世界を彼の腕に
  監督 : ラオール・ウォルシュ
  製作 : アメリカ

  作年 : 1952年
  出演 : グレゴリー・ペック / アン・ブライス / アンソニー・クイン

 

 

グレゴリー・ペックが異国のお姫様と身分を越えた恋に落ちると聞いてまず思い浮かぶのは『ローマの休日』かもしれません。しかしかの作品が結局かけ離れた身分を前に身を引いて思い出にほっそりと立ってみせる(滝のような未練と)憂愁でしかないとしますと、ここでのペックは身分の違いなどに怯みもせず恋する女性をその腕に奪い去ります。その女性、アン・ブライスも素晴らしい、そもそもロシア皇帝によって決められた結婚相手を毛嫌いしていまはサンフランシスコまで逃げては来ましたが伯父のいるアラスカはまだ遙か、ぐずぐずしていると結婚相手の皇太子が到着してしまいます。そんななか船乗りのペックと恋に落ちます、最初はアラスカまでの船を都合しようと近づいたのですが、ペックの魅力にその身を振り絞るような率直な恋。氷に閉ざされるようだった自分の未来が嘘のように吹き払われてアメリカで(ロシア貴族という重い外套をかなぐり捨てて)ひとりの女性、彼の妻として生きる決意なのです。しかるにひと足遅く気障な口髭に驕慢さをぶらさげているような皇太子に連れ去られます... アラスカで現地民に奴隷労働を強いるロシア皇帝を嫌いながらもロシア人とも中国人とも気さくな友人関係を築き名士の夫人とも酒場の、重ねたペチコートをカーネーションのように花開かせる女たちとも別け隔てなく付き合うペックにはどこまでも彼と海の生死を共にするつもりの、心強い部下たちがいます。そしてもうひとり、根っからのお調子者がひとの形をして練り歩いているのがアンソニー・クインです。だってのっけから<俺を呼び忘れたな、構わん、勝手に来た>と呼ばれもしないパーティに堂々と現れるような御仁です、ペックの行くところ足を絡め体を絡めて敵になったり味方になったり活劇の熱量を高めていきます。実はペックとロシア皇太子の間にはもうひとつ問題が横たわっています。アラスカという広大な土地の帰趨を巡って争点となっているのはアザラシの乱獲です。手当り次第にアザラシを殺害するロシア式の経営では早晩この貴重な海洋資源が絶滅するのは目に見えています。ペックは銀行家などを説得してロシアからアラスカを買い取る壮大な計画を進めていますがそもそも皇太子がアラスカに現れたのも現地経営を立て直すためで更なる圧政が現地民には待っているわけです。彼らはやはり戦わざるを得ない運命ということでしょう。ともあれ皇太子と彼の、軍帽の縁を指で舐めるようないやらしさに閉じ込められてヒロインとの婚礼は刻一刻と近づいています。大海原へ、地球を吹き渡る活劇の爽快さへ、トップスルを解け、帆を一杯に張れ。

 

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