製作 : 日本
作年 : 2017年
出演 : 臼田あさ美 / 太賀 / オダギリジョー / 光石 研
身につまされるような気がしてくるのはあるようでない、ないようであるそんな若さのふんづまり方でして、ヒロインはライブハウスで働きながらだんだんと若いでは通用しなくなっているそんな年齢の女性です。お馴染みの軽鉄筋のアパートに帰るといやぁいるんですよ、下水の詰まりにじゅぽじゅぽやる(何て名前でしたか)ゴムのお椀に棒がついたあれみたいな男が、彼女の生活にすっぽん貼り付いて。仲間たちにも一目置かれたミュージシャンのようですが、そういうどんぐりの背比べのときに下手に頭ひとつ抜きん出ているために却って才能の理想と理想の才能がごっちゃになってしまって、日がな曲を作りもせずぶらぶらと過ごしておりますよ。かつての仲間は(そういう風に彼に見下されている分)音楽で喰っていくために必死にあれやこれやにしがみついて、それがまた主人公には音楽を金で売ったように映り仲間からすればそういう高みからいつもいつも見下ろしては結局アパートの一室で燻っている只の苦労知らずか世間知らず、とは言えその彼も若いでは通用しなくなっている年齢をひしひしとは感じている今日この頃です。そうだけに余計にアパートの一室でいたずらにギターをいじってはあの頃にはしっかり握っていたはずの未来が(まるでこの手が鳥になって一緒に)消えてしまったことを見つめずにはいられません。甘酸っぱいというには何とも味がしなくなったガムのようにただふたりの男女の間でくちゃくちゃやるしかない日々です。しかしひとは食べねばなりません、そしてそのためにはお金がいる。(主人公が見つめないようにしているのがこの部分でしてここが実際には彼(自身以上に彼の才能)が直面している現実で言わばここを踏み出さないからこそ仲間より前を走っているつもりでいつの間にか周回遅れにされそういう一周違いいやぁ永遠の一周違いの、先頭をいまも走ることになって... 男が醒めた夢を見続けようと明るい眠りにもぐり込んでいる間に)ヒロインはアパートの支払い、ふたり分の食事、光熱費のあれこれにお金のことが頭から離れるときがないことになります。まあおわかりの通り若(くはな)い女性がいまの境遇を越えた収入を得ようと思えばまず思い浮かぶ職業が夜風に揺れるネオンになって彼女を誘惑しています。そんな一線も今日越えてしまうとお店から差し出されたピチピチのTシャツにホットパンツを前に(普通に女性が女性として、自分を自分として守っているものをかなぐり捨て自分を自分でないものに見立てるそんな無感覚へ逃げ込んで)いよいよ自分をひとつの商品に客の前に立つ夜です。そんな体よりも心のありかを探すようなどっぷりとした疲れを引きずって夜も更けたアパートに帰ってくると男の、いつ終わることもない気の抜けた鼻歌が聞こえてきます。
南瓜とマヨネーズ
2,000円
Amazon |
南瓜とマヨネーズ (フィールコミックスGOLD)
994円
Amazon |
こちらをポチっとよろしくお願いいたします♪
関連記事
前記事 >>>
■ フォローよろしくお願いします ■
『 こけさんの、なま煮えなま焼けなま齧り 』 五十女こけ