むことを専らとして、十月も神無月ですから洗髪などは控えます。

 

 

爪弾とは現代では仲間外れにすることですが、古代では一種まじないの仕草です。親指の腹に爪を当てて弾かせますが、土佐日記にも〈風やまず。爪弾して寝む〉と強風に出航できぬ不運を弾き飛ばします。光源氏も空蝉のつれなさを恨んでこの仕草。不満、嫌悪、排斥したい気持ちを込めてそれを晴らします。

 

 

江戸時代には民間に広く普及して既婚女性の嗜みとされる歯を黒く染める習俗は平安時代にはあって〈歯黒め〉と言います。鉄を酒に浸すと液が黒ずみますが、それに五倍子の粉を加えて歯に塗ります。上流女性のみの習わしで13歳になると始めます。眉の手入れは必ず歯黒めと並べて語られるも関連は未詳

五倍子 Gobaishi 

五倍子(ごばいし)

 

ヌルデの虫瘤

ヌルデの虫瘤(五倍子)

 

 

 

 
 

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