平安時代女性の顔をまじまじと見る機会は限られていますから、御簾が風にさやいだほんの一瞬、市女笠から覗くわずかな隙間などほの見える面影に男性は恋の限りを尽くします。憧憬するその横顔と鼻先で見つめた実景が重なれば幸せ、それどころか上廻る果報者がここに、思わず〈ほのかより近勝りして〉。

 

 

ひと口に物の怪と言っても名前を持つものもあります。姫の乳母を通じて拐うように連れてきたんですから戸惑うのは仕方ありませんが、妻に迎えようというのに慰めても姫の気分は沈むばかり。男も思わず〈あらみさきといふもののはなたむ人〉。〈あらみさき〉はひとの仲を裂く神、それに魅入られている。

 

 

牛車の中でうつ伏せたきりどう説き伏せても心を開く素振りもない姫です。男の方からすれば姫の許に通っていたという青なりの貧乏貴族に未練があるのはわかっていますが、そんなとき姫の気持ちをほぐそうと男が繰り出す冗談は千年前もいまも何も変わらず、〈まろが顔はこよなくよきぞ、見給へ見給へ〉。

 

 

 
 

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『 こけさんの、なま煮えなま焼けなま齧り 』 五十女こけ